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相続・遺言手続きサポートセンター

作成済みの遺言を見直すとき:家族・財産の変化と変更・撤回

見直すときは、今ある遺言書と新しい希望を並べる

遺言を作った後に、家族や財産、残したい相手への思いが変わることはあります。遺言は見直せますが、原本を先に捨てたり、新しい日付の紙があれば以前の内容がすべて消えると考えたりせず、今ある遺言の全体を確認するところから始めましょう。

最初に整理するのは、既存の遺言の作成日と方式、原本の保管先、残したい内容、変えたい内容です。この記事では、初めて書く際の形式説明ではなく、作成済みの遺言と新しい希望を矛盾なく整理するための確認事項を説明します。

制度確認日:2026年9月14日

思いと必要な情報を書き留める準備のイメージ。

家族・財産・執行者に変化があったとき

結婚や離婚、家族の誕生や死亡などがあったときは、遺言で想定していた人と現在の家族関係が合っているかを確認します。こうした出来事があれば以前の遺言全体が自動的に無効になる、という一律の整理はできません。誰について、どの条項を、どう見直したいかを分けて考えます。

特に、財産を受け取る予定の人が本人より先に亡くなった場合には、その人の子どもが当然に同じ財産を受け取るとは限りません。その場合に誰へ残したいかをあらかじめ定める、予備的な遺言を検討することもあります。既存の遺言にその場合の定めがあるか、本人の今の希望に合うかを確認してください。日本公証人連合会「予備的な遺言」

財産については、不動産の売却・購入、預金口座の解約、金融機関の変更、新たな財産の取得などが見直しのきっかけになります。遺言に書いた財産が現在もあるか、表記だけの変更なのか、別の財産になったのかを資料で確かめます。

遺言執行者に指定した人が転居した、健康や仕事の事情が変わった、亡くなったといった場合も対象です。受取人だけを見るのではなく、実現するための連絡や役割まで含めて見直しましょう。

原本を動かす前に、日付・方式・保管先を確認する

自宅の自筆証書遺言だけでなく、公正証書遺言、法務局に預けた遺言、以前作った別の遺言がないかを整理します。手元にある紙が原本なのか写しなのか、別の場所に保管された内容を示すものなのかも確認してください。

相談時には、分かっている遺言を一つだけ選ぶのではなく、作成日が古いものも含めて存在を伝えます。内容の効力を自分で先に判定して外してしまうと、残る条項や相互の関係が見えなくなることがあるためです。原本へのメモ書きは避け、比較用の紙や写しを使います。

見直し前に作る整理メモの例
項目書き留める内容
文書の情報作成日、方式、原本か写しか、保管先。分からない点は未確認とする。
残したい内容現在も希望どおりの受取人、財産、割合、執行者の指定。
変えたい内容以前の記載、今の希望、家族や財産が変わった事情。
確認が必要なこと複数文書の関係、財産の現状、受取人や候補者の状況。

このメモは希望を整理するためのもので、そのまま遺言の変更を完成させる書式ではありません。「子どもへの配分は残し、預金の指定だけ変えたい」といった希望も、前後の条項を見ながら伝えます。

全部を撤回するか、一部を変えるかを明確にする

民法は、本人がいつでも、遺言の方式に従って全部または一部を撤回できることを定めています。遺言を撤回する権利を放棄することもできません。家族に以前の希望を話していたことだけで、本人が見直せなくなるわけではありません。民法1022条・1026条

ただし、変更する時にも、遺言の内容を理解して自分の意思を示せることと、用いる方式の要件が必要です。家族が相談メモを書き換えたり、本人に代わって遺言を書いたりするだけでは、本人による有効な変更が済んだとはいえません。民法963条・960条

以前が公正証書遺言であっても、変更は公正証書でなければならない、という方式の固定はありません。別の適法な方式による遺言で撤回や変更をすることもできます。ただし、方式を変えれば、作成の条件や保管の確認も変わります。日本公証人連合会「遺言の取消し(撤回)や変更」

自筆証書遺言の原本に手を加える場合には、訂正の方式が問題になります。制度確認日時点の民法968条3項では、変更箇所の指示、変更した旨の付記と署名、変更箇所への押印が必要です。単に線を引いて書き直せばよいと考えず、新しい遺言を作る方法も含めて確認します。民法968条

なお、2026年6月には押印の任意化等を含む改正法が公布されています。公布と施行は別なので、実際に作成・訂正する際には、施行日と適用される方式を最新の公式案内で確認してください。法務省「成年後見及び遺言の制度の見直し」

後の遺言があっても、以前の内容が全部消えるとは限らない

前の遺言と後の遺言が抵触するときは、その抵触する部分について、後の遺言が前の遺言を撤回したものとみなされます。日付が新しいという理由だけで、以前の遺言のすべてを無視することはできません。民法1023条1項

