翻訳・認証を依頼する前に、発行国と提出先を確かめます
海外発行の相続書類に翻訳や認証が必要かは、書類の発行国、提出する国・機関、書類の種類と用途によって確認します。外国語だから必ず認証が必要、アポスティーユが付けば翻訳は不要、という一律の判断はできません。費用をかけて依頼する前に、実際の提出先が受け付ける条件を整理しましょう。
とくに、日本の外務省による公印確認・アポスティーユは、日本の公文書を外国で使う場合の案内です。外国の機関が発行した書類を日本へ提出する場面と、向きを取り違えないことが大切です。

最初に提出先へ確認する項目
「外国の証明書がある」という説明だけでは、必要な作業を決めにくくなります。発行した国・地域、発行機関、書類の正式名称、記載言語、提出先、手続きの目的を組にして整理してください。同じ死亡証明書でも、戸籍の届出に使う場合と、金融機関や裁判所へ提出する場合で、確認先が異なります。
- 原本が必要か、発行機関の証明が付いた写し等でもよいか
- 発行からの期間や部数の指定、原本返却の扱いがあるか
- 全文訳か指定箇所の訳か、提出言語や所定の様式があるか
- 翻訳者の資格・署名・連絡先や、翻訳に関する証明を求めるか
- アポスティーユや領事認証等が必要か、どの文書に付けるのか
- 不足や表記違いがある場合の補足資料と問い合わせ方法
回答は、窓口名、確認日、担当部署、案内のURLや文書名と一緒に残します。別の相続で使えた書類や知人の体験を参考にするときも、今回の提出先へそのまま通用すると考えず確認してください。電話で分かりにくい条件は、具体的な書類名を示して整理します。
翻訳・署名の証明・公文書の認証の違い
翻訳は原文の内容を別の言語で伝えるものです。これに対して、署名や公印等についての証明は、その文書の作成・署名等に関する一定の事項を証明する手続きです。「翻訳証明」「認証」と呼ばれていても、何を誰が証明するのかが異なるため、名称だけで同じ書類と扱わないようにします。
アポスティーユについて、ハーグ条約は、公文書の署名の真正、署名者の資格、印章等に関する証明を定めています。それが付いているだけで、記載された親族関係の法的評価や、遺産を受け取る権利、翻訳の正確さまで一括して確定するわけではありません。提出先がどの事実を確認するために書類を求めているかも整理しましょう。出典:HCCH「外国公文書の認証を不要とする条約」1条・3条・5条
例えば「原文書に付ける認証」と「翻訳者の宣誓や署名に関する証明」が別に指定されることも考えられます。どちらが必要なのか不明なまま一つを取得せず、提出先の要求する対象と発行・証明する機関を照合してください。
外国で発行した書類を日本へ出す場合
発行国と提出国が変わると、証明の確認先も変わります。
- 最初の確認先
- 日本の提出先に、原文・訳文・認証の条件を聞く。
- 証明の確認先
- 必要に応じ、発行国の権限ある機関等を確認。
- 最初の確認先
- 外国の提出先に、必要な証明と訳文の条件を聞く。
- 証明の確認先
- 日本の公文書は、外務省の証明案内等を確認。
認証は相続権や翻訳の正確さを一括保証しません。条約の適用、原本・写し・電子版の条件を、書類と提出先ごとに確認します。
書類の向きを決めてから、必要な翻訳・認証を照会します。
外国政府等が発行した死亡・出生・婚姻等の証明書を日本へ提出する場合、まず日本側の提出先へ、必要な原文書、訳文、認証の条件を確認します。外国発行書類をそのまま日本の外務省に送り、日本のアポスティーユを付けてもらうという順序ではありません。
ハーグ条約によるアポスティーユが適用される場合は、文書が由来する国の指定された権限ある機関が証明します。ただし、条約の適用関係、対象となる文書、認証を免除・簡素化する取扱い等も確認が必要です。条約加盟国の名前が一覧にあることだけで、あらゆる文書に必須または利用可能とは決められません。出典:同条約1条・3条・6条・12条
認証の要否と取得方法が分からないときは、提出先の回答を基に、発行国の公式窓口や関係する大使館・領事館等へ確認します。書類によっては通常の公文書と扱いが異なるものもあるため、公証人作成文書や領事機関発行書類などは、その種類まで伝えてください。
また、提出先が求めているのが親子関係の証明であるのに、別の事項だけを証明する書類を認証しても、必要資料が足りないことがあります。認証を増やす前に、原文のどの記載で何を示せるか、不足する事実は何かを確認しましょう。
日本の書類を外国へ出す場合
逆に、日本で発行された公文書を外国へ提出する場合は、日本の外務省の公印確認・アポスティーユの案内が関係します。外務省は、外国の提出先や在日大使館等から証明を求められる場合の手続きとして説明しています。公印確認は通常、その後の在日大使館等による領事認証につなぐもので、アポスティーユは条約に基づく別の取扱いです。出典:外務省「公印確認・アポスティーユとは」
