配偶者と相続順位を確認し、例外を戸籍や手続きの資料で調べます
日本の民法では、法律上の配偶者は相続人となり、それ以外の親族は子、直系尊属、兄弟姉妹の順に確認します。ただし、相続放棄、相続欠格、廃除などにより相続権がない場合があるため、「配偶者だから、どのような事情でも相続する」とは限りません。
相続人を調べる目的は、家族の人数を数えることだけではありません。誰が話合いに参加するのか、どの戸籍が必要か、法定相続分をどのように計算するかを整理するためです。家族が把握している関係と、法律上の身分関係を分けて確認しましょう。国税庁「相続人の範囲と法定相続分」
制度確認日:2026年9月11日。本記事は現在の日本の民法を前提とした一般的な案内です。古い相続や外国法が関係する場合は、適用されるルールを別に確認します。

配偶者は別枠で確認し、親族は先の順位から調べる
配偶者とは、亡くなった時点で法律上の婚姻関係にある夫または妻です。子と同じ「第1順位」に数えるのではなく、相続権がある配偶者と、次の順位に従って決まる親族が一緒に相続人になります。
第1順位は子と、その代襲者
法律上の子が対象で、養子も含まれます。子が先に亡くなっている場合などは、孫などが代襲して相続人となることがあります。子またはその代襲者が相続人となる場合、父母や兄弟姉妹は相続人になりません。
第2順位は父母・祖父母などの直系尊属
第1順位の相続人がいない場合に確認します。父母と祖父母がともに生存していれば、亡くなった方との親等が近い父母が優先されます。「親が一人亡くなったから、その分を祖父母が代襲する」という仕組みではありません。
第3順位は兄弟姉妹と、その代襲者
第1・第2順位の相続人がいない場合に対象となります。兄弟姉妹が先に亡くなっている場合などには、その子である甥・姪が代襲することがあります。順位と配偶者の扱いは、民法887条・889条・890条に定められています。
法定相続分は「親族全員の取り分」と「一人の取り分」を分けて計算
配偶者と子が相続人なら、配偶者が2分の1、子全員で2分の1です。配偶者と直系尊属なら配偶者が3分の2、直系尊属全員で3分の1。配偶者と兄弟姉妹なら、配偶者が4分の3、兄弟姉妹全員で4分の1となります。
| 一緒に相続する親族 | 配偶者/親族全員 |
|---|---|
| 子 | 1/2 / 1/2 |
| 父母などの直系尊属 | 2/3 / 1/3 |
| 兄弟姉妹 | 3/4 / 1/4 |
同じ順位に複数の子や直系尊属がいる場合は、原則としてそのグループの取り分を均等に分けます。例えば配偶者と子2人なら、配偶者が2分の1、子は一人4分の1です。配偶者と父母2人なら、父母は一人6分の1になります。国税庁の割合の説明
配偶者がおらず、子2人だけが相続人なら一人2分の1です。配偶者以外に相続人となる親族がいなければ、配偶者の法定相続分は全部です。これは「配偶者と同居していた家族がいない」という意味ではなく、順位に従って調べた結果で判断します。
父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹がいるときは、その法定相続分は父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1です。兄弟姉妹全員の取り分を、単純に人数で割るとは限りません。代襲がある場合も、まず亡くなった親の系統の取り分を計算します。民法900条・901条
法定相続分は、必ずその割合で財産を現物分割しなければならないという意味ではありません。遺言の内容や関係者を確認したうえで、共同相続人全員が合意すれば異なる分け方ができる場合があります。遺留分や特別受益、寄与分、債務の問題は別に検討が必要です。
代襲相続は、死亡だけでなく欠格・廃除との関係も確認
代襲相続は、本来の相続人に代わって、その子などが相続する仕組みです。被相続人の子については、相続開始以前の死亡、相続欠格、廃除による相続権の喪失が原因になります。ただし、代襲する人が被相続人の直系卑属であることなど、法律上の関係の確認も必要です。民法887条
例えば、亡くなった方に配偶者と子Aがいて、もう一人の子Bは先に死亡し、Bに子が2人いるとします。ほかに相続権へ影響する事情がなければ、配偶者は2分の1、Aは4分の1、Bの子は一人8分の1です。孫2人をAと同じ段階の「子3人」と数えない点が重要です。
子の代襲は、条件によりひ孫へ続く再代襲もあります。一方、現行法で兄弟姉妹を代襲するのは甥・姪までで、その子への再代襲はありません。古い相続では当時の法令を確認します。
