要件・審査|預貯金と生活の見通し

預貯金があれば年収不足を補えるのか

預貯金は、永住申請で資産や生活の安定性を説明する資料になります。ただし、残高が多ければ年収の不足を必ず補える、とはいえません。収入が少ない理由、これからの収入、世帯の生活費、預貯金の成り立ちを合わせて整理します。

「自分の年収だけでは不安」「一時的に収入が下がった」「配偶者の収入や海外の預金もある」という方に向けて、預貯金で説明できることと、別に確認すべき要件・資料を解説します。

最終法令・公式情報確認日:2026年9月9日

かばん・家・硬貨と箱を描いた3枚のカードから、下段の書類フォルダーへ線をつないだイラスト。
残高だけでなく、収入・生活費・資金の形成経緯を整理します。

01|資産も確認するが、残高だけで決まらない

永住申請では、預貯金はどう位置づけられるか

現行の永住許可に関するガイドラインは、原則として、独立して生計を営むために足りる資産又は技能を持つことを要件としています。日常生活で公共の負担とならず、持っている資産や技能等から将来も安定した生活を見込めるか、という考え方です。

このため、預貯金を示す意味はあります。一方で、「一定額の預金を持てば、他の事情にかかわらず年収の問題がなくなる」という仕組みではありません。確認した現行ガイドラインと入管庁Q&A・Q54には、預貯金を年収へ換算する共通の計算式や、残高だけで許可が決まる金額は示されていません。

継続的な収入

これから入るお金

給与、事業からの所得、年金等。金額だけでなく、現在の仕事や受給の状況と、今後の継続性を確かめます。

預貯金・資産

これまで蓄えたお金

ある時点の残高です。生活費等に使えば減るため、蓄積の経緯や今後の使途も説明します。

生活費・支払い

継続して出ていくお金

住居費、家族の生活費、教育費、税・社会保険、返済等。誰の収入や資産で支えるかを整理します。

「年収不足」と感じる理由も確かめます。インターネット上の目安と比べているのか、家計が赤字なのか、転職や休職で前年の所得が下がったのかによって、説明すべき内容は変わります。基本の考え方は年収・独立生計要件をご覧ください。

2026年9月時点の改定案は、現行の説明と区別する

確認時点で、入管庁の現行ガイドラインは2026年2月24日改訂版です。一方、8月に公表されたガイドライン改定案には、世帯の収入水準等を考慮する記述があり、意見募集は終了しています。

公表案には、収入等の一部の取扱いを、改定日の6か月前以降に申請し、改定時点で審査中の案件にも適用する内容が含まれます。また、案にある将来の年金受給見込額と金融資産の説明を、現在の年収不足を預貯金で一律に置き換える基準とは扱いません。正式な改定内容・適用時期を確認し、「早く申請すれば必ず旧取扱いになる」と判断しないようにします。

変更全体と経過措置は2026〜2027年の永住許可制度改定で整理しています。

02|本人の年収だけで判断しない

申請区分の特例と、世帯の生計を先に確認する

独立生計要件が適用されない方もいる

現行ガイドラインでは、日本人・永住者・特別永住者の配偶者又は子は、独立生計要件に適合することを要しないとされています。難民認定を受けた方、補完的保護対象者の認定を受けた方、第三国定住難民にも、同要件について特例が示されています。

ただし、独立生計要件の特例と、永住許可の全ての要件や資料が不要になることは別です。例えば、配偶者・実子等の申請案内にも、職業、所得・納税、年金・医療保険等の資料が掲載されています。「配偶者だから収入の説明も税金の資料も必要ない」とは考えないようにします。

自分がどの身分・申請区分に当たるかを確認します。「定住者なら全員免除」「高度人材なら年収に関する確認は一切ない」など、在留資格の名称だけで特例を広げることはできません。

独立生計要件は、世帯単位で満たす場合もある

入管庁Q&A・Q54は、申請人自身に資産や技能が備わっていなくても、配偶者等と構成する世帯全体として安定した生活を継続できると認められる場合は、独立生計要件を満たすと説明しています。

