外国籍の相続人がいる場合は、国籍・家族関係・居住地を分けて整理します
外国籍の相続人がいる日本の相続では、「海外の書類が必要」とだけ考えると、誰の何を証明するかが曖昧になります。最初に、亡くなった方の国籍、相続人と考えられる方の国籍、各人の居住地を分け、家族関係と本人・住所・署名を示す資料を整理してください。
日本の戸籍だけで外国に関係するすべての身分関係を確認できるとは限りません。一方、外国籍であることだけを理由に相続人から外したり、日本に住む外国籍の方へ海外在住日本人と同じ証明を求めたりすることも避けます。この記事では、日本の提出先に必要資料を照会するための準備を扱います。制度・公式案内の確認日は2026年9月15日です。

相続人の国籍と、相続に適用する法律は別の確認事項です
日本の「法の適用に関する通則法」36条は、相続について亡くなった方の本国法によると定めています。外国籍の相続人が一人いるから外国法になる、あるいは財産が日本にあるから必ず日本法になる、という決め方ではありません。法の適用に関する通則法36条
例えば、亡くなった方が日本国籍で、子の一人が外国籍というケースでは、子の国籍だけを見て日本法上の子としての相続権がなくなると考えません。まず亡くなった方との法律上の親子関係を確認します。日本法では子や配偶者の相続に関する規定があります。民法887条・890条
亡くなった方が外国籍の場合には、本国法の内容や、その国のルールが日本法を指定する「反致」の問題等を個別に検討します。重国籍、国籍を持たない場合、地域によって法律が異なる国についても通則法に規定があります。国名だけから一般記事で相続人や取り分を確定することはできません。通則法38条・41条
婚姻や養子縁組の成立、遺言に関する判断も、相続全体と同じ一つの資料だけで済むとは限りません。外国法の内容や適用、権利関係の判断が必要な場合は、その分野を扱う弁護士等に確認します。日本の書類を作る作業と、外国法を踏まえた判断を分けて相談してください。
日本人の戸籍にある外国人配偶者の記載と、本人の戸籍は違います
法務省は、日本人が外国人と婚姻した場合、外国人についての日本の戸籍は作られず、日本人配偶者の戸籍にその外国人との婚姻の事実が記載されると説明しています。日本の戸籍に名前があることと、その方の出生から現在までの身分関係が一式記録されていることは同じではありません。法務省「国際結婚、海外での出生等に関する戸籍Q&A」
亡くなった日本人の戸籍に婚姻の記載があれば、まずその記載から確認できる関係を整理します。そのうえで、外国での離婚、改名、再婚など、追加確認が必要な経過を提出先へ伝えます。「戸籍に外国人配偶者の氏名があるから、外国の資料は一切いらない」とは決めないようにしましょう。
帰化や国籍の変更がある場合は、いつ、どの国籍から変わったかも記録します。現在の国籍だけで、必要となる過去の資料まで同じとは限りません。日本の戸籍、外国の証明書、旅券等で氏名や生年月日が異なるときは、自己判断で同じ表記に直さず、つながりを説明する資料を確認します。
「外国の戸籍一式」ではなく、証明したい関係から資料を探す
| 確認したい事実 | 整理する資料・疑問の例 |
|---|---|
| 本人・国籍 | 旅券等の氏名、生年月日、国籍。改名や国籍変更の前後がつながるか。 |
| 出生・親子関係 | 出生や家族関係の証明に、本人と父母がどのように記録されるか。 |
| 婚姻・離婚・養子関係 | 現在の状態だけでなく、相続に関係する経過を確認できるか。 |
| 死亡・住所・署名 | 各事実をどの機関がどの形式で証明し、日本の窓口が何を求めるか。 |
表は全件共通の提出書類一覧ではありません。国や地域によって登録制度や証明書の種類が違うため、必要な事実を先に書き出して、現地の発行機関と日本の提出先の両方に照会するためのメモです。
例えば駐大阪大韓民国総領事館の案内では、家族関係証明書、基本証明書、婚姻関係証明書等で記載される内容が分かれています。家族関係の資料を一通取れば出生・婚姻・離婚・養子関係まで全部分かると考えず、目的に合う種類を確認します。これは韓国の制度例であり、他国の共通ルールではありません。駐大阪大韓民国総領事館「家族関係など書類発給」
