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この記事の目次
外国人社員への説明や相談で通訳を手配するときは、「その言語を話せる人がいる」ことだけで判断しないようにします。給与や控除、労働時間、在留手続、生活上の悩みには、専門用語と機微な情報が含まれます。通訳者が何を伝える役割で、どこまで判断し、どの情報を扱うかを事前にそろえることで、会社と本人の認識の違いを減らせます。
以下は、企業が通訳を依頼・調整するときの実務上の確認点です。全ての面談に同じ資格や形式が必要という意味ではありません。特定技能1号の支援として行う場合は、本人が十分に理解できる言語による支援体制など、制度上の要件も別途確認します。
通訳を頼む目的と、本人が理解できる言語を確認する
まず、雇用条件の説明、入社研修、生活手続、定期面談、苦情相談など、今回の目的を決めます。同じ人が相手でも、日常会話の補助と、重要な条件の確認では、必要な準備や時間が違います。「外国人対応を一時間」という依頼では、通訳者も適切な準備ができません。
本人が使いたい言語を直接確認し、国籍や出身地域だけで決めないでください。話す言語と読み書きしやすい言語が異なることもあります。方言や専門用語についても、本人と通訳者が無理なく意思疎通できるかを確認します。
特定技能の運用要領では、十分に理解できる言語は母国語に限られないとされています。会社に都合のよい言語を選ぶという意味ではなく、本人が内容を十分に理解できることが前提です。対応言語の一覧だけで決めず、今回の本人と内容に合う体制かを確認しましょう。
本人が日本語で話せる場合でも、質問があるときだけ補助を入れる方法が考えられます。ただし、重要な部分で理解が曖昧になったら、予定を優先して進めるのではなく、説明を止めて方法を調整します。
専門用語を扱えるか、事前に確かめる
労務の面談なら、基本給、割増賃金、控除、年次有給休暇、契約更新等を理解しているかが重要です。在留手続の説明なら、在留資格、在留期間、申請、許可、届出の違いを伝える必要があります。一般会話が流暢でも、専門的な内容を正確に通訳できるとは限りません。
会社側は、通訳者へ単語だけを渡すのではなく、自社の書類でその言葉をどう使っているかを説明します。厚生労働省の多言語の雇用関係用語集等を参考に、同じ概念に同じ訳語を使えるようにします。社内独自の略語や制度名には補足を付けてください。
通訳者が意味を確認したいと言った場合は、その場で説明する担当者を用意します。通訳者に法的な判断や給与計算の正誤まで任せないことが重要です。会社の制度を決定する人、専門家として判断する人、言葉を伝える人の役割を分けます。

同僚や上司による通訳には、話しにくさもある
社内の語学に詳しい人へ協力を依頼できる場面はあります。ただし、本人の評価やシフトを決める上司、相談の対象となっている同僚が通訳すると、本人が話を控える可能性があります。能力だけでなく、今回の相談との利害関係も確認してください。
給与への疑問、ハラスメント、退職の相談などでは、会社側の同席者を最小限にする、本人へ通訳者の関係を説明する、必要に応じて別の通訳者を手配するといった配慮が考えられます。本人が通訳者の変更を希望したときに、誰へ申し出られるかも示します。
通訳者へ、会社に有利なように言い換えることや、本人の発言を省略することを求めてはいけません。一方で、通訳者個人の助言が混ざる場合も、通訳された発言と区別できる必要があります。「今の説明は誰の発言か」が分かる進行を心掛けます。
本人の家族や友人が同席を希望する場合も、本人の希望、守秘、内容の正確性、相談への影響を確認します。特に機微な相談では、身近な人だから必ず話しやすいと考えず、本人が選べる方法を用意しましょう。
守秘と資料の取扱いは、依頼前に決める
通訳者に共有する資料は、今回の業務に必要な範囲へ絞ります。雇用条件説明に必要な契約案と、過去の健康相談記録は同じ資料群として送らないでください。本人名を伏せた準備用資料で足りる段階と、本人を特定した確認が必要な段階を分けます。
