【実務対応】入管審査トラブル完全ガイド|不許可・理由書・遅延への対処法を解説

【実務で使える】入管審査トラブル完全対応ガイド|行政書士・人事担当者必読
出入国在留管理局(以下、入管)への申請業務は、単なる書類作成だけでは済みません。
特に企業の採用担当者や行政書士にとって、「審査が止まっている」「理由書を求められた」「突然の不許可」など、実務で発生するトラブルへの対応力が、許可取得のカギとなります。
本記事では、実際の申請現場で頻出する問題とその具体的な対策、さらに審査官の思考回路まで踏み込んで解説します。
■ 1. 申請後の“沈黙”|審査が遅れているときの対処法
◆ 想定される原因
- 審査件数の集中(3月・9月・年末年始)
- 他の案件との突合が必要なケース(同企業内で多数の申請がある等)
- 審査官が一時的に情報精査を中断している
◆ 対処法と実務のコツ
- 申請後2か月を経過しても結果が出ない場合は、1度だけ電話で照会する(再三の問合せは逆効果)
- 照会時に必要な情報:整理番号・氏名(ローマ字)・生年月日・在留資格の種類
- 可能であれば、企業側からの照会より行政書士等の専門家からの連絡の方が丁寧に対応されやすい
注意:「急がせれば許可が出る」という誤解は禁物。審査が遅れている=マイナス評価ではありません。
■ 2. 理由書や追加資料の提出要求が来たとき
◆ これは“チャンス”と捉えるべき
入管からの「理由書・補足資料提出依頼」は、審査を続ける意思の表れです。不許可にする前に、確認すべき点を申請者に説明させるフェーズに入っています。
◆ 要求されやすいケース
- 就労ビザ:職務内容の専門性が曖昧、学歴との関連性が弱い
- 配偶者ビザ:同居実態が乏しい、交際履歴の説明が不足
- 留学→就労:出席率が低い、卒業証明の未提出、アルバイト超過の疑い
◆ 実務対応の鉄則
- 期日を厳守(通常7〜10日)し、できるだけ早く出す
- 構成:事実→問題点→説明→改善策→結論の順に書く
- 自署の「反省文」や「誓約書」を添付し、誠実な姿勢を示す
文書の中で、「ウソをつかない」「責任を取る姿勢を示す」「改善計画を述べる」の3点が肝です。
■ 3. 不許可が出たときの判断と行動フロー
◆ よくある不許可理由(実務での頻出ケース)
- 【就労ビザ】→ 職務内容が単純作業に見られた
- 【配偶者ビザ】→ 偽装結婚の疑い・書類と実態の矛盾
- 【留学→技人国】→ 学歴との関連性の欠如、賃金が低すぎる
◆ 審査官の視点
審査官は「明確な証拠で整合性が取れているか」を重視します。 書類の“辻褄”ではなく、“一貫性のあるストーリー”が重要です。
◆ 不許可後の選択肢
- 異議申立(再審査請求):明確な誤解・事実誤認がある場合に限る
- 再申請:内容を全面的に見直した上で、新資料を添えて提出
注意:「同じ内容」での再申請はまず通りません。戦略的見直しが不可欠です。
■ 4. 技人国(技術・人文・国際)ビザの実務注意点
◆ 学歴との関連性
申請者の専攻と業務がリンクしていない場合、大学のシラバスや履修科目リストで関連性を主張します。
◆ 業務内容の説明方法
- 単なる「事務」や「営業」ではなく、「日本人と同等の専門職」として説明
- 業務フロー図や業務マニュアル、OJT計画書の添付が有効
◆ 雇用契約のポイント
- 給与水準が低すぎると“搾取”とみなされる
- 労働条件通知書・賃金台帳の提出を想定し、整備しておく
外国人雇用は「実態説明」と「人権保護」の両面が問われます。
■ 5. 在留資格変更・更新でよくある誤解と注意点
◆ 更新申請=自動延長ではない
たとえ現在の在留資格と同じ内容で更新する場合でも、審査は1から行われると理解しておくべきです。特に在職状況・納税状況は厳しくチェックされます。
◆ 在留期限内の申請が原則
- 期限の2週間前を目安に申請
- 「みなし在留期間(90日)」の誤用はトラブルの元
実務者は、期限管理表・申請スケジュール管理シートなどを活用し、提出遅延を防ぎましょう。
■ 6. 入管からの“心証”を意識した申請とは
入管業務は「形式審査」ではありません。審査官は常に「この人物・会社を信頼できるか?」を判断しています。以下の点に留意すると、心証を良く保つことができます:
- 書類の整合性:日付、氏名、住所、肩書きなどがすべて一致しているか
- 正直な申請:不利な情報を隠さず説明し、反省と改善策を提示
- 提出資料の品質:読みやすいレイアウト、不要な書類の削除
- 対応の礼節:電話・窓口での対応にも礼儀が求められる
信頼される申請=「再度確認しなくてもよい申請」です。
■ まとめ|トラブル対応は「リカバリー力」と「信頼の構築」がカギ
入管業務は、専門知識だけでなく「現場の空気」を読む力が問われます。書類だけで完結する申請はむしろ少なく、やり取りの中での判断・説明力が結果を左右します。
成功のために必要な要素:
- 正確な書類・期限の厳守
- トラブル時の冷静な対応力
- 審査官の視点を理解した書類構成
許可率を高めるためには、単なる“書類屋”ではなく、伴走型の専門家として信頼されるスタンスが重要です。