必要な資料が発行されない場合も、家族が作った説明書だけで代えられるとは限りません。「その国に制度がない」「記録がない」「請求資格がない」「書類名が分からない」を区別し、発行機関から受けた説明をそのまま日本側へ伝えて、補う方法を確認します。
日本在住の外国籍者と、海外在住の外国籍者で窓口が変わります
日本に住む場合
日本に住民登録がある外国籍の方は、住所や本人確認、印鑑登録について居住地の市区町村へ確認できます。外国籍だから日本の印鑑登録はできない、とは限りません。横浜市も外国人住民の印鑑登録を案内し、漢字氏名や通称等には住民票への記載条件を設けています。横浜市「印鑑登録について」
ただし、住民票や在留カードが用意できることと、亡くなった方との親族関係や相続人全員を確認できることは別です。住所の資料で身分関係の不足を埋められると決めず、銀行等の提出先が求める役割に合わせます。
海外に住む場合
日本の在外公館による在留証明・署名証明は、基本的に日本国籍を持つ方を対象とする制度です。元日本国籍者には署名証明等で例外的な取扱いがありますが、外国籍の方全員が同じ条件で利用できるわけではありません。国籍と証明書の種類を伝えて公館へ確認します。外務省「在外公館における証明」
外国の住所を証明する資料について、法務省は海外居住の外国人が所有権の登記名義人となる場合に、本国・居住国の政府や公証人による書面等を区別して案内しています。これは不動産登記の要件なので、銀行等にもそのまま通用するとは考えず、登記は司法書士等に確認してください。法務省「外国居住の外国人等の住所証明情報」
法定相続情報一覧図で、外国資料を一律に置き換えることはできません
法務局の案内では、被相続人や相続人が日本国籍を有しないなど、戸除籍謄抄本を提出できない場合は、法定相続情報証明制度を利用できません。外国の身分関係資料を日本語に訳せば、そのまま日本の戸籍と置き換えて一覧図の認証を受けられるという制度ではありません。法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続」
この利用条件は、外国籍の方の相続権がないという意味ではありません。使える証明制度の問題と、誰が相続人になるかの問題を分け、戸籍や外国資料をどの組合せで提出するか各窓口へ確認します。
調査内容を整理する相続関係説明図を作る場合も、法務局が認証した一覧図と同じ証明力や受付条件があると扱わないでください。図だけで説明しきれない関係は、根拠となる資料と未確認点を添えて整理します。
提出先へは、今ある資料と不足している事実を一緒に伝える
まず、亡くなった方と関係者ごとに、氏名の原表記・日本語表記、国籍、居住国、家族関係、確認資料を一枚のメモにまとめます。未確認の内容は推測で埋めず、「確認中」として区別しましょう。氏名の順序や旧姓が違う資料も、原本を変更せず並べて示します。
次に、手続きが必要な銀行等へ、資料の種類と発行機関、翻訳・認証・原本の条件を照会します。日本語訳があれば受理される、公的な認証があれば相続人の確認も終わる、と一律には考えません。高額な取得や国際郵送を頼む前に、必要な範囲を絞って確認してください。
当事務所への相談では、戸籍収集・相続人調査で確認する日本の資料と、外国資料について確認が必要な事項を整理します。具体的な支援は相続手続きの支援内容と照らして確認し、外国法の判断、外国での代理、翻訳や認証手配を全件受任できるとはお約束しません。
権利関係の判断や紛争・交渉は弁護士、登記申請は司法書士、税務は税理士の分野です。協議書の作成は、適用法や参加者等の前提と合意を確認した後に検討します。相続手続きの料金案内をご覧のうえ、問い合わせ窓口へ関係する国と提出先をお知らせください。
外国籍の相続人の資料についてよくある質問
日本にある預金なら、必ず日本法の相続になりますか?
財産の所在だけで決められません。日本の通則法では亡くなった方の本国法が出発点となり、反致等も含め個別に確認します。
外国籍の配偶者の名前が戸籍にあれば、外国の証明は不要ですか?
日本人の戸籍にある婚姻の記載と、外国籍の方の身分関係全体の証明は別です。追加資料の要否は、確認したい関係と提出先の条件から判断します。
法定相続情報一覧図が使えなければ、相続は進められませんか?
制度が利用できないことと相続権の有無は別です。戸籍と外国の資料等をどのように提出するか、各窓口と担当専門家へ確認します。