不動産を兄が独り占め!? 実例から学ぶ遺産分割の交渉術【行政書士が解説】

不動産を兄が独り占め!? 実例から学ぶ遺産分割の交渉術【行政書士が解説】
「遺産は兄が家をもらって、私は現金で我慢しろと…これって不公平じゃないですか?」
相続の場面でよくあるのが、不動産をめぐる兄弟間の対立です。
この記事では、実際の事例をもとに、交渉の方法や法的な考え方を詳しく解説します。
1. はじめに|不動産相続でもっとも揉めやすいのは“家”
不動産は分けにくく、お金のように均等に分配するのが難しいため、遺産分割でもっとも揉めやすい財産です。
特に実家など思い入れがある不動産は感情の対立を招きやすく、冷静な交渉が求められます。
2. 実際の相談事例から読み解く「兄の独り占め問題」
■ 事例紹介
父親が亡くなり、相続人は長男と妹の2人。遺言書はありません。兄は長年、実家で両親と同居していました。
兄:「俺が家をもらうのは当然だろ? 親の介護もしてたし」
妹:「不動産だけで3000万円もするのに、私は預金500万円だけ?不公平すぎる…」
典型的な「同居していた兄が不動産を主張し、他の相続人が不満を抱える」パターンです。
3. 不動産は誰かの名義にするには「全員の合意」が必要
- 遺言書がない限り、遺産分割には相続人全員の合意が必要
- 登記(名義変更)には遺産分割協議書と署名押印が必須
- 兄が勝手に登記することはできず、法務局では受け付けられない
つまり、兄の「独断」だけでは不動産を取得できないのです。
4. 「介護したから家を独占」は認められるのか?
介護の貢献があった場合でも、それだけで法定相続分が増えるわけではありません。
そのために用意されているのが「特別寄与料」という制度です。
■ 特別寄与料とは?
相続人以外(例えば長男の妻など)が被相続人に特別な貢献をした場合に、その分を金銭で請求できる制度。
ただし、以下のような制限があります:
- 相続人本人の介護は対象だが、相続分が増えるのではなく「寄与分」として調整される
- 他の相続人との協議、あるいは家庭裁判所での調停が必要
結論として、「介護したから家をもらって当然」は法的には通用しないといえます。
5. 交渉の鍵は「代償分割」と「不動産評価の正当性」
■ 代償分割とは?
不動産を1人が相続し、その代わりに他の相続人へ金銭を支払う方法です。
■ 実例:兄が家を取得する代わりに妹へ支払う
- 不動産評価:3000万円
- 相続人2人 → 各1500万円相当を取得する権利
- 兄:家を単独取得(評価3000万円)
- 妹:代償金1500万円を兄から受け取る
■ 不動産評価の注意点
代償分割には「不動産の正確な価値」を算出する必要があります。
評価方法には以下のようなものがあります:
- 路線価(税務評価)
- 固定資産税評価額
- 実勢価格(不動産業者の査定)
複数の評価を照らし合わせて、相続人全員が納得できる価格を見極めましょう。
6. 話し合いが進まないときは「調停」「審判」も視野に
■ 家庭裁判所の調停手続き
当事者間の協議が平行線の場合は、家庭裁判所での「遺産分割調停」を利用できます。
- 申立書を作成・提出(費用は数千円)
- 調停委員が中立の立場で関与
- 必要書類:戸籍、財産目録、評価資料など
■ 審判とは?
調停で合意できなければ、最終的に裁判官が判断を下す「審判」に進みます。
強制力があるため、相手の同意がなくても手続きが完了します。
7. 交渉の実践ポイントとNG例
■ 交渉のコツ
- 事前に不動産の価格を調査しておく
- 第三者(行政書士・弁護士)を交えて冷静に進める
- 感情論ではなく、数字と根拠で話す
■ NG例
- 「家族だから」と印鑑をすぐ押す
- 相場を知らずに合意してしまう
- 兄に任せきりにする
大切なのは、事前準備と情報武装です。
8. まとめ|“遠慮”ではなく“正当な主張”を
相続は「声が大きい人」ではなく、「法的に正当な人」が勝ち取るもの。
感情に流されず、自分の権利を主張しましょう。
当事務所では、こうした不動産相続の交渉サポートも行っております。
相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。