2026年7月1日以降に申請する経営事項審査では、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」の有無が新たな評価項目になりました。要件に合う宣言が審査基準日に有効で、宣言書と誓約書を提出できれば、W1の該当項目で5点の評価対象になります。ここでいう5点は総合評定値Pへそのまま5点を足す意味ではありません。この記事では、申請前に確認する日付、宣言の進め方、埼玉県の様式第7号の選び方を、経審を準備する建設会社向けに整理します。

自主宣言は、技能者の処遇改善に向けた取組を行うことを事業者が表明する制度です。点数だけを目的に、実行できない内容を宣言することはできません。元請・下請のどちらで宣言するか、必須項目に賛同できるか、予定した取組を開始日までに実行できるかを社内で確かめてください。なお、以下は2026年11月4日に国土交通省と埼玉県の公開資料を確認してまとめたものです。

2026年7月の経審改正と「5点」の意味

国土交通省の改正資料では、2026年7月1日以降の経営事項審査に「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言状況を評価する項目が追加されました。W(その他の審査項目・社会性等)のうち、W1「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況」に置かれ、項目の配点は5点です。審査基準日が宣言日以降であり、宣言書と誓約書を提出する場合が対象とされています。

「5点がPに直接加算される」とは限りません。総合評定値Pは、完成工事高や技術力などのX1・X2・Y・Zと、社会性等のWを所定のウェイトで組み合わせて算出します。Wのウェイトは0.15ですが、今回の5点はW1の一項目に設定された評価点です。これだけを見てPが一律に何点上がると計算することはできません。個別の評点は他の評価項目や評点換算を含めて確認します。

制度の要点
確認項目内容実務上の注意
適用開始2026年7月1日以降の経審申請埼玉県は7月1日以降の申請に令和8年7月改訂版の手引き・様式を案内しています。
評価項目W1の「自主宣言制度の宣言の有無」W1の他項目や全体のW評点と分けて考えます。
項目配点5点総合評定値Pへそのまま5点が加わるという意味ではありません。
主な条件審査基準日が宣言日以降で、宣言書と誓約書を提出審査基準日に宣言が有効か、宣言日・取組開始日も合わせて確認します。
宣言できる立場元請事業者または下請事業者制度上は発注者の立場もありますが、経審の加点対象として案内されているのは元請・下請です。立場を重複して申請できません。

経審の見直しは、公共工事を直接請け負うための客観評価に関わります。申請の流れや工事経歴書の準備も並行して確認したい場合は、工事経歴書の書き方と経審の掲載順も参考にしてください。

加点の前に確認する3つの日付

まず、次の3日を別々に整理します。日付が前後すると、申請したのに評価につながらない、または誓約書の申請区分を誤る原因になります。

  1. 審査基準日:通常は申請する事業年度の終了日です。決算日をもとに、今回の経審で使う日付を手引き・申請書で確認します。
  2. 宣言日:自主宣言ポータルへ申請した日です。国土交通省の案内上、審査基準日がこの日以降であることが加点条件です。
  3. 取組開始日:宣言する取組のうち、開始が最も遅いものまで含めて、すべてを始める日です。申請時に1年以内の日を設定します。

たとえば、審査基準日が2026年12月31日の会社が宣言を検討する場合、宣言日をその基準日より後にしてしまうと、今回の審査では条件に合いません。宣言をいつ出すかだけでなく、取組開始日までの社内準備と、宣言の有効期限も確認しましょう。宣言ポータルでは、申請日の翌月を起算日として2年経過後の最初の12月末までが有効期間とされています。将来の審査基準日がその期間外になる場合は、更新時期も予定に入れます。

