相続手続きで最初にすることは、遺言書の有無、相続人、財産と借金、期限を確認することです。すべての書類が揃うのを待つ必要はありません。まず分かっている事実を記録し、期限の確認と戸籍・財産の調査を並行して進めましょう。
この記事では、亡くなった方の財産を引き継ぐ手続きの順番を整理します。死亡届、年金、健康保険などの届出は別の期限や窓口があるため、市区町村等の案内も併せて確認してください。ここでは主に日本法が適用される相続を想定しています。
制度確認日:2026年9月11日

最初に確認する4つのこと
最初のメモは、亡くなった日と死亡を知った日、遺言書の保管状況、家族構成、分かっている財産と債務の4項目で十分です。請求書や裁判所からの書類が届いている場合は、封筒も残して受け取った日を控えます。期限の起算点が分からないものは、推測で日付を決めず確認事項として分けておきましょう。
遺言書がある場合は、種類を確かめる
自宅等で保管されていた遺言書は、原則として家庭裁判所の検認が必要です。封印がある遺言書は勝手に開封せず、家庭裁判所での開封手続きを確認します。公正証書遺言と、法務局の保管制度による遺言書情報証明書は検認の対象外です。検認は遺言が有効かどうかを決める手続きではありません。裁判所「遺言書の検認」
遺言が見つかったら、対象の財産や遺言執行者の記載も確認します。遺言があるという理由だけで、全財産の分け方が決まったとは限りません。書かれていない財産や内容への争いがあるときは、先に法的な確認が必要です。
借金が不明な段階で財産を処分しない
相続には預貯金や土地だけでなく、借入れや保証に関する義務が関係することがあります。相続放棄を検討しているときは、預金の払戻し、車の売却、家財の処分などを進める前に弁護士へ確認してください。財産の処分が相続の承認と扱われる場合があり、何が処分に当たるかは事情によって異なります。民法第921条(e-Gov法令検索)
調査から名義変更までの順番
1.相続人と財産を並行して調べる
戸籍で法律上の相続人を確かめながら、通帳、郵便物、納税通知書などを整理します。家族の記憶だけでは、前の婚姻で生まれた子や、亡くなった子に代わる相続人を確認しきれないことがあります。財産についても、手元に見当たらないことと存在しないことは別です。
調査は「確認できたもの」「調査中のもの」「資料がなく不明なもの」に分けると進み具合が分かります。不動産の所在地、金融機関と支店、借入先など、次の照会につながる情報を残しましょう。税務上の評価額を自分で確定させてから相談する必要はありません。
2.承認・放棄等の判断と、分け方の確認を進める
財産と債務の状況を踏まえて、相続するかどうかを検討します。相続放棄は家庭裁判所への申述が必要で、家族間で「何も受け取らない」と約束することとは異なります。判断が必要な案件は、戸籍が全部揃う前でも専門家へ期限を伝えてください。
遺産分割が必要な場合は、対象となる相続人全員で取得する財産を確認します。一部の相続人を除いて話を進めたり、署名だけ先に集めたりせず、財産を特定できる資料と合意内容を照合してから書面にまとめます。合意内容の書面化については、遺産分割協議書作成の案内をご覧ください。
3.提出先ごとに手続きし、完了資料を保管する
分け方が確定したら、銀行、証券会社、運輸支局、法務局など、財産に応じた窓口で手続きを進めます。遺言の有無や手続き方法によって必要書類は変わるため、提出先の案内を取り寄せてから署名・押印書類を作ると、やり直しを減らせます。
提出後は、追加書類の依頼、原本の返却、払戻しや名義変更の完了を確認します。「送った日」と「完了した日」は別々に記録し、受け取った書類を財産ごとに保管しましょう。調査や協議が続いていても、税や登記の期限への対応は並行して検討します。
相続放棄・税申告・登記の期限
相続手続き全体に共通する一つの締切はありません。期間の長さだけでなく、いつから数えるか、誰にどの義務があるかを確認します。以下は主な期限であり、個別の請求権や各種届出を網羅するものではありません。
相続放棄・限定承認:原則3か月
相続放棄や限定承認の熟慮期間は、原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月です。調査しても判断材料が得られない場合には、家庭裁判所に期間伸長を申し立てる制度があります。自動的に延びる制度ではないため、期限前に対応を確認してください。裁判所「相続の放棄の申述」
既に3か月を過ぎたように見えても、いつ相続人となったことを知ったかなどの事情が問題になることがあります。記事だけで可否を判断せず、届いた書類やこれまでの経緯を持って弁護士等へ相談しましょう。
所得税の準確定申告:必要な場合は原則4か月
亡くなった方の所得について申告が必要な場合は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に、準確定申告と納税を行うのが原則です。相続税とは別の手続きです。事業、不動産賃貸、過去の申告状況などを税理士に伝え、申告の要否を確認します。国税庁「納税者が死亡したときの確定申告」
