維持・管理 / 情報確認日 2026-10-04

この記事でわかること
  • 税務決算書の科目を、工事の実態から組み替える順番
  • 架空の売上2,300万円・純利益150万円の決算を使った照合例
  • 株主資本の変動、注記、消費税と提出年度で間違えやすい条件

提出する年度と財務諸表一式を最初に確定する

税務申告で使った決算書を用意しても、それだけで建設業用の財務諸表が完成するわけではありません。法人は様式第15号の貸借対照表、第16号の損益計算書・完成工事原価報告書、第17号の株主資本等変動計算書、第17号の2の注記表を確認します。第17号の3の正式名称は附属明細表で、提出対象となる会社に追加します。

作成前に、確定した決算書、決算整理後の残高試算表、科目内訳、工事別原価台帳、完成・未成一覧、固定資産台帳、前期の提出控えをそろえます。増資や配当があれば、その決議・払込資料も確認します。会社名、年度の開始・終了、決算日を先に各様式へ入力し、税務資料と同じ期間か確かめてください。課税所得と会計上の純利益は別の数字なので、法人税申告書の所得金額をそのまま損益計算書の最終欄へ移さないことが出発点です。

確認元:埼玉県:建設業許可の現行手引き・様式集 埼玉県:申請書類一覧(令和8年4月)

元帳に、建設業の科目へ移すための印を付ける

売掛金をすべて完成工事未収入金、買掛金をすべて工事未払金へ名称変更しません。工事代金、物品販売代金、固定資産の代金など、発生原因を確認して振り分けます。工事に関係する未払額と、本社の経費や設備購入の未払額も分けます。

元帳の残高に「工事番号」「建設/兼業」「完成/未成」「転記する科目」を付け、元の科目の合計が組替先の合計と一致する表を作ります。売掛金650万円の内訳が完成した工事600万円、施工を伴わない商品販売50万円なら、その区分を残します。兼業資産の表示には金額割合による扱いもあるため、分類を済ませた後に記載要領で表示方法を決めます。下表は対応を考えるための例で、科目名だけで自動変換するルールではありません。未確認の残高を「その他」へまとめて終えず、内訳を説明できる状態にします。

税務科目から建設業科目を検討する対応例(取引内容を確認して分類)
元の科目・資料検討する建設業用の欄仕分けの確認点
売掛金・工事別請求一覧第15号:完成工事未収入金等売上認識済みの工事か、兼業かを区分
仕掛品・工事別原価台帳第15号:未成工事支出金未成に残す原価。認識済み原価を重ねない
買掛金・外注先別残高第15号:工事未払金等工事原価と設備購入・本社経費を区分
前受金・入金一覧第15号:未成工事受入金等受入れと売上の認識時点を確認
売上高・請負/販売一覧第16号:完成工事高/兼業事業売上高施工を伴わない物販等を区分
製造原価・給与/外注明細第16号:材料費/労務費/外注費/経費完成・未成と現場・本社の役割を確認

確認元:埼玉県:様式第15号の記載要領 埼玉県:様式第15号・法人の貸借対照表

完成工事原価を、材料・労務・外注・経費へ分ける

第16号の完成工事原価報告書は、当期に売上として認識した工事に対応する原価を整理する書類です。材料購入額の年間合計をそのまま材料費とすると、未使用材料や翌期の工事分が混ざります。完成工事、未成工事、材料貯蔵品の区分を工事台帳と棚卸資料で確認します。

材料費、労務費、外注費、経費の4区分を合計します。「うち労務外注費」は労務費の内数、「うち人件費」は経費の内数なので、別途加算しません。直接作業員、本社事務員、現場管理者の給与は役割を確認して区分します。架空例は材料6,000、労務3,000、外注6,000、経費2,000千円で原価17,000千円です。期首未成1,500+当期投入17,500−期末未成2,000=17,000という照合もできます。本例は引渡し時に収益を計上する前提で、進捗に応じた収益認識の会社では、認識済み原価を重複して未成に残しません。

確認元:埼玉県:様式第16号・損益計算書と完成工事原価報告書 国土交通省:勘定科目の基礎分類(旧掲載)