海外の財産の手続きで日本の戸籍を求められた場合などは、提出国、提出先、必要な証明の種類を確認してから手配します。日本発行か外国発行か、どちらの方向に出すかを、書類一覧の最初に書いておくと、依頼先の取り違えを防ぎやすくなります。
日本語の書類に訳文を添える場合も、公文書そのものと訳文のどちらに、どの証明を求められるかを区別します。外務省の証明を取得したことだけを理由に、外国の機関がその書類一式を必ず受け付けるとは判断できません。
翻訳者と翻訳内容の条件を確認する
専門の翻訳者や特定の資格が必要か、家族が訳せるか、訳者の氏名・住所・署名等をどう記載するかは提出先に確認します。例えば在ボストン日本国総領事館の死亡届の案内では、日本語訳について翻訳者の明示を求め、届出人による翻訳も可能としています。これはその届出の案内であり、すべての相続書類を家族訳で提出できるという意味ではありません。出典:在ボストン日本国総領事館「戸籍関係届出」死亡届の案内
翻訳を依頼するときは、表面だけでなく裏面、追記、印章、添付証明の有無も伝えます。氏名、日付、番号、地名、身分関係を表す語の対応が曖昧な場合は、原文との対応を確認します。判読できない箇所や記載の欠落を、訳者が推測して補う形にしないことが大切です。
ウェブサイトを読むための自動翻訳と、機関へ提出する訳文は用途が異なります。機械翻訳で大意をつかめても、それだけで所定の訳文や翻訳者に関する条件を満たすとは限りません。利用する場合は、個人情報を含む証明書を外部サービスへ入力する前に共有範囲を検討し、最終的な訳文の確認者と提出条件を明確にしてください。
原本・写し・電子書類の扱いを確認する
「コピー可」という回答を得た場合でも、通常のコピー、発行機関による証明付きの写し、公証を受けた写しのどれかを確認します。電子的に発行された書類や電子認証についても、画面の印刷だけでよいか、検証用情報や元の電子ファイルをどう提示するかは提出先に確認が必要です。
原文書と認証が一体に綴じられている場合は、取り外してよいと自己判断せず、提出方法を確認します。翻訳用の画像には欠けやぼけがないかを確かめ、送った資料がどの原本に対応するか分かる名前を付けて保存します。個人番号や旅券番号などを隠して相談したいときも、本提出に必要な記載を勝手に消すこととは分けて考えましょう。
原本を複数の機関へ提出する予定なら、返却の可否、返却時期、追加取得の方法を先に確認します。発行元の訂正が必要になったときは、古い書類を基にした翻訳や認証をそのまま使えるかも再確認し、書類の版が混ざらないようにします。
依頼内容と日程を決める
依頼時には「原文書の取得」「翻訳」「翻訳に関する証明」「原文書の認証」「郵送や提出」を分け、誰にどこまで依頼するかを明確にします。一か所へ相談したことだけで、すべてが業務に含まれると考えず、費用の対象、追加作業が発生する条件、必要な原本を確認してください。
発行国と提出先への照会、翻訳、認証、配送は、それぞれ時間がかかることがあります。先に受理条件を確認し、その後の作業順と期限を組み立てましょう。急ぐ事情がある場合は最初に伝えますが、回答待ちの段階で受理日や完了日を確定した予定にしないことが大切です。
翻訳・認証が整っても、相続人の範囲、遺言の効力、代理権、署名できない事情などの法律上の問題が残ることがあります。争いのある内容や法的判断・代理は弁護士、税務は税理士、不動産登記や家庭裁判所への書類作成は司法書士等へ、必要な役割に応じて相談します。
よくある質問
アポスティーユがあれば翻訳は不要ですか?
別の確認事項です。アポスティーユは公文書の署名・資格・印章等に関する証明であり、提出先の読める言語や訳文の条件を満たすかは別に確認します。
一つの銀行で使えた書類は、他の銀行でも使えますか?
同じ扱いとは限りません。書類の種類、発行日、認証・訳文、原本返却の条件をそれぞれ確認し、必要な部数や提出順を決めましょう。
家族が外国語を読めれば、自分で訳して提出できますか?
提出先が家族等による翻訳を認める場合はありますが、資格や所定の証明を求める手続きもあり得ます。実際の提出先に、訳者の条件と必要な記載を確認してから作成してください。
書類と提出先の整理を相談する
関連する業務は相続サポートと遺産分割協議書の作成をご確認ください。翻訳・認証の受任範囲は個別に確認し、特定の国や機関での受理を保証するものではありません。書類の発行国、名称、提出先、分かっている条件を整理して、相続専用のお問い合わせからご相談ください。
相談を担当する行政書士
吉田雄介(行政書士登録番号22130594)。エールZEAL国際行政書士事務所(埼玉県比企郡滑川町)。事務所・担当者の紹介
あわせて読みたい記事
制度確認日:2026年9月15日