申請前に見る日付の関係
状況確認すること次の行動
審査基準日より前に宣言済み宣言が審査基準日に有効か宣言書の内容・日付と様式第7号を確認し、経審書類へ反映します。
審査基準日と宣言日が同日宣言申請日が確認でき、当日に有効な宣言として扱えるか時刻や受付完了の扱いを推測せず、提出先・制度窓口へ確認して余裕を持って申請します。
宣言日が審査基準日より後今回の審査の基準日要件に合わない今回の加点を前提にせず、次回の審査基準日と宣言の有効期間を見て計画します。
宣言の有効期間が基準日前に終了基準日に有効な宣言があるか有効期限と更新手順を確認します。

これは日付を整理するための表です。個別の審査基準日、決算期変更、組織再編などがある場合は、県の最新手引きと審査窓口の案内を優先してください。

自主宣言を申請する前の社内確認

自主宣言は、代表者名で会社の取組を公表する制度です。申請後は企業名と代表者名を含む宣言文がポータルで公開されます。入力作業の前に、担当者だけで決めず、代表者と、賃金・見積・現場運営・CCUSを担当する人が内容を確認してください。

1. 元請・下請の立場を一つ決める

ポータルでは元請事業者・下請事業者・発注者のいずれかを選びます。同じ会社が立場を重複して宣言することはできません。経審の加点を考える建設会社は、元請または下請の立場で宣言します。どちらを選ぶか迷ったら、現場で元請・下請として請け負う件数や比率を振り返り、ポータルの案内に沿って選択してください。比率が半々程度なら、制度のFAQは任意の立場を選べるとしています。

2. 必須項目を実際に続けられるか確認する

必須項目は未記載の項目があると申請できません。宣言する立場によって、CCUSを使うための環境整備や技能者登録など、確認する内容が異なります。国土交通省のガイドラインでは、労務費・材料費の内訳が分かる見積書、下請から提出された見積内容への配慮、技能者の処遇確保、人材育成、国の調査への協力などを必須項目として案内しています。元請・下請それぞれの具体的な選択肢は、申請前に最新ガイドラインで読み合わせてください。

任意項目は、必須項目に加えて公表したい独自の取組を記載する欄です。無記載でも申請できます。まだ社内で実施できない施策を、印象を良くする目的で書き足さないでください。

3. 開始日までの実行計画を作る

全ての取組が申請時点で始まっていなくても申請できます。ただし、申請時に設定する取組開始日までに、宣言した全ての取組を始める必要があります。開始日を先に設定するのではなく、見積書の様式改定、社内周知、CCUSの登録・現場運用、賃金や手当の確認、担当者の決定などを一覧にし、最も準備に時間がかかる取組に合わせます。

取組開始日までに実行できなかった場合は、制度窓口の案内に従って掲載を取り下げます。取下げをしないまま、実施していると誓約することは避けてください。また、申請内容に疑義が生じた場合の照会に、会社として回答できる状態を保ちます。

申請前の確認分担例
担当確認する事項手元に用意するもの
代表者・総務公表される会社名・代表者名、宣言する立場、宣言内容登記・許可情報の現状、社内決裁記録、担当者連絡先
見積・営業担当労務費等を分けた見積書を作れるか、下請見積りをどう確認するか現行の自社見積書、下請見積りの確認手順
現場・技能者担当CCUSの利用環境、対象技能者、周知・運用方法登録状況、現場の運用手順、開始までの作業予定
経審担当宣言日・開始日・審査基準日の前後関係、提出様式決算日、宣言受付記録、現行の20004帳票・様式第7号