売上から当期純利益まで、架空決算でつなぐ

下表は、架空の株式会社Aの1事業年度を税抜経理で整理した例です。完成工事高21,000千円、兼業事業売上高2,000千円を別々に把握し、対応する原価も分けます。売上総利益は4,800千円、販売費及び一般管理費2,500千円を差し引いた営業利益は2,300千円です。受取利息100、支払利息200、特別損益なし、法人税等700千円とすると、当期純利益は1,500千円です。

法人の記載要領には、兼業売上の割合が軽微な場合の区分表示の扱いがあります。しかし、表示をまとめられる場合も、完成工事高を工事資料と照合できる内訳は残します。様式第3号の工事施工金額の当期合計と照合するのは建設工事の21,000千円で、兼業を含む23,000千円ではありません。工事経歴書に主要工事だけを記載したページの小計を、そのまま完成工事高にしないことにも注意します。

株式会社Aの損益と完成工事原価の架空例(単位:千円、税抜経理)
記入する欄・集計金額照合・計算
完成工事高/兼業事業売上高21,000/2,000売上高合計23,000
原価報告書:材料費/労務費6,000/3,000労務費のうち労務外注費1,000
原価報告書:外注費/経費6,000/2,000経費のうち人件費500
完成工事原価/兼業事業売上原価17,000/1,200原価合計18,200
完成工事総利益/兼業事業総利益4,000/800売上総利益4,800
販売費及び一般管理費2,500営業利益2,300
受取利息及び配当金/支払利息100/200経常利益2,200
特別利益・特別損失・法人税等調整額いずれも0税引前当期純利益2,200
法人税、住民税及び事業税700税額計算の説明用の仮定
当期純利益1,500第17号の当期純利益と照合

確認元:埼玉県:様式第16号・損益計算書と完成工事原価報告書 埼玉県:様式第16号の記載要領 埼玉県:決算報告提出の手引き(令和8年4月)

貸借対照表は、期末残高と工事の状態から書く

第15号は年度末時点の残高を示します。完成工事未収入金は売上認識した工事代金の未収分、未成工事支出金は未成に残す工事原価等、未成工事受入金は未成工事について受け取った代金等を確認します。先に請求した、先に入金したという理由だけで、すべてを完成売上に移さないようにします。

下表の資産は現金預金7,000、完成工事未収入金6,000、未成工事支出金2,000、材料貯蔵品1,000、機械・運搬具の帳簿価額4,000千円、合計20,000千円です。機械の取得価額5,000、減価償却累計額1,000千円なら差引4,000を確認します。負債11,000と純資産9,000の合計も20,000千円です。借入金は返済予定から流動・固定を分け、相殺して残高を小さく見せません。表は説明用の集約で、実際の様式では該当科目と累計額の欄に記入します。

株式会社Aの貸借と資本の架空例(単位:千円、各債権債務は帳簿残高)
区分科目・集計金額
資産現金預金7,000
資産完成工事未収入金6,000
資産未成工事支出金2,000
資産材料貯蔵品1,000
資産機械・運搬具(減価償却後)4,000
資産資産合計20,000
負債工事未払金4,000
負債未成工事受入金2,000
負債短期借入金2,000
負債未払金/未払法人税等300/700
負債長期借入金2,000
負債負債合計11,000
純資産資本金5,000
純資産繰越利益剰余金4,000
純資産純資産合計9,000
照合負債純資産合計=資産合計20,000

確認元:埼玉県:様式第15号・法人の貸借対照表 埼玉県:様式第15号の記載要領

第17号で、前期末から当期末までの資本をつなぐ

株主資本等変動計算書を前年の数字だけ差し替えて作ると、配当や増資を落としがちです。科目ごとに当期首残高、変動の理由・金額、当期末残高をつなぎ、期末額を第15号の純資産と照合します。第16号の当期純利益も、利益剰余金が増減する理由の一つです。