相続欠格は、遺言を偽造するなど法律で定める事由によって相続資格を失う制度です。廃除は、遺留分を有する推定相続人の虐待などについて、家庭裁判所の手続きにより相続権を失わせる制度です。兄弟姉妹は廃除の対象ではありません。「仲が悪い」「介護をしなかった」というだけで、家族が相続人から外すことはできません。個別に欠格・廃除が成立しているかは弁護士へ確認してください。民法891条・892条・1042条
相続放棄は代襲の原因になりません
子が相続放棄をした場合、その子どもである孫が、放棄した親の代わりに代襲相続するわけではありません。相続放棄をした人は、その相続では初めから相続人でなかったものと扱われます。代襲の原因を定める民法887条と、放棄の効力を定める939条を分けて考えます。民法887条・939条
子のうち一人が放棄しても、ほかに相続権のある子がいれば、すぐに父母へ順位が移るわけではありません。第1順位の相続人がいなくなった場合には、第2順位、さらに第3順位を確認します。配偶者は別に扱うため、誰が放棄し、誰が残るかを一人ずつ整理します。
「財産を受け取らない」という家族間の合意と、家庭裁判所への相続放棄の申述は別です。放棄を検討する期間は原則として、自己のために相続が始まったことを知った時から3か月です。起算点や期間伸長の必要性は個別に確認してください。裁判所「相続の放棄の申述」
借金が心配な場合は、払戻し・売却・廃車などを進める前に弁護士へ確認します。家庭裁判所へ出す書類の作成は司法書士等、法的判断や代理は弁護士の担当です。当事務所への問い合わせは放棄の申述にならず、期限も延びません。
養子・前婚の子・内縁の配偶者を混同しない
離婚した元配偶者は、配偶者としての相続人ではありません。一方、亡くなった方と前の配偶者との間の子は、法律上の親子関係があれば相続人となります。長く連絡していないことや、婚姻で姓が変わったことだけで相続権がなくなるわけではありません。
養子は、養親の子として相続順位を確認します。普通養子縁組と特別養子縁組では実親側との関係が異なり、離縁の有無も確認が必要です。養子縁組前に生まれた子の代襲なども、単に「孫」と呼ばれているかでは判断できません。民法809条・817条の9・887条
内縁の夫・妻は、法律上の配偶者としての相続人には含まれません。配偶者の連れ子も、亡くなった方との養子縁組などの法律上の親子関係がなければ、子として相続するわけではありません。遺言による遺贈などで財産を受け取ることと、法定相続人に当たることは区別します。
戸籍の確認と、戸籍だけでは分からない事項を並行する
まず亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を確認し、子、直系尊属、兄弟姉妹の順に必要な範囲を調べます。相続人の現在の戸籍や、先に亡くなった方とのつながりも確認します。取得方法は戸籍の集め方の記事へ進んでください。
戸籍だけで相続放棄の有無や遺産の分け方まで分かるわけではありません。遺言、放棄の手続きに関する資料、相続開始後に亡くなった方の有無も合わせて整理します。法定相続情報一覧図にも、相続放棄をした方の氏名が記載されるため、一覧図だけで実際の取得者を決めないでください。法務局の一覧図に関する留意事項
未成年者や意思確認が難しい方、所在不明者がいる場合は、協議への参加方法を先に確認します。争いがあれば弁護士へ、登記は司法書士、税の申告や税務上の人数計算は税理士へ確認し、民法上の相続人の整理だけで完了としないことが大切です。
法定相続人についてよくある質問
長男が優先されますか?
現行の民法に、長男だから優先するという順位はありません。複数の子の法定相続分は原則として均等ですが、遺言や合意などにより実際の取得内容が変わる場合があります。
孫が何人いても、必ず相続人になりますか?
いいえ。その親である子が相続人である間は、孫だから当然に相続するわけではありません。代襲の原因や養子縁組などの法律上の関係を確認します。
連絡が取れない相続人を除いて協議できますか?
連絡が取れないことと相続権がないことは別です。家族だけで除外せず、所在や参加方法を確認します。必要な裁判所手続きや法的判断は、弁護士・司法書士等へ相談してください。
相続人と資料が整理できたら、必要な書類作成へ
相続関係を調べる資料が不足している場合は、戸籍収集・相続人調査をご確認ください。相続人全員の合意内容を書面にする支援は、遺産分割協議書作成で案内しています。交渉の代理とは別の業務です。