本人の年収が低い場合も、まず実際の家計を見ます。誰と生計を共にし、誰が生活費を負担しているか、配偶者等の収入がどのように続くかを確認します。別の世帯の親族の預金まで、援助の事実を示さず自由に合算できるという意味ではありません。

扶養する人数や生活費の負担は、扶養家族の確認と扶養家族が多い場合の収入・生計の見られ方をご覧ください。ここでは、誰の資産をどの生活のために示すかに絞って整理します。

03|預金の内容を説明できるようにする

預貯金で確認しておきたい4つのこと

次は、残高と生活の関係を説明するための整理項目です。入管が公表した点数表や、一律の追加提出義務ではありません。自分の事情に関係する項目を確認してください。

ノートと紺色のノートパソコンを置いた明るい机

01|名義と管理

誰のお金で、誰の生活に使うか

本人、配偶者、扶養者など、口座名義と生活費を負担する人の関係を確認します。法人名義の預金や、他人から預かっているだけの金銭を、そのまま本人の自由な預金として説明しません。

02|形成の経緯

どのように蓄積されたか

毎月の給与からの積立、資産の売却代金、相続・贈与、海外口座からの移動等を区別します。大きな入金がある場合は、必要に応じて取引資料と入金履歴を対応させます。

03|利用できる範囲

生活費に使える資金か

普通預金、定期預金、外貨預金等を分け、引出しの制約や利用予定を確認します。海外の口座なら通貨、名義、日本で生活するための利用方法も整理します。

04|支出との関係

今後の生活にどう充てるか

毎月の生活費に加え、近く予定する大きな支払い、税・社会保険、返済等も書き出します。預金残高と、生活維持に使える見通しを区別します。

申請直前の入金は、金額と理由を分けて示す

自分の別口座から移したお金は、移動元と移動先が分かれば資金のつながりを整理できます。ただし、移動前と移動後の残高を同じ時点の資産として二重に数えないようにします。親族からの入金も、返済が必要な借入れなのか、贈与なのかで事情が違います。

大きな入金があるだけで直ちに問題だとはいえません。一方、借りたお金を長年の貯蓄のように説明したり、資金の出どころを事実と違えて記載したりすることは避けます。事実に沿った説明と、確認できる資料をそろえてください。

不動産や証券も、預金と同じ扱いにはしない

不動産の登記事項証明書は権利関係を示す資料で、それだけで現在の売却可能額や、すぐに使える現金額が確定するものではありません。証券・外貨等は評価日や通貨、換金の条件を整理します。資産の価値を説明することと、一定の資産があれば許可されることは別です。

04|指定資料と、事情を伝える資料

通帳・残高証明書・収入資料をどうそろえるか

まず入管庁の区分別提出書類を確認します。通帳が登場する箇所でも、所得を示す資料として挙げられている場合と、資産資料として挙げられている場合があります。次は主要な区分の整理です。

