本文へ移動

相続・遺言手続きサポートセンター

子どものいない夫婦が遺言を検討するときの確認点

「夫婦に子どもがいない」だけでは、配偶者が全財産を相続するとは限りません

配偶者に住まいと生活費を残したいときは、夫婦それぞれの相続人、自分が持つ財産、先に亡くなる人が変わった場合の希望を分けて整理します。子どもがいなくても、父母・祖父母や兄弟姉妹などが配偶者と一緒に相続人となる場合があります。家族の仲がよいことと、希望する承継が法律上準備できていることは別です。

本記事は、日本の民法と法律上の婚姻関係を前提に、遺言を作る前の確認点を説明します。外国籍や海外財産がある場合は適用法も確認します。制度確認日:2026年9月15日。

思いと必要な情報を書き留める準備のイメージ。

今の夫婦の間に子がいないことと、法律上の子がいないことを分ける

最初に、一人ずつ家族関係を書き出します。前の婚姻で生まれた子、認知した子、養子がいる場合は、現在の配偶者との間に子どもがいなくても、子の相続権を確認する必要があります。子が先に亡くなっている場合には、孫などが代襲して相続人となることもあります。

子やその代襲者が相続人とならないときは、父母・祖父母などの直系尊属を、親等が近い順に確認します。「両親は亡くなった」というだけで兄弟姉妹の順番と決めず、祖父母等の存否も確認してください。第1・第2順位の相続人がいない場合に兄弟姉妹を調べ、兄弟姉妹が先に死亡している場合などは甥・姪の代襲も確認します。国税庁:相続人の範囲と法定相続分

夫側には父が健在で、妻側には兄弟姉妹がいるなど、夫婦で事情が違うこともあります。一方の家族図をそのまま他方に当てはめず、戸籍で分かる身分関係と、存否・連絡先などの確認事項を分けて残しましょう。相続放棄や相続権を失う事情が関係する場合も、単なる人数表では判断できません。

残したいものを「自宅」と「使えるお金」に分けて考える

配偶者の生活を守りたいという希望は、財産名に置き換えると具体的になります。住み続けたい家、当面の生活費、住まいの修繕費、将来の介護費用など、何を優先したいかを整理してください。財産の合計額だけでは、残された人が生活費を用意できるかは分かりません。

自宅については、登記上の所有者と持分を確認します。夫婦共有なら、遺言で扱う本人の持分と、配偶者がもともと持つ持分は別です。土地と建物で名義が違う、親の名義が残っている、住宅ローンがあるといった事情も記録します。他人の持分まで当然に残せるという前提では準備を進めません。

預貯金や証券は、名義と財産の所在を確認し、借入れや保証の資料も一緒に整理します。生命保険の受取人や契約上の給付は、遺言による財産の承継と同じ扱いとは限らないため、契約内容を別に確認してください。税額や債務の負担をここで推測して、手元に残る金額を確定することは避けます。

例えば「家は配偶者へ、残りは親族へ」と希望しても、配偶者側に現金がほとんど残らないことがあります。売らずに住み続けたい財産と、費用の支払いに充てられる財産を並べると、相談時に何を優先すべきか伝えやすくなります。これは検討の例であり、そのまま使う遺言の文例ではありません。

同じ希望でも、遺言は夫婦がそれぞれ作ります

夫婦二人の遺言を一つの証書にまとめる共同遺言はできません。民法975条は、二人以上が同一の証書でする遺言を禁止しています。互いに相手へ残したいという希望であっても、一人ずつ、自分の意思に基づいて方式に従った遺言を作成します。民法960条・963条・975条

夫婦で財産や生活の希望を話し合うことはできます。ただし、一方が決めた内容を他方に署名させるだけでよいわけではありません。本人が内容を理解して意思を示せるかを確認し、自筆証書なら本人の自書等、公正証書なら公証人による本人の意思確認等、それぞれの条件を満たす必要があります。

二つの遺言の内容を似せる場合も、片方を撤回・変更できなくする約束とは分けて考えます。本人は遺言の方式に従って撤回できます。遺言を作った後に気持ちや事情が変わったとき、相手の遺言まで自動的に変わるわけではありません。民法1022条