ポータルで宣言する手順

  1. 制度ガイドを読む:国土交通省の申請案内から制度の目的、申請要件、公表範囲、必須項目を確認します。
  2. 申請する会社と代表者を確認する:許可業者は許可情報が表示に使われる場合があります。商号・代表者等に誤りがあれば、申請前に許可情報を確かめ、制度窓口と許可行政庁の案内に沿って整理します。
  3. 立場を一つ選ぶ:元請・下請・発注者から選択します。経審の加点を見込む場合は、元請または下請であることを確認します。
  4. 必須項目を入力する:自社の運用で実施可能な内容か、代表者と担当者が確認します。任意項目は必要な場合だけ追加します。
  5. 取組開始日を設定する:申請日から1年以内の日を設定します。宣言する取組のうち、開始が最も遅いものまで全て始められる日を選びます。
  6. 申請内容を保存する:申請受付の記録や宣言内容を保存し、宣言日・会社情報・取組開始日を経審担当者へ共有します。
  7. 公表と実行を確認する:掲載まで最大1か月程度かかることがあります。掲載通知を確認し、取組開始日以降は宣言どおりの運用を続けます。

申請後は、宣言内容・会社情報・担当者が変わったときの連絡や、宣言の定期見直しも必要です。制度サイトのFAQでは、申請内容に応じて掲載まで最大1か月程度と案内されています。審査基準日や経審の予約日から逆算し、ぎりぎりの申請を避けてください。

埼玉県の様式第7号を記入する

埼玉県は、令和8年7月1日以降の申請に使う経審手引き・様式と、「自主宣言制度に関する誓約書(様式第7号)」、記入例、20004帳票を公開しています。古い年度のファイルを使い回さず、提出前に埼玉県の最新手引・様式ページから最新版を取得してください。

様式第7号の記入順
欄確認・記入する内容間違えやすい点
提出先埼玉県知事あての申請なら、不要な地方整備局長・北海道開発局長を消す複数の宛先を残したままにしない。
住所・商号・代表者今回の経審申請者の情報を記載担当者名や営業所名を代表者欄へ書かない。
申請区分審査基準日に取組開始日がまだ到来していない場合はA、開始日が到来して実際に取り組んでいる場合はB開始日が到来しただけで、取組未実施なのにBを選ばない。
宣言日ポータルで自主宣言を申請した日経審の申請日や審査基準日と混同しない。
審査基準日今回受審する経審の基準日経審申請の提出日を書かない。
取組開始日ポータルで設定した日付会社内で予定している別の日に置き換えない。
「行う/行っている」申請区分と取組状況に応じて不要な語を消す申請区分・日付・実際の状況で内容が矛盾しないか確認する。

様式の記載要領では、審査基準日に取組開始日がまだ来ておらず、開始日以降に実施する場合は「A.取り組みを行う」、基準日に開始日が到来していて、実際に取り組んでいる場合は「B.取り組みを行っている」とされています。Aを選んだ場合は開始日以降に実施する誓約、Bを選んだ場合は基準日時点で実行中であることの誓約です。実態と違う区分を選ぶと虚偽申請となるおそれがあるため、日付だけで機械的に選ばないでください。

様式第7号には、宣言した日付、審査基準日、取組開始日を並べて記入します。入力後、ポータルの申請記録・宣言内容と一項目ずつ照合します。埼玉県が公開する記入例は説明のための例示です。宛先や会社情報をそのまま転記せず、自社の審査基準日と申請内容に置き換えてください。

経審の申請書類へ反映する

埼玉県の令和8年7月改訂版では、20004帳票「その他の審査項目(社会性等)」に「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度の宣言の有無」の欄が設けられています。現行帳票では項番52に「有・無」を記入します。今回の申請に使うファイルが7月1日以降の版か確認し、宣言の条件を満たしていない場合は「有」にしないでください。

国土交通省の改正概要は、宣言書と誓約書を提出する場合を加点条件にしています。埼玉県の提出案内・手引きに従って、少なくとも次を一つの提出セットとして扱い、漏れや日付の不一致がないか点検します。

  • 最新の経審申請書・20004帳票
  • ポータルで申請した自主宣言書または県が提出資料として指定する宣言内容の確認書類
  • 審査基準日・取組開始日を記入した誓約書(埼玉県の様式第7号)
  • 宣言日、取組開始日、会社名・代表者名を照合できる申請記録
  • 今回の審査基準日に宣言が有効であることの確認

