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相続・遺言手続きサポートセンター

エンディングノートと遺言書の違い:書き分けて家族に伝えること

連絡や生活の希望はノートへ、財産を残す意思は遺言の方式を確認します

エンディングノートは、連絡先、財産の手がかり、暮らしや医療・葬儀の希望を、家族等へ伝えるための記録として役立ちます。一方、誰にどの財産を残すかを遺言として実現したいときは、法律で定められた方式に従う必要があります。ノートを一冊埋めれば、相続や生前の手続きがすべて整うわけではありません。

ただし、「エンディングノート」という表紙だけを理由に、記載の法律上の意味を一律に否定することもできません。大切なのは、何を目的に書き、どの内容・方式で残すかです。本記事は日本の制度を前提に、書き分けと共有の準備を説明します。制度確認日:2026年9月15日。

思いと必要な情報を書き留める準備のイメージ。

「探すための情報」「希望」「法的に実現したい内容」を分ける

最初からすべての欄を埋めようとせず、家族が必要とする場面を考えます。入院時に誰へ連絡するか、契約書がどこにあるか、死亡後に誰へ知らせたいかでは、読む人も必要な時期も違います。生前に必要な情報を、死後まで開けない封筒だけに入れてしまうと、必要な場面で使えません。

記録する目的に応じた書き分けの例
目的残す情報と次の確認
所在や連絡先を伝える取引先・書類の場所・連絡してほしい人。情報を更新する。
生活上の希望を伝える大切にしたいこと、医療・ケアや葬儀等の希望。関係者と話し合う。
財産の承継を遺言で定める誰に何を残したいか。遺言の方式と具体的な記載を確認する。

たとえば「銀行名と通帳の保管先」は財産を探す手がかりです。「この預金を友人に残したい」は承継の希望であり、実現する方法を別に検討します。同じページに続けて書く場合でも、事実の記録、検討中の希望、正式に作った遺言の情報が混ざらないよう、目的を見出しで分けると読み違いを減らせます。

遺言の効力は、ノートという名前だけでは判断できません

民法960条は、遺言について法律の方式に従うことを求めています。本人の記載が方式や内容の要件を満たしていれば、文書の表題が「遺言書」ではないという理由だけで判断することはできません。反対に、表紙に「遺言書」と書いても、必要な方式が欠ければそれだけで有効にはなりません。個別の効力は、現物と作成時の事情を基に確認します。民法960条・963条・968条

現在の自筆証書遺言では、原則として本文、日付、氏名を本人が手書きし、押印することが必要です。財産目録には自書を要しない例外がありますが、その場合も各ページの署名押印などの条件を確認します。市販ノートの空欄に一部を書き込んだことや、パソコンで希望を印刷したことだけで、この条件を満たすとは限りません。法務省:遺言書の様式等についての注意事項

一方、公正証書はデジタル化が進んでおり、電子原本を用いる仕組みや、条件に応じてウェブ会議を利用する手続きがあります。「電子データだから遺言には絶対に使えない」と一律に説明するのも正確ではありません。公証人の関与する所定の手続きと、本人が保存したメモ・録音・動画とは区別します。日本公証人連合会:公正証書のデジタル化

2026年6月24日には、押印の任意化や保管証書遺言の創設等を含む改正法が公布されました。法務省は、それぞれ公布から1年以内、3年以内の政令で定める日による施行を案内しています。本記事では、成立した改正を直ちに利用可能な制度として扱っていません。具体的な施行日と作成時点の要件は、実際に遺言を作る前にも最新の公式案内で確認してください。法務省:成年後見及び遺言の制度の見直し

財産の記録は「探せること」と「正式な確認」を区別する

ノートには、銀行・証券会社・保険会社の名称、契約の種類、不動産に関する資料の場所などを書きます。口座を解約した、保険を変更した、家を売却したときは更新日を残してください。「あると思う」情報と、資料で確認した事実を区別するだけでも、家族が調べる順番を決めやすくなります。

借入れ、保証、定期的な支払いも、契約先や書類の所在を記録します。家族が存在を知らない契約ほど、名称と問い合わせ先が手がかりになります。ただし、ノートに書かれた残高は、死亡時の残高や税務評価の証明ではありません。正式な手続きでは、各機関の資料や基準日を改めて確認します。

保険については受取人や契約関係も確認事項です。ノートの「希望する受取人」を書き換えただけで、契約上の指定が変わるとは考えないでください。変更が必要なら保険会社へ確認します。不動産の名義や金融機関の届出事項も、ノートへの記入とは別の手続きです。