配偶者へ多く残す希望と、他の相続人の遺留分を確認する

配偶者に全財産を残す希望があっても、相続人となる子や父母などには遺留分がある場合があります。遺留分は、一定の相続人に保障される利益で、侵害があれば金銭の支払いを請求されることがあります。自宅を配偶者へ承継させる内容と、請求があった場合の支払資金は別に検討します。民法1042条・1046条

兄弟姉妹や、その代襲者である甥・姪には遺留分がありません。そのため、配偶者と兄弟姉妹等が相続人となる家族関係では、配偶者へ残す遺言が役立つ場合があります。ただし、遺留分がないことは、遺言の方式や本人の意思、財産の特定を省けるという意味ではありません。日本公証人連合会:遺言を検討する家族関係の例

家族への気持ちや配慮の理由を伝えることは、理解の助けになりますが、「家族は請求しないはず」という見込みだけで資金計画を立てないでください。遺留分の有無・金額や争いへの対応は弁護士に、個別の税負担は税理士に確認します。

配偶者が先に亡くなった場合と、その後の相続まで分ける

遺言を作るときは、自分が先に亡くなる場合だけでなく、配偶者が先に亡くなる場合も考えます。受け取る人が遺言者より先に亡くなれば、遺贈は原則として効力を生じません。相続人に承継させる遺言についても、受取人が先に亡くなった場合にその子などへ当然に同じ内容が引き継がれると決めつけず、文面と事情を確認する必要があります。民法994条

「配偶者が受け取れない場合は、誰に、何を残したいか」を相談時の希望として用意すると、予備的な指定の検討につながります。家族、友人、団体では確認事項が異なり、死亡、受取辞退、団体の解散を一つの言葉で処理できるとは限りません。具体的な条項は事情に合わせて検討します。

同じ事故などで死亡の前後が明らかでないときは、民法32条の2による同時死亡の推定も関係します。単純に「年上が先」と置かず、双方が受け取れない場合の希望を整理しておきましょう。民法32条の2

また、自分から配偶者へ渡った財産は、配偶者の死亡時には、その人の財産として次の相続の対象になります。「最後は自分の実家へ戻る」と自動的に決まるものではありません。二人がともに亡くなった後にも残したい相手がいるなら、双方の希望を確認し、将来の家族関係や財産の変化に応じて見直します。

相談前に、二人分の希望を別々に一枚へまとめる

一人につき、家族関係、主な財産と債務、配偶者のために優先したいこと、配偶者が先に亡くなった場合の希望を書き出します。決まっていない部分は「未定」で構いません。どちらかの希望がまだ固まらない場合も、無理に一致させず、その違いを相談事項にします。

作成済みの遺言があれば、種類、作成日、保管先を確認し、相談先へ提示できる範囲で資料を用意します。家の売却、転居、親族の死亡、離婚・再婚などがあれば見直しの契機になります。保管場所の共有と、口座の暗証番号等を広く共有することは区別してください。

子どものいない夫婦の遺言についてよくある質問

夫婦二人暮らしなら、相続人は配偶者だけですか?

同居人数では決まりません。法律上の子やその代襲者、父母・祖父母、兄弟姉妹等を順位に従って確認します。夫婦それぞれの家族関係で調べる必要があります。

二人とも同じ内容なら、一枚に署名してよいですか?

二人が同一の証書で遺言をすることはできません。互いに相手へ残す場合でも、それぞれが自分の遺言を方式に従って作成します。

配偶者へ全部残す遺言を作れば、もう見直しは不要ですか?

配偶者の先死亡、財産の売却、家族関係の変化などで希望どおりの承継ができなくなる場合があります。作成した内容と現在の事情を対応させ、必要な変更を確認してください。

夫婦それぞれの希望を、遺言作成の相談へつなげる

エールZEAL国際行政書士事務所の遺言書作成サポートでは、相談内容に応じて支援の範囲を確認します。家族関係と残したい希望を整理し、問い合わせ窓口へお伝えください。個別の受任範囲と費用は確認のうえで案内します。

あわせて読みたい記事

相談を担当する行政書士

吉田雄介(行政書士登録番号22130594)。エールZEAL国際行政書士事務所(埼玉県比企郡滑川町)。事務所・担当者紹介

CONSULTATION

ご相談・お問い合わせ

現在の状況を伺い、対応できる支援、今後の進め方、必要な手続き・費用の概要をご案内します。

書類作成、調査、申請・届出などの実際の業務は別途有料です。相談後に正式に依頼するかどうかは、ご自身でお決めいただけます。

上部へスクロール