制度確認日:2026年9月15日
自宅で故人の遺言書らしいものを見つけたら、まず発見時の状態を保ち、遺言の種類と保管先を確認します。封印のある遺言書は自分で開封せず、家庭裁判所へ確認してください。遺言書を手にしただけで、直ちに預金の払戻しや財産の分配を進められるとは限りません。
ここでは、遺品整理中に見つかった文書をどう扱い、裁判所・法務局・金融機関に何を確認するかを整理します。遺言の文面の解釈や有効性に疑問がある場合は、実行に移す前に弁護士へ相談します。

原本を加工せず、いつ・どこで見つけたかを記録する
封筒、本紙、別紙の目録、同じ場所にあった保管証などを、見つけた時の組合せが分かるように保ちます。原本へメモを書き込んだり、読めない文字をなぞったり、破れた箇所を独自に補修したりせず、気付いたことは別の紙へ記録してください。湿気や紛失を避けられる場所で保管します。
記録する内容は、発見日、発見場所、発見者、封筒の状態、既に開いていたかどうか、現在の保管者です。文書の表題が「遺言書」でなくても、財産の残し方が書かれている場合があります。見た目だけで不要なメモと決めて処分しないようにします。
封印のある遺言書の開封は、家庭裁判所で相続人等の立会いの下で行う扱いです。家族が全員集まったことを理由に自宅で開けることは避け、閉じられた文書の扱いに迷う場合も裁判所へ確認します。裁判所:遺言書の検認
家族への連絡では「遺言らしい文書を発見し、原本を保管している」「手続先に扱いを確認する」という事実を先に共有します。内容を読める状態でも、特定の人に財産が確定したと説明したり、他の相続人の協力が不要と決めたりしないことが大切です。
自宅の原本、法務局の保管証、公正証書の写しを区別する
次の表は、手元の文書から最初の確認先を探すための整理です。文書の表紙だけで遺言の方式や効力を判定するものではありません。別の遺言が見つかった場合には、すべての文書の存在を相談先へ伝えます。
| 見つかったもの | 先に確かめること |
|---|---|
| 自宅等で保管された自筆の遺言書 | 原本の状態と、家庭裁判所の検認に向けた手続 |
| 法務局の保管証・通知 | 証明書の種類、請求できる人、法務局に提出する資料 |
| 公正証書遺言の正本・謄本等 | 文書の確認、必要な交付物、公証役場と提出先の案内 |
| コピーだけ・方式が分からない文書 | 原本や交付元の手がかり、現在の文書の扱い |
法務局の保管証は、遺言の内容そのものを証明する書類ではありません。死亡後に保管の有無を確認する「遺言書保管事実証明書」と、画像情報を含めて内容を示す「遺言書情報証明書」も目的が異なります。保管を示す紙だけを銀行へ送って手続が完了するとは考えず、必要な証明書を確認します。法務省:遺言書に関する2種類の証明書
公正証書遺言と、法務局保管の自筆証書遺言について交付される遺言書情報証明書は、検認が不要です。ただし、検認が不要なことと、提出先の相続手続が不要なことは別です。公正証書かどうか分からない場合は、公証役場にも文書を示して確認してください。日本公証人連合会:遺言
検認は遺言の状態を確かめる手続で、有効性の保証ではない
検認は、遺言の存在と内容を相続人に知らせ、形状や訂正の状態などを明らかにする手続です。検認を受けたから、書かれた内容のすべてが有効と裁判所に認められたわけではありません。文面の意味や、本人の意思によるものかについての疑問が解決するとも限りません。
検認が必要な遺言では、保管者または発見した相続人が、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく手続を進めます。申立先は遺言者の最後の住所地の家庭裁判所です。「自分が住む市町村の裁判所」とは限らないので、故人の最後の住所とともに確認します。裁判所:申立人・申立先と検認の流れ
検認期日には、申立人以外の相続人が全員出席しなくても手続が行われます。家族全員が集まれる日を決めてから問い合わせる必要はありません。出席や持参物については裁判所の指示を確認し、検認後に必要となる検認済証明書の申請も確認します。
裁判所へ相談する前に、家族関係と不足資料を整理する
最初の問い合わせでは、故人の氏名・死亡日・最後の住所、文書の保管状況、申立てを考えている人と故人の関係を伝えられるようにします。戸籍が途中までしか集まっていなくても、「現在の戸籍だけある」「以前の本籍が分からない」と具体的に不足を説明できます。