たとえば、前の遺言で自宅と預金について別々の希望を書き、後の遺言では預金についてだけ異なる希望を書いた場合を考えます。これは説明のための仮の例ですが、自宅に関する前の条項も当然に消えるとは限らない、という確認が必要です。実際に何が抵触し、どの内容が残るかは、文書全体と個別の事情を見て判断します。

本人が全体を書き直すつもりでも、旧文書との関係が曖昧だと、死亡後に読む人が迷うことがあります。全部を置き換えたいのか、一部を残したいのかを相談時に伝え、新しい条項同士の整合も確認しましょう。

また、遺言後の売却などの生前処分その他の法律行為が遺言と抵触する場合にも、その抵触部分について撤回とみなす規定があります。故意の破棄等に関する規定もあるため、見直しの準備として原本を先に破棄することは避けてください。民法1023条2項・1024条

後の遺言をやめれば、その前に撤回された遺言が自動的に復活するとも限りません。民法1025条は原則として復活しないことを定め、例外も設けています。以前と同じ希望へ戻したい場合も、今の意思をどう有効な文書にするかを確認します。民法1025条

法務局から返してもらうことと、遺言の効力を撤回することは別

保管をやめることと、遺言の撤回は別

どちらも「撤回」と呼ばれるため、対象を確かめます。

保管の申請を撤回
対象
法務局に預けることをやめ、原本の返還を受ける。
確認すること
返還を受けただけでは、遺言の効力は失われない。
遺言を撤回・変更
対象
全部を撤回するか、一部を変えるかを整理する。
確認すること
本人の意思と方式、前後の遺言の関係を確認。

新しい日付の遺言があっても、以前の内容が全部消えるとは限りません。原本を先に破棄せず、前後の文書を一緒に確認します。

「何をやめるのか」を、保管と遺言の内容に分けます。

出典法務省「遺言者の手続」民法1022条・1023条

法務局の自筆証書遺言書保管制度では、保管の申請を撤回して、預けた遺言書の返還を受けることができます。しかし、保管の申請を撤回したこと自体は、遺言書の効力を失わせません。「返してもらったので、その遺言はもう無効」とは扱えない点が重要です。法務省「遺言者の手続」

保管の申請の撤回は本人が行い、原本を保管している遺言書保管所での手続となります。保管証などで場所を確認し、現在の住所に近い窓口で返してもらえると決めつけず、予約先と必要資料を確認してください。

内容を変える方法には、返還を受けて見直した遺言書を改めて保管申請する方法や、以前の遺言書を預けたまま新しい遺言書を追加して保管申請する方法などがあります。複数の遺言書を保管できることと、それぞれの内容が矛盾なく整理されていることは別の問題です。法務省「よくあるご質問」Q14・Q16・Q17

一方、住所や氏名などの変更届出は、保管制度上の情報を更新する手続です。誰にどの財産を残すかという遺言本文の変更とは分けてください。転居の届出をしたので遺言の希望まで変更できた、とはなりません。東京法務局「保管申請の撤回や変更届出について」

見直した後は、文書の関係と保管情報を整理する

新しい遺言を作った後は、作成日、方式、保管先、以前の遺言との関係を自分用の記録に残します。写しや相談メモが混在している場合は、原本に書き込むのではなく、別の一覧で区別するとよいでしょう。家族や執行者候補に伝えていた保管情報も、必要な範囲で更新します。

既存文書の有効性や解釈に争いがある場合、相続人等との交渉が必要な場合には、弁護士へ確認してください。変更が税務へ与える個別の影響は税理士へ相談します。

当事務所の遺言書作成サポートへは、既存の遺言の有無と、残したい希望・変更したい希望を分けてお伝えください。現在の文書と本人の意思を確認したうえで、作成支援の範囲を整理します。

遺言書作成の料金案内をご覧のうえ、相続専用の相談窓口へご相談いただけます。

遺言の見直しでよくある質問

新しい遺言を作れば、古い遺言は全部なくなりますか?

当然に全部が消えるとは限りません。後の遺言と抵触する部分や、明示した撤回の内容などを確認します。前後の文書を一緒に見て整理してください。

法務局から返してもらった遺言書は無効ですか?

保管の申請の撤回だけでは、遺言書の効力は失われません。保管をやめることと、遺言の内容を撤回・変更することを分けて検討します。

公正証書遺言は一度作ると変更できませんか?

変更や撤回は可能です。本人の意思と方式の要件を確認し、以前の文書との関係が分かる形に整理します。手元の写しだけを書き換えて変更済みと考えないでください。

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