相続が始まった後に作る遺産目録は、名義、数量・金額、確認資料、基準日、債務等を調査して整理するものです。生前のノートはその入口になりますが、すべての財産を調査済みであることを保証するものではありません。調べ方の詳しい説明は、関連記事の遺産目録で扱います。

医療や暮らしの希望は、書くだけでなく関係者と話し合う

医療・ケアの希望は、本人が大切にしていること、相談してほしい人、不安に感じていることなどから言葉にできます。具体的な治療についての判断は、病状や選択肢の説明を受けながら医療・ケアチームと話し合います。ノートを一度書けば、どの状況でも同じ処置を自動的に実行できるという扱いにはしません。

厚生労働省の「人生会議」は、本人が望む医療やケアについて、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組です。気持ちや状態が変わることを前提に、記録と対話を重ねることが大切です。厚生労働省:「人生会議」とは

葬儀やお墓、ペットの世話、知らせたい友人についても、希望と実際に引き受けられる人・費用を分けます。名前を書かれた人が役割を了承しているとは限らないため、話し合った範囲と未相談の事項を記録してください。生前の財産管理や死後の事務を法的に頼みたい場合は、必要な契約や権限を別に検討します。

秘密の認証情報を配布せず、必要な人が探せるようにする

家族に知らせるためのノートでも、口座の暗証番号、ログイン用パスワード、ワンタイムコード、暗号資産の秘密鍵・復元フレーズなどをまとめて配布することは避けます。契約の存在を知らせる情報と、資産を操作できる秘密の情報は分けて管理してください。ノートを読める人すべてに取引の操作権限を渡す必要はありません。

共有用には、利用しているサービス名、重要書類を管理する場所、相続時に確認する公式窓口などを残します。秘密情報の管理方法は、サービスの公式な相続・引継ぎ手続きも確認して検討します。本人のIDで家族が取引を続ければよい、という案内にはしません。

医療や交友関係など、本人や第三者の私的な情報も含まれます。緊急連絡用の一枚、財産調査の手がかり、本人だけが管理する詳しい記録など、相手と目的に応じて共有範囲を決める方法があります。共有後に情報が変わったとき、誰に知らせるかも一緒に決めておくと管理しやすくなります。

ノートの更新と、遺言の変更を同じ操作にしない

ノートは連絡先や生活状況に合わせて更新できますが、正式に作成した遺言の内容を変えたいときは、遺言の方式や撤回等のルールを確認します。新しい希望をノートへ上書きしただけで、以前の遺言が意図したとおりに変わるとは限りません。反対に、新しい記載が別の遺言の要件を満たすかなど、文書同士の関係が問題になる場合もあります。民法1022条・1023条

正式な遺言がある場合は、種類、作成日、保管先、相談した窓口など、見つけるための情報をノートへ残す方法があります。遺言の全文を何度も書き写して別版を増やすより、正式な文書を確認できるようにしておくことが役立ちます。原本と単なる写しを、家族が区別できるようにしてください。

引越し、家族の死亡、契約の解約、希望の変化があれば、関係する欄を見直します。ノート自体に作成・更新日と共有先を残し、古い共有用メモが現在の情報として使われ続けないよう連絡します。遺言らしい記載のある古い文書を見つけた場合は、単なる不要なメモと決めて処分せず、内容と必要な取扱いを確認してください。

エンディングノートと遺言についてよくある質問

ノートに「配偶者に全部残す」と書けば十分ですか?

その記載だけで十分とは判断できません。文書の方式、本人の意思、家族関係や財産の内容を確認し、遺言として残すなら必要な条件を整えます。

パソコンで作ったノートは使えませんか?

連絡先や希望の整理には使えます。ただし、それがそのまま自筆証書遺言の本文になるわけではありません。財産目録の例外、公正証書の電子化、今後の改正制度を区別して確認します。

家族全員に同じ内容を渡した方がよいですか?

必要な場面と共有相手を考えて決めます。認証情報や第三者の私的な情報を一括配布せず、連絡用情報や資料の所在など、目的に必要な範囲を共有してください。

財産を残す希望がまとまったら、遺言の作成方法を確認する

ノートで整理した希望のうち、財産の承継を遺言として形にしたい部分は、遺言書作成サポートの相談事項になります。希望と手元の資料を基に、支援できる範囲・費用を確認します。問い合わせ窓口へは秘密の認証情報を記載せず、相談の概要をお伝えください。

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吉田雄介(行政書士登録番号22130594)。エールZEAL国際行政書士事務所(埼玉県比企郡滑川町)。事務所・担当者紹介

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