電卓とノートで家計を確認する手元
申請区分による預貯金等の資料の位置づけ
就労資格・家族滞在/定住者

申請3・申請2の資産欄は、申請人又は申請人を扶養する方が対象です。預貯金通帳の写し、不動産の登記事項証明書、それらに準ずるもののいずれかが案内されています。

全員に通帳と不動産登記の両方が必要という案内ではありません。

日本人・永住者等の配偶者/実子等

申請1では、所得・納税資料の「その他」に、所得を証明するものとして預貯金通帳の写し等が掲載されています。申請2・3と同じ独立した資産欄ではありません。

独立生計要件の特例があっても、自分の区分の提出資料を確認します。

高度人材70点・80点の認定済みの方

70点・区分ア/80点・区分アの資産欄は、申請人本人の資産として通帳の写し等を案内しています。

所得・納税資料の名義と、資産資料の名義を混同しないようにします。

他の在留資格で高度人材の特例を使う方

70点・区分イ/80点・区分イは、現在の在留資格に応じた申請1・2・3等の資料を参照する構成です。

各区分に記載された対象期間の特則も確認し、高度人材は全員同じ資料と決めないようにします。

資産欄の「本人又は扶養する方」という対象を、所得・納税欄へそのまま当てはめないようにします。所得・納税欄は、申請人及び申請人を扶養する方の資料を確認します。

残高証明書だけでよい、と先に決めない

確認した区分別案内は、全員共通で「残高証明書を必ず提出する」とはしていません。残高証明書はある時点の残高を示す資料ですが、入出金や資金の蓄積経緯までは分からない場合があります。通帳等との組合せや、準ずる資料として提出できるかを、必要に応じて入管へ確認します。

Web通帳も、取引履歴が分かる画面の写し等で、加工等できない状態で印刷されたものなら差し支えないと案内されています。自分で取引を転記したExcel表を、銀行の取引履歴そのものとして提出することはできません。自作の一覧は、原資料を整理する補助資料として区別します。

収入を確認する資料

区分別に必要な住民税の課税・納税証明、在職証明、確定申告書控え等を先に確認します。給与明細や雇用条件の資料等は、現在の収入や今後の見込みを説明する際の補足として整理します。

通帳に給与が振り込まれていても、指定された所得・納税証明を一律に省略できるわけではありません。

資産と事情を確認する資料

名義、金融機関、確認日、残高と取引履歴のつながりが分かる資料を用意します。資産売却・贈与等の大きな入金を説明する場合は、事情に応じて契約書や送金記録等を対応させます。

これらの補足資料は全員共通の必須書類ではなく、説明したい事実に合わせて選びます。

海外資料は、名義・通貨・日付と日本語訳を確認する

区分別案内では、外国語で作成された提出資料に日本語訳を添付するよう求めています。海外預金を説明する場合は名義・残高の日付・通貨を確認し、円で説明するなら換算日と換算方法も分かるように整理します。海外の残高だけで日本で継続的に生活できることが自動的に認められるわけではありません。

日本で発行される証明書は、原則として発行日から3か月以内のものを提出するという区分別案内も確認します。通帳の履歴期間は、所得資料の3年・5年等と機械的に同じにするのではなく、自分の区分と説明する事情に応じて確かめます。

書類全体は永住申請の必要書類、所得・納税証明がそろわない事情は課税・納税証明書を取得できない年度がある場合をご覧ください。

05|残高が同じでも、説明は変わる

年収に不安がある場合の状況別の整理例

次は検討の仕方を示す仮の例です。実際の許可事例や、許可の見込みを示すものではありません。

一時的に収入が下がった

収入の回復見込みと貯蓄を対応させる

転職や一定期間の休職等で前年の所得が下がった場合、減少した時期・理由、現在の雇用、復帰後等の見込みを分けます。預貯金は、その間の生活費をどう支えているかを説明する資料になります。

前年の所得、現在の収入、今後の見込みを同じ数字として扱わない。

低収入の状態が続いている

預金の取崩しと今後の生活を説明する

継続収入だけでは生活費を賄えず預金が減っている場合は、赤字の理由、世帯の他の収入、将来の収支を整理します。残高だけを切り取ると、生活の見通しが伝わりにくくなります。

