【家族信託 vs 遺言】どちらが自分に合ってる?失敗しない選び方と注意点

【家族信託 vs 遺言】どちらが自分に合ってる?失敗しない選び方と注意点
高齢化が進む日本社会において、相続や財産管理の問題は誰にとっても無視できない課題となっています。中でも「家族信託」と「遺言書」は、将来の不安を和らげるために多くの人が検討する重要な手段です。しかし、仕組みが複雑だったり、誤解されている部分も多いため、どちらが自分に適しているのか分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、相続の専門家である行政書士の立場から、家族信託と遺言の違い、適した場面、注意すべき点などを具体的に解説します。
家族信託とは?
家族信託とは、「自分が元気なうちに、自分の財産を信頼できる家族に託す制度」です。法律上は「民事信託」とも呼ばれ、例えば認知症などで本人が判断能力を失った後も、スムーズに財産を管理・処分できるようにする仕組みです。
例えば、収益物件を所有している高齢の親が、将来の不安からその運営を子に託したいと考えた場合、家族信託を使えば親が元気なうちに契約を交わし、その後の運営をスムーズに移行することが可能です。
家族信託の主な活用例
- 親が認知症になったときの財産凍結リスクを防ぎたい
- 自宅やアパートなどの不動産を将来売却して費用に充てたい
- 障害を持つ子どもの生活支援として、柔軟な財産管理を残したい
メリット
- 契約後すぐに効力が発生し、認知症になっても運用が続けられる
- 成年後見制度よりも柔軟で、自分の意向を細かく反映できる
- 「受益者連続型信託」などを使えば、二次相続にも備えられる
デメリット
- 信託契約書の作成や登記が必要で、制度設計が専門的
- 信託用の銀行口座開設に時間と手間がかかる
- 税務面では贈与とみなされるリスクがあり、要注意
遺言とは?
遺言とは、自分の死後に財産をどう分けるかを指定できる法的文書です。「遺産を誰にどう渡したいか」「特定の人に多めに残したい」「寄付をしたい」など、自分の意志を明確に伝えるために使われます。
特に家族間に複雑な事情がある場合や、再婚・事実婚の相手がいる場合などには、法定相続だけでは対応しきれない意向を遺言で明記することで、トラブルを防ぐことができます。
遺言の形式と違い
- 自筆証書遺言:自分で書く。費用はかからないが、形式不備で無効になるリスクも。
- 公正証書遺言:公証役場で作成。費用は発生するが、安全性が高い。
- 秘密証書遺言:内容を秘密にしながらも証明できるが、利用は稀。
メリット
- 自分の死後の希望を法的に残せる
- 特定の相続人を除外したいときにも有効(遺留分の考慮は必要)
- 書き直しも何度でもできる(最新の内容が有効)
デメリット
- 認知症になってからでは作成できない
- 生前の財産管理には対応していない
- 形式不備や遺言内容の不明確さで無効になるケースもある
家族信託と遺言のちがい
項目 | 家族信託 | 遺言書 |
---|---|---|
効力の発生 | 契約時から発生 | 死亡後に発生 |
認知症対策 | 有効(生前に契約) | 無効(発症後は作成不可) |
主な用途 | 財産の管理・運用 | 財産の分配 |
法的トラブル回避 | 契約内容によっては防止可能 | 遺言内容が明確なら防止可能 |
初期コスト | 設計・登記などで10〜30万円程度 | 自筆なら数千円、公正証書で数万円 |
よくある質問(Q&A)
Q. 家族信託は親が認知症になった後でも契約できますか?
A. できません。意思能力があるうちに契約を交わす必要があります。
Q. 遺言で「○○には一切相続させない」と書けば本当にゼロにできますか?
A. 法定相続人には「遺留分」があるため、完全にゼロにはできません。ただし、減額は可能です。
Q. 家族信託と遺言を併用する意味はありますか?
A. あります。家族信託で生前の管理、遺言で死後の分配を明確にすることでトータルで安心できます。
まとめ
家族信託と遺言は、目的やタイミングが異なるため、どちらか一方ではなく併用を検討するのが理想的です。
「認知症対策」「不動産の活用」「相続争いの防止」など、あなたやご家族の状況に応じて最適な方法を選びましょう。
専門家によるアドバイスを受けることで、制度の誤解や手続きのミスを防ぎ、安心できる相続対策が実現します。