裁判所の標準的な案内には、故人の出生から死亡までの戸籍や相続人の戸籍等があります。必要な範囲は家族関係で変わるため、銀行用に一度集めた資料がそのまますべて足りると考えず、申立先の案内と照合します。取得できない資料の追加提出等についても、自己判断せず窓口へ確認してください。
資料の控えには「原本を誰が持つか」「どこへ提出したか」「返却予定」を記録しておくと、裁判所と銀行へ同じ時期に原本を出して困ることを減らせます。郵送の前に必要部数や原本の扱いを確認し、封筒に入れた資料名の控えを残します。文書の画像を共有する場合も、相続財産や個人情報を含むため、相手と送付方法を確かめます。
銀行には、遺言の種類と執行者の記載を伝える
銀行への最初の照会では、故人の口座があることに加え、遺言の有無と種類、検認の状況、遺言執行者の記載が分かるかを伝えます。内容を十分確認できていなければ、その点も説明してください。遺言執行者とは、遺言の内容を実現するための事務を担う人ですが、文書に名前があるだけで自分がすべての手続を進めてよいとは判断しません。
三菱UFJ銀行は、遺言書の有無や遺言執行者の有無によって必要書類を分けて案内しています。この区分は一金融機関の例です。実際に取引のある銀行へ、提出する遺言書・証明書の種類、戸籍や本人確認資料、銀行所定書式を問い合わせます。三菱UFJ銀行:相続手続で用意する書類
原本とコピーのどちらを送るか、返却を希望する手続、証明書の発行時期の条件、窓口で内容確認を受ける必要があるかを一覧にすると、再取得や再送を減らせます。複数の銀行がある場合は、最初の銀行の説明をほかにも当てはめず、銀行名と回答日を付けて管理します。
検認を待つ間も、借金や別の期限は確認する
遺言書の確認と並行して、借入れの通知や未払いの請求など、見つかった資料も保管します。借金があり相続放棄を検討する場合は、遺言に書かれた財産を受け取る前に、弁護士等へ相談してください。裁判所は、相続放棄の申述期間を、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内と案内しています。検認の完了日を起算点として扱わないようにします。裁判所:相続の放棄の申述・家事事件Q&A
不動産の登記は司法書士等、個別の税務は税理士へ、必要な手続や期限を確認します。複数の遺言がある、記載された人が既に亡くなっている、文面の解釈について意見が分かれるといった事情は、一般的な必要書類の一覧だけでは整理できないため、弁護士への相談事項として分けておきます。
2026年には遺言制度等を見直す改正法が公布されていますが、内容ごとに施行時期が異なります。新制度に関する報道だけで、今ある遺言の検認や保管手続を不要と判断せず、手続時点の公式案内を確認します。法務省:遺言制度等の見直しと施行時期
遺言書を見つけたときのよくある質問
誤って開けてしまったら、捨てずに保管して相談すればよいですか?
原本と封筒をその状態で保管し、いつ誰が開けたかを記録して、家庭裁判所へ扱いを確認してください。開けた事実を隠すために封をし直したり、検認はもう不要だと決めたりしないようにします。有効性について疑問があれば弁護士へ相談します。
コピーしか見つからなければ、銀行へそのまま提出できますか?
コピーだけで足りるとは限りません。原本の保管先や文書の種類を調べ、見つかった資料がコピーであることを窓口へ伝えます。原本が見つからないときの対応や法的な扱いは、手続先や弁護士に確認します。
検認が終われば、相続手続もすべて終わりますか?
終わりません。金融機関や不動産など、それぞれの財産について必要な手続があります。検認済証明書を付した遺言書等をどう提出するか、誰が手続を行うかを各窓口へ確認します。
戸籍と手続先を整理して、必要な相談につなげる
当事務所では、戸籍収集・相続人調査や預貯金等の相続手続きについて、事情と資料を伺い、対応できる支援の範囲を確認します。検認の申立書等の裁判所提出書類は司法書士や弁護士へ、紛争や遺言の解釈に関する法的判断は弁護士へ相談してください。
手元の文書の種類、戸籍の収集状況、困っている手続先を添えて、相続手続きの相談窓口へお問い合わせいただけます。