「残高÷毎月の不足額」の月数は、永住の許可基準ではない。

本人の収入は少ないが家計は共有

配偶者等の収入と生活費の負担を示す

世帯の誰が生活費を負担しているか、収入が継続するかを確認します。本人の預金だけを増やそうとする前に、申請区分の特例と、家計の実際の流れを整理します。

同じ世帯の生計と、別世帯からの一時的な援助を区別する。

直前に大きな入金があった

入金理由と返済の有無を確認する

相続・贈与・売却代金・自分の口座間移動・借入れでは、説明する事実が違います。入金前後の履歴や関係資料を用意し、一度きりの資金と継続収入を分けます。

残高を見せることと、その資金の性質を説明することを合わせる。

転職直後の雇用や申請時期の確認は転職後すぐの永住申請で確認する安定性と空白期間をご覧ください。

06|事情と資料を一緒に整理する

預貯金を生計の説明に使うための4つの手順

白い机に整理した書類と紺色のフォルダー
  1. 申請区分と、収入が不安な理由を確認する

    独立生計要件の特例があるか、誰と生計を共にするかを確かめます。前年の所得低下、現在の低収入、毎月の収支不足、資料不足を分けます。

  2. 過去・現在・今後の収入と支出を並べる

    税証明の対象となる過去の所得、現在の仕事と収入、今後の確定した予定と未確定の見込みを区別します。家計の検討では実際に使える金額と生活費も確認します。

  3. 預貯金を名義・時点・形成経緯で一覧にする

    口座ごとの確認日、通貨、残高、主な入出金、利用制約、予定支出を整理します。同じ資金の口座移動による重複をなくし、取引資料を対応させます。

  4. 指定資料をそろえ、補足説明と申請時期を検討する

    区分別の必要資料と、低収入の経緯等を示す補足資料を分けて準備します。公表中の改定案と正式な更新も確認し、収入の回復を待つかを含めて個別に検討します。

相談前の準備メモ

申請の前提:在留資格、申請予定時期、家族構成、利用する特例。

収入と支出:本人・配偶者等の過去の所得と現在の収入、減少した理由、主な生活費と返済、今後の見通し。

資産の状況:名義、残高の確認日、主な入金理由、生活費に使える範囲、対応する資料。

確認が必要な点:不足する資料、説明できていない入金、未確定の雇用や収入、制度変更の適用時期。

預貯金があっても、公的義務の確認は別に必要

税金・年金・医療保険の納付や必要な届出は、預貯金の額とは別に確認します。現行ガイドラインでは、申請時に納付済みでも当初の期限内に履行していない場合は、原則として消極的に評価するとされています。預貯金の提示だけで、過去の納付の問題が解消したとは扱いません。

申請条件全体は就労ビザから永住申請等のルート別案内も確認してください。資産資料を提出できることと、他の要件を含めて許可されることは別の判断です。

預貯金と年収不足のよくある質問

預金が一定額あれば、年収が低くても必ず許可されますか。

必ず許可されるとはいえません。確認した現行の公表資料には、残高だけで年収の不足を解消できる共通の金額や計算式は示されていません。申請区分、世帯の収入・支出、資金の形成経緯と将来の生活を整理します。改定案の動きも、正式な内容と適用時期を確認する必要があります。

残高証明書があれば、通帳や所得証明は不要ですか。

一律に不要とはいえません。残高と取引履歴、過去の所得、納税状況はそれぞれ示す事実が違います。自分の申請区分の指定資料を確認し、残高証明書を使う場合の組合せや提出方法を確かめます。

配偶者の収入や預金も考慮されますか。

独立生計要件は世帯単位で満たす場合があると公式に案内されています。ただし、資料の名義は区分ごとに確認が必要です。誰が生活費を負担しているかを説明し、別世帯の親族の資金や使えないお金まで単純合算しないようにします。

海外にある預金も、資料として整理できますか。

説明したい資産として、名義・通貨・残高の日付・取引履歴・利用方法を整理します。外国語資料には日本語訳が必要です。海外預金があるだけで条件を満たすと決めず、必要な資料と提出方法を入管へ確認してください。

収入と預貯金を整理し、
生活の見通しを伝えます。

エールZEAL国際行政書士事務所では、申請区分と世帯の生計を確認し、預貯金の位置づけ、必要な資料、収入が少ない期間の説明を整理します。現在の在留資格、家族構成、収入が気になる理由、資産の概要、申請予定時期をまとめてご相談ください。

初回のお問い合わせには、口座番号や通帳の画像等を記載・添付せず、まず状況の概要をお知らせください。

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