「宣言書」の出力・添付方法や、電子申請での添付欄は申請方法や県の最新案内に従ってください。提出書類名が旧版と異なる可能性もあるため、手元の前年控えだけで判断せず、埼玉県が公開する令和8年7月版と受付案内を見直します。埼玉県以外で受審する場合は、該当する許可行政庁の様式・提出方法を使います。

よくある間違いと準備チェック

よくある間違い

  • 「5点」を総合評定値Pへそのまま5点加算できると見込む。
  • 経審の申請日を審査基準日だと思い、宣言日との前後関係を確認しない。
  • 審査基準日より後に申請した宣言で、今回の経審に加点されると考える。
  • 元請・下請・発注者を重複して宣言する、または発注者だけの宣言を経審の加点対象と扱う。
  • 必須項目の取組が実施できないのに、点数を意識して申請する。
  • 取組開始日までに全ての取組が開始していないのに、そのまま掲載を続ける。
  • 審査基準日に開始日が到来しているというだけで、実際には未実施なのに様式第7号でBを選ぶ。
  • 古い20004帳票・誓約書を使用し、現行欄や日付の扱いを見落とす。

提出前チェックリスト

  • 今回の審査基準日と経審申請日を別々に確認した。
  • 宣言日が審査基準日以前で、基準日に宣言が有効であることを確認した。
  • 宣言の立場は一つで、元請または下請を選んでいる。
  • 代表者が公表内容・必須項目を確認し、開始日までの実行担当を決めた。
  • 審査基準日と取組開始日の関係に合う様式第7号の申請区分を選んだ。
  • 様式第7号、20004帳票、宣言記録で会社名・代表者・3つの日付が一致している。
  • 宣言書と誓約書を、埼玉県の現在の受付方法に沿って用意した。
  • 有効期間と、次回の更新・審査基準日までの予定をカレンダーに登録した。

よくある質問

自主宣言をすれば、総合評定値Pが必ず5点上がりますか?

必ずPが5点上がるという意味ではありません。5点はW1内の評価項目に設定された配点です。PはX1・X2・Y・Z・Wを組み合わせて算出されるため、個別のPへの影響は他の評点も含めて確認してください。

建設業許可がない会社でも自主宣言できますか?

制度の申請自体は、事業規模や建設業許可の有無にかかわらず、申請要件を満たす場合に可能と案内されています。ただし、経審の加点を受けるには経審を申請できる許可業者であり、審査基準日・宣言日・必要書類などの条件を満たす必要があります。

申請時点で、宣言した取組が全て始まっていなくてもよいですか?

制度上は将来開始する内容を含めて申請できます。申請時に設定する取組開始日までに、宣言した全ての取組を開始する必要があります。開始日までに実施できない場合は、制度窓口の案内に従って掲載を取り下げてください。

元請と下請の両方で申請できますか?

できません。自主宣言は元請事業者・下請事業者・発注者のいずれか一つの立場で行い、重複して宣言できないと案内されています。経審の加点対象としては元請または下請のどちらも対象です。

埼玉県以外でも様式第7号を使えますか?

様式第7号は埼玉県が公開する経審申請用の誓約書です。他の都道府県や大臣許可の手続きでは、提出先の最新手引き・様式を確認してください。

宣言の公表まで、どのくらいかかりますか?

制度のFAQでは、申請内容によって最大1か月程度かかり、公開はメールで通知すると案内されています。経審の審査基準日が迫ってからではなく、必要な準備期間を取って申請してください。

確認した公式資料

制度資料確認日:2026年11月4日。経審の様式・受付方法・制度案内は更新される場合があります。実際に申請する際は、提出先の最新資料と窓口の案内をもう一度確認してください。

書類の作成・調査・申請などの実際の業務は別途有料です。相談後に正式依頼をするかどうかは任意です。費用は料金・サポート内容、ご相談はお問い合わせをご覧ください。