相続税の申告・納付:必要な場合は原則10か月
相続税の申告と納付は、原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内です。すべての相続で申告が必要になるわけではありませんが、特例を適用して税額がなくなる場合でも申告が必要なことがあります。遺産分割が未了だから当然に期限が延びるとは考えず、申告要否を早い段階で税理士に確認してください。国税庁「相続税の申告と納税」・「相続財産が分割されていないときの申告」
不動産の相続登記:原則3年。以前の相続にも注意
相続で不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する義務があります。2024年4月1日より前の相続も対象です。その時点で取得を知っていた未登記の不動産は、原則2027年3月31日までの対応が必要です。取得を知ったのが2024年4月以降なら、原則その日から3年以内となります。
遺産分割の成立後には、取得した相続人に分割日から3年以内の追加の登記義務が生じる場合があります。話合いが長引く場合には、相続人申告登記で基本的な義務を履行する方法もありますが、最終的な所有権の登記とは異なります。過去の登記状況と併せ、司法書士または法務局に確認しましょう。法務省「相続登記の申請義務化について」
家族や財産によって変わる進め方
相続人が一人でも、戸籍等による確認や財産の名義変更は必要になります。反対に、複数人でも遺言の内容や財産によっては遺産分割協議をせずに進められる手続きがあります。「人数が少ないから簡単」と決めつけず、提出先の条件を確かめましょう。
相続人に未成年者がいる、意思確認が難しい、連絡がつかないなどの場合は、通常の署名・押印の進め方が使えないことがあります。必要な法的手続きの検討を先に行います。海外在住者や外国籍の方が関係するときも、適用される法律、身分関係の証明、署名の証明方法などを個別に確認します。
自宅以外の土地や複数の金融機関がある場合は、調査先と手続き先を一覧にすると漏れに気づきやすくなります。保険金や給付金は受取人や契約により扱いが異なるため、すべてを遺産分割の対象と決めず、契約先と税務の確認を分けて進めます。
最初に準備する資料と管理方法
相談の入口では、手元にある資料と、家族構成を説明できるメモを用意します。戸籍や印鑑証明書を一律に何通も取得する前に、必要な範囲、提出先の発行時期の条件、原本返却の可否を確認しましょう。
- 亡くなった方の氏名・最後の住所・本籍が分かる資料
- 家族構成、遺言書の有無、相続開始を知った日を記したメモ
- 通帳、金融機関からの郵便物、固定資産税の通知書、車検証等
- 借入れ、保証、未払いの請求に関する書類
- 既に取得した戸籍、提出済みの書類、専門家への依頼内容
原本はまとめて保管し、確認用の控えに「誰の資料か」「どの手続きに使うか」を記します。不明な欄を空けておけば、後で何を調べるべきかが明確になります。戸籍の取得範囲は相続で必要な戸籍の集め方で詳しく説明しています。
専門家に相談するタイミング
資料が揃っていなくても、期限が近い、借金の有無が分からない、家族間で意見が対立している場合は早めに相談します。弁護士は争いのある案件や法的判断・交渉、司法書士は不動産登記や裁判所提出書類の作成、税理士は税務判断と申告の相談先になります。
行政書士への相談では、戸籍収集、相続人の確認、合意済みの内容に基づく協議書の作成など、依頼したい書類や手続きを具体化します。当事務所は、登記申請代理、税務申告、紛争の交渉・裁判手続きの代理を行うものではありません。業務ごとの依頼先と費用を確認したうえで進めます。
よくある質問
何も分からない状態でも、最初にできることはありますか?
あります。亡くなった日、家族構成、手元の資料、届いている請求や通知を書き出してください。分からない項目を特定するだけでも、次に確認する窓口を絞れます。
戸籍が全部揃ってから、税や登記の相談をすればよいですか?
期限があるため、必要になりそうな段階で相談して構いません。戸籍調査の進み具合と財産の概要を伝え、先にできる確認を進めます。
すべての相続手続きは、同じ窓口で完了しますか?
いいえ。銀行、登記、税務、車両などで提出先や条件が異なります。共通の資料を使える場合もありますが、提出書類と完了の確認は窓口ごとに必要です。
必要な手続きを整理したい方へ
滑川町のエールZEAL国際行政書士事務所では、戸籍や手元の資料を確認し、行政書士が対応する書類作成・相続手続きの内容を整理します。相続手続きサポートと戸籍収集・相続人調査をご確認ください。
費用は相続関係と依頼範囲を確認して見積もります。料金の案内をご覧のうえ、相続専用のお問い合わせから、現在お困りのことをお知らせください。