株式会社Aは資本金5,000、期首の繰越利益剰余金2,500千円で期首純資産7,500千円、増資・配当・その他変動なしとします。当期純利益1,500を加えると繰越利益剰余金は4,000、期末純資産は9,000千円です。純利益を資本金に加えたり、利益剰余金と二重計上したりしません。配当がある会社は、当期利益を足すだけでは合いません。合同会社などの持分会社では、記載要領に従い社員資本等変動計算書・社員資本という名称を用いる点も確認します。

確認元:埼玉県:様式第17号・株主資本等変動計算書の記載要領

注記表と附属明細表は、それぞれの条件を確認する

第17号の2は数値の前提を説明する書類です。重要な会計方針では、工事収益・原価をいつ認識するか、採用する消費税方式等を、実際の処理に合わせて記載します。監査人の有無、公開会社か株式譲渡制限会社か、持分会社かで必要な注記が異なるため、記載要領の区分表を先に確認します。該当事項がない欄は、確認の上で「該当なし」とし、他社の方針をコピーしません。

埼玉県の手引きでは、資本金が1億円を超える株式会社、又は貸借対照表の負債合計が200億円以上の株式会社は、第17号の3も添付します。対象会社は完成工事未収入金の相手先・滞留状況や貸付金・借入金等の明細を確認します。未収入金の当期計上分と前期以前計上分の合計も、貸借対照表の残高へつなげます。附属明細表の提出対象に当たらないことを理由に、注記表も不要としないでください。

確認元:埼玉県:様式第17号の2・注記表の記載要領 埼玉県:様式第17号の3・附属明細表の記載要領 埼玉県:決算報告提出の手引き(令和8年4月)

千円への換算と、消費税方式を最後までそろえる

通常の金額表示は千円単位です。元データは円で保存し、組替と照合を終えてから表示用に換算します。12,345,678円を12,345千円と表示する切捨ての例なら、残る678円を元データで追える状態にします。端数による合計差と入力漏れによる差を区別し、合わないから現金や利益剰余金へ差額を押し込む処理は避けます。具体的な端数の扱いは申請先・分析機関の案内にも合わせて確認します。

経審を予定する場合、県の現行決算手引きは課税事業者を税抜、免税事業者を税込で作成する扱いを示しています。経審の予定がない場合も採用した方式を明示し、財務諸表と施工金額の前提をそろえます。税込の試算表を全部1.1で割る方法は使えません。給与、借入金、現金など性質の異なる科目があり、工事の債権債務でも売上・原価と同じ単純換算にはなりません。税区分や調整の内訳を確認して作成します。

確認元:埼玉県:様式第15号の記載要領 埼玉県:様式第16号の記載要領 埼玉県:様式第17号の2・注記表の記載要領 埼玉県:決算報告提出の手引き(令和8年4月)

新規申請と毎年の決算報告で、添付の意味を分ける

新規申請の財務諸表は、事業の実態や財産的基礎を確認する資料です。県の新規申請一覧は、法人の直近決算終了から受付まで2か月未満なら1期前でも可、2か月以上なら直近分を添付する扱いを示しています。最初の決算期が来ていない会社は開始時の資料を含めて確認し、実績のない損益を架空の1年分として作りません。資本金だけで財産的基礎の確認が済むとも限りません。

許可後の決算報告は年度終了後4か月以内に当該年度を報告する手続きです。財務諸表に加え工事経歴・施工金額・納税関係資料等を確認し、株式会社は事業報告書も点検します。更新で財務諸表の添付が省かれる場合も、毎年の決算報告を省略できる意味ではありません。2026年10月4日確認時点で国交省はJCIP操作マニュアル2.8版を案内しています。電子申請でも年度・数字・添付の照合を済ませ、前期資料と当期資料を取り違えないで提出します。

確認元:埼玉県:申請書類一覧(令和8年4月) 埼玉県:決算報告提出の手引き(令和8年4月) 国土交通省:JCIPの案内・現行操作マニュアル 埼玉県:許可の要件(令和8年4月)

確認するときの整理ポイント

  • 税務科目・工事番号・建設業様式の対応表を作り、未分類残高をなくす
  • 第16号の原価・純利益を、原価報告書・第17号・第15号と照合する
  • 対象年度、消費税方式、注記・附属明細表の要否を提出区分ごとに確認する