相続人に連絡が取れないときは、「現在の住所が分からない」「住所は分かるが返答がない」「従来の住所を離れて所在が分からない」「協議を拒んでいる」を分けて考えます。必要なのが住所の確認なのか、裁判所の手続きなのか、合意に向けた法律相談なのかが変わるためです。
連絡できない相続人を除いて遺産分割協議を成立させたり、返事がないことを承諾と扱ったりはできません。まず相続人の範囲と手元の連絡先を確認し、適法に取得できる資料、連絡の経過、未確認の事項を整理しましょう。
制度確認日:2026年9月11日

連絡できない事情を4つに分ける
電話がつながらないだけでは、転居したのか、番号が変わったのか、体調などの事情があるのか判断できません。反対に、分け方への不満を伝えてきた人は、連絡不能ではなく協議の内容に問題がある状態です。推測で一つにまとめず、分かっている事実から確認先を選びます。
| 現在の状態 | 確認の方向 |
|---|---|
| 現在の住所が不明 | 戸籍の附票等を請求できるか、請求先と資格を確認 |
| 住所は分かるが返答なし | 届いたか、返答できる状態か、連絡の経過を整理 |
| 従来の住所を離れ所在不明 | 不在の事実と財産管理の状況を専門家に相談 |
| 協議への参加や案を拒否 | 合意できない理由と、調停等の法的対応を相談 |
途中で状況が変わることもあります。住所が判明して手紙が届いた後に反対の返答があれば、次は合意形成の問題です。入院などで意思確認に不安があると分かった場合は、所在調査を続けるのではなく、本人の意思や代理権の確認に切り替えます。
住所の確認は請求資格と資料から
まず、取得済みの戸籍で対象者が今回の相続人であることを確認し、把握している氏名、本籍、最後に確認した住所、その情報の日付をまとめます。同姓同名の人を取り違えないよう、古い年賀状の住所だけを確定情報として扱わないことが大切です。
住所を確認する資料として、戸籍の附票や住民票等が検討されます。ただし、相続の用事があれば誰の資料でも自由に請求できるわけではありません。請求者と対象者の関係や、権利行使などの正当な理由を示す資料が必要になることがあります。さいたま市は、相続による第三者請求では相続関係を確認できる戸籍等を求める取扱いを案内しています。出典:さいたま市「戸籍・住民票・印鑑登録などの証明書を取得したい」。
戸籍の附票は本籍地の市区町村が請求先です。どの附票が必要か、除かれた附票も確認すべきか、取得できる期間や請求方法は、その自治体に具体的な事情を伝えて確認します。出典:さいたま市「戸籍の附票の取得場所はどこですか?」。
専門家に依頼する場合も、受任する業務との関係や請求の要件の確認が必要です。職務上の請求を使えば目的を問わず住所を調べられる、とは考えないでください。住所の資料が取得できても、そこに実際に居住しているか、本人に連絡が届くかまで証明されるわけではありません。
連絡の内容と経過を整理する
連絡する際は、自分と亡くなった方との関係、相続の連絡であること、返答してほしい事項、連絡方法を簡潔に示します。初めて連絡する相手には、突然完成済みの協議書と押印の依頼を送るより、事情を確認する段階であることが分かる内容にすると、誤解を減らせます。
財産の全容がまだ分からない場合は、その旨も伝えます。「受け取るものはないので印鑑だけほしい」など、判断に必要な情報を省いた依頼は避けてください。連絡先の確認段階で、相続人全員の戸籍や口座情報を必要以上に送ることも控え、誰に何を伝える必要があるかを整理します。
連絡の記録は、次の内容を同じメモに残すと専門家へ引き継ぎやすくなります。
- 連絡した日、宛先・連絡方法、送った内容の控え
- 郵便の返送、配達の記録、電話の応答など確認できた結果
- 返答があった場合の内容と、まだ回答されていない事項
- 次に確認する相手と、確認を予定していること
郵便が返ってきた場合は、封筒の返送理由も残します。届かなかった事実と、届いたが返信がない状態を分けるためです。配達された記録は、分け方への同意の証拠とは別です。一方的に「期限までに返事がなければ同意したものとする」と書いても、それだけで遺産分割の合意にはなりません。
所在不明なら不在者財産管理制度を確認
従来の住所や居所を去り、容易に戻る見込みがなく、財産を管理する人も置かれていない場合などには、不在者財産管理人の選任を検討することがあります。家庭裁判所が不在者の財産を管理する人を選任する制度で、単に返事をしない人の署名を代わりに得る仕組みではありません。
