家族が「何があるか」と「どこへ連絡するか」を分かるようにします
ネット銀行やデジタル資産の準備は、パスワードを家族へ渡すことから始める必要はありません。まず、利用先の名称、資産や契約の種類、資料の保管先、死亡後の公式窓口を記録します。存在が伝わることと、家族が本人のアカウントを操作できることは別です。
通帳や郵便物のない契約は、本人以外が気づきにくいものです。この記事では、生前に本人が情報を整理し、家族が正規の手続きへ進めるようにする準備を説明します。暗号資産の取引操作や端末のロック解除、個別の税務判断を扱うものではありません。制度・運用確認日:2026年9月15日。

お金、継続契約、写真や文書を同じ扱いにしない
「デジタル資産」という呼び方には、預金や証券、暗号資産だけでなく、電子マネー、ポイント、定期購入、写真、メールなどが混在します。家族が必要とする対応は、財産を受け取る、契約を止める、データを保存する、削除を申請するなど、それぞれ違います。
| 区分 | 先に残す情報 |
|---|---|
| 預金・証券・暗号資産 | 金融機関・事業者名、商品の種類、明細の保管先、相続の窓口 |
| 定期購入・有料サービス | 契約先、請求の周期、支払元、死亡時の解約の確認先 |
| 写真・メール・文書 | 保管サービス、残したいデータ、共有先、公式の事前設定の有無 |
| ポイント・購入コンテンツ等 | サービス名、利用条件の確認先、承継や払戻しが可能か未確認であること |
表示されている残高や購入履歴があっても、すべてが同じ方法で相続できるとは限りません。例えばAppleは、故人アカウント管理連絡先が利用できるデータと、購入したコンテンツ等の対象外データを区別しています。資産の承継とデータへのアクセスは、別々に確認しましょう。Apple:故人アカウント管理連絡先
共有用の一覧には、存在情報・確認先・更新日を記録する
最初の一覧は、家族が連絡先を見つけるためのものと考えます。事業者名はアプリの略称だけでなく正式名称を残し、「銀行」「証券会社」「決済サービス」などの種類を添えます。同じグループ名でも契約先が異なることがあるため、まとめて一件としない方が照会先を整理しやすくなります。
記録する項目は、本人名義かどうか、取引や契約の種類、公式サイトの案内ページ、確認用の明細等を保管する場所、最後に見直した日です。広く共有する一覧には、必要のない口座番号全桁や本人確認書類の画像を載せず、詳しい資料を確認できる人と保管場所を別に決めます。
説明用の例なら「ネット銀行A/本人名義の普通預金/相続案内は銀行公式サイト/明細は本人管理の書類入れ/2026年9月確認」と記録できます。金額を書く場合は、何日現在の目安かも付記します。この例は整理方法を示すもので、金融機関への提出書式でも死亡時の残高証明でもありません。
使っていない契約も、解約済みと確認できるまでは「利用していない・契約状況は未確認」と書きます。「家族が知らない」と「存在しない」を区別できれば、後日の調査を途中で打ち切ってしまうことを防げます。
パスワードや秘密鍵を共有一覧へ集めない
ログイン用パスワード、暗証番号、ワンタイムコード、暗号資産の秘密鍵や復元フレーズは、資産の操作につながる秘密情報です。家族全員へ配る一覧、通常のメール、相談フォーム、共有範囲の広いノートへ一括して記載しないでください。存在情報だけを知っていれば、相続窓口へ確認を始められる場合があります。
本人が生前に利用するアカウントの安全性も保ちます。IPAは、パスワードを使い回さないことや多要素認証の設定を案内しています。家族が後で入りやすいように認証を弱めたり、同じパスワードへ統一したりする準備は避けましょう。IPA:不正ログイン対策
家族へ知らせる内容は「本人としてログインして取引を続ける指示」ではなく、「この事業者へ死亡と関係を伝えて、必要な手続きを確認する案内」にします。本人が操作方法を教えていたとしても、死亡後の取引権限や承継の手続きがすべて整ったことにはなりません。
ネット銀行は、紙の通帳がなくても相続窓口へつなげる
ネット銀行については、銀行名と支店名、口座を識別できる資料の場所を残します。家族がログインできるかどうかだけに頼らず、銀行の相続案内を一覧から確認できるようにします。サービス名の似た証券口座やカード契約がある場合は、それぞれの契約先も区別してください。
楽天銀行の例では、相続の連絡後に契約内容を確認し、必要書類等を郵送で案内する流れです。連絡を受けた時点で故人名義の口座の利用を停止すると説明されています。ネット銀行でも、本人のログイン情報を使って家族が解約するという手順ではありません。楽天銀行:相続のお手続き