申立てができるのは利害関係人や検察官で、申立先は不在者の従来の住所地または居所地の家庭裁判所です。裁判所の案内には、戸籍・附票、不在の事実を示す資料、財産に関する資料、利害関係を示す資料などが挙げられています。どこまで確認を尽くす必要があるかは、具体的な事情を整理して相談します。
管理人が選ばれれば、そのままどの分割案にも署名できるわけではありません。遺産分割など通常の財産管理の権限を超える行為には、別途、家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。不在者の利益を守ることが前提であり、残る相続人の希望だけで分け方が決まるものではありません。出典:裁判所「不在者財産管理人選任」、民法第25条・第28条。
手続きの期間や費用も一律ではなく、財産管理のための予納金が必要になる場合があります。不在者財産管理人の選任は、その人を死亡したことにする手続きではありません。生死や相続人の範囲に疑問がある場合も、独断で結論を出さず弁護士等へ確認します。
返答がない場合・協議を拒む場合
住所や所在は分かっているものの返答がない場合、すぐに不在者財産管理制度が使えるとは限りません。連絡経過を示したうえで、協議を始められない理由と、次に取り得る法的手続きを弁護士へ相談します。返事をしないことと、相続を放棄したことも同じではありません。
分割案への反対や協議への参加拒否が明らかな場合は、相手の氏名を協議書から外したり、他の相続人だけで署名した書面を全員の合意として提出したりしないでください。共同相続人の間で協議が整わない場合などには、家庭裁判所の遺産分割の手続きが問題になります。出典:民法第907条。
遺産分割調停は、家庭裁判所で分け方を話し合う手続きです。裁判所の案内では、調停で解決しない場合は原則として審判の手続きに進むとされています。ただし、遺産の範囲や権利そのものに争いがあるなど、事情によって整理すべき問題が異なります。出典:京都家庭裁判所「遺産分割調停」。
相手との交渉、法的判断、代理は弁護士へ、家庭裁判所に提出する書類の作成は司法書士等へ相談してください。行政書士に協議書の文案を頼むことが、合意していない相手との交渉や裁判所の代理を依頼することにはなりません。
止める作業と進められる準備を分ける
合意の成立を前提にした署名・押印の収集は保留しても、手元資料の整理は進められます。相続関係を確認した戸籍、判明している財産、遺言書の有無、連絡履歴をまとめ、「相続人は確認済みだが住所が未確認」など、どこで止まっているかを一文で説明できるようにします。
連絡待ちの間も、相続放棄、税の申告、登記などの期限が自動的に止まるとは考えないでください。自分の事情でいつ何を確認すべきかは、各手続きの担当専門家へ早めに相談します。焦って払戻しや処分、全員の合意を前提とする提出を進めないことが大切です。
当事務所への相談では、戸籍収集・相続人調査について、請求資格と受任できる範囲を確認します。遺産分割協議書の作成は、必要な当事者と権限が確認され、合意した内容があることを前提に検討します。現在の段階を分けてお知らせください。
よくある質問
何回連絡すれば、不在者として扱えますか?
回数だけで決まりません。従来の住所を離れた事情、所在の確認状況、財産管理人の有無などが関係します。電話や郵便の結果を記録して、制度の対象となるか専門家に相談してください。
返事がないので、その人の取り分をゼロにできますか?
返答がないことは、取得しないという合意ではありません。本人や適法な代理人の意思確認なしに、全員が合意した協議書として作成・提出することは避けてください。
住所が分かれば、相続手続きは終わりますか?
住所の確認は連絡の準備です。その後に本人への説明と意思確認が必要で、合意できない場合には別の対応を検討します。住所の資料だけで、協議への同意まで確認できるわけではありません。
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相続人調査の相談では、取得済みの資料と連絡の経過を分けてお伝えください。相続手続きに関するお問い合わせから、書類整理や調査の受任範囲を確認できます。
相談を担当する行政書士
吉田雄介(行政書士登録番号22130594)。エールZEAL国際行政書士事務所(埼玉県比企郡滑川町)。事務所・行政書士の紹介をご覧ください。