その口座から支払っている通信費や有料サービスも、支払先と契約名をまとめておきます。銀行の相続手続きと、各契約の支払方法の変更・解約は別の確認です。口座の利用停止を避けるために、家族へ事前の出金操作を指示する形にしないでください。
事業者の事前設定は、対象データと作動条件まで確認する
公式の引継ぎ機能を使う場合も、設定名だけで「全データを渡せる」と理解しないことが大切です。Appleの故人アカウント管理連絡先は、アクセスキーと死亡を確認する書類による申請が前提です。日本では死亡の記載がある戸籍謄本が案内されています。また、iCloudキーチェーンのパスワード等は対象外です。Appleの必要書類と対象外データ
この公式アクセスキーは、指定先が正式な申請に使う情報です。通常のログインパスワードや暗号資産の秘密鍵とは区別し、Appleの案内に沿って指定した相手へ安全に伝えます。設定しただけで相手が控えを持っているとは限らないため、受け取ったことと保管方法を確認しましょう。
Googleのアカウント無効化管理ツールは、一定期間の利用がない場合に、設定に従って通知や一部データの共有をする仕組みです。死亡を直ちに検知して、その日のうちに財産情報を家族へ渡す仕組みとは異なります。共有するデータと相手を選び、必要な連絡先をこれだけに頼らないようにします。Google:アカウント無効化管理ツール
暗号資産は、取引所の預かりと自己管理を分けて考える
暗号資産を保有している場合は、まず取引所等に預けているものか、自分でウォレットを管理しているものかを整理します。共有用の一覧には事業者名や管理形態、正式な相談先を記録し、秘密鍵や復元フレーズ自体を貼り付けないでください。銀行の相続案内をそのまま当てはめることはできません。
Coincheckの現行案内では、相続人からの連絡、必要書類の提出、移管等という手続きが示されています。保有商品等で取扱いが変わり、行政書士の代理人欄は残高証明書の作成依頼に限定されています。特定事業者の受付条件を、他の取引所や当事務所がすべて代行できる根拠にはできません。Coincheck:相続手続きの案内
自己管理のものは、取引所に申し出れば必ず復元してもらえるとは限りません。本人が安全な保管と承継方法を事前に検討し、必要に応じて法律・税務・技術の各専門家へ相談します。当事務所への初回相談には秘密情報を送らず、資産の種類と管理形態のみをお知らせください。
家族への共有と、遺言による承継の指定を分けて見直す
一覧を渡すときは、情報の存在を知らせる相手と、財産を受け取ってほしい相手を混同しないよう説明します。「この人が窓口へ連絡する」と書くことと、「この人に財産を残す」ことは別です。財産の残し方を遺言で定めたい場合は、対象を特定する情報と希望を整理して作成方法を確認します。
口座の開設・解約、機種変更、メールアドレス変更、家族関係の変化があれば一覧を見直します。古い版が使われ続けないよう更新日を付け、共有した相手に変更を伝えます。初めて整えるときは、すべてを完璧に埋めるより、重要な利用先数件を家族が探せる状態にするところから進められます。
デジタル資産の準備についてよくある質問
家族にパスワードを教えなければ、ネット銀行の相続はできませんか?
家族による本人アカウントへのログインを前提にしない相続手続きがあります。銀行名と口座の手がかりを残し、死亡後は銀行の相続窓口で必要資料と手順を確認してください。
公式の引継ぎ機能を設定すれば、遺言は不要ですか?
データへアクセスするための設定と、財産を誰に承継させるかは別の問題です。機能の対象・条件を確認し、財産の残し方については遺言の必要性を別に検討します。
相談のときに秘密鍵やログイン画面を送った方がよいですか?
初回の問い合わせには送らないでください。事業者名、資産・契約の種類、困っている内容で相談を始められます。必要な資料と受け渡し方法は、対応範囲を確認した後に決めます。
存在情報と希望を整理して、必要な支援を確認する
財産を残す希望の文書化は遺言書作成サポートへ、相続開始後の銀行資料の準備は預貯金の相続手続きへつながります。暗号資産やデジタルサービスの対応可否、本人が行う作業、費用は個別に確認します。情報整理と書類作成について問い合わせる際は、秘密の認証情報を記載しないでください。
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相談を担当する行政書士
吉田雄介(行政書士登録番号22130594)。エールZEAL国際行政書士事務所(埼玉県比企郡滑川町)。事務所・担当者の案内