| 確認項目 | 具体的に決めること |
|---|---|
| 利用目的 | 今回の通訳準備と実施の範囲で何を扱うか |
| 共有先 | 担当通訳者以外に資料を見る人がいるか |
| 保管 | 端末・保管場所・保存期間・終了後の削除方法 |
| 録音・録画 | 必要性、本人への説明、閲覧できる人、保管期間 |
| 事故対応 | 誤送信、端末紛失、無断共有があった際の連絡先 |
守秘義務を契約に記載して終わりにせず、当日の通信環境や資料の送信方法にも反映します。個人用のメッセージアプリや、第三者が閲覧できる共有リンクを安易に使わないようにします。取扱いを外部へ委託する場合は、個人情報保護法上の確認も必要です。
当日の進行は、説明者が短く区切って行う
冒頭で、参加者の役割、目的、予定時間、記録の方法、質問の仕方を説明します。会社側は通訳者だけに話しかけず、本人へ向けて一つずつ伝えます。長い説明をまとめて通訳してもらうと、数字や条件が抜けやすくなるため、意味のまとまりで区切ります。
日付、金額、時間、固有名詞は、書面や画面で示しながら確認します。「来週」「普通はこのくらい」といった表現は、基準が伝わりにくくなります。確定した条件、見込額、検討中の事項を言葉でも区別してください。
本人の発言が短く要約されたと感じた場合は、詰問せず、どの内容が述べられたのか確認します。通訳者が聞き取れなかったときや意味が曖昧なときに、推測で補わず聞き直せる雰囲気を作ります。
予定時間が不足した場合は、重要事項を省略して署名だけ求めることを避けます。別の時間を設ける、未確認項目を持ち越すなどの対応を記録し、誰がいつ回答するかを決めて終了します。

オンライン通訳は、音声と相談環境を先に試す
事前にマイク、音量、通信、資料共有の方法を確認します。本人側が騒音のある休憩室や相部屋では、内容を聞き取れても自由に話せないことがあります。周囲に聞こえない場所、イヤホン、必要な端末を用意し、誰が同じ部屋にいるかも確認します。
画面に映っていない人から回答を促されていないかなど、相談の独立性にも気を配ります。特定技能の定期面談をオンラインで行う場合は、通常の通訳会議と同じ感覚で決めず、本人等の同意を含む現行の運用要領の条件を確認します。オンライン面談の結果、業務内容・待遇・保護に関する問題や、第三者による面談への介入が疑われる場合は、改めて対面による面談を行う必要があります。
通信が途切れた後は、どこまで伝わったかを確認してから再開します。本人が聞き逃した箇所を、周囲の人が推測で説明して済ませないようにしましょう。代替手段として電話を使う場合も、その内容と手続に適した方法かを確認します。
通訳後は、理解と残った課題を確認する
重要な事項は、本人に自分の言葉で説明してもらい、認識の違いがないかを確かめます。通訳者の感想だけで「理解済み」と記録しないでください。分からない言葉が残った場合は、説明資料や訳語を見直し、必要な再説明につなげます。
記録には、使用言語、通訳者、実施方法、説明資料の版、質問、回答、後日確認する事項を残します。発言の原文、通訳、会社の判断が混ざらないように整理します。録音がある場合も、文字起こしを無制限に共有する運用にはしません。
担当する通訳者が変わる場合の引継ぎも準備する
継続相談で通訳者が交代する場合、前回の説明と今回の説明で用語の意味が変わらないよう、使用した用語と未解決の質問を整理します。共有する記録は今回の通訳に必要な範囲に絞り、本人にも担当が変わることを伝えます。前の担当者が知っていたという理由で、次の担当者にも説明なく全情報を渡さないようにします。
会社独自の職名や手当名は、文字どおりに訳すだけでは意味が伝わらない場合があります。会社側が内容を説明し、通訳者と表現を確認して用語表を残すと、別の日の説明にも使えます。ただし、用語表にある表現でも本人が理解できなければ、その場で具体例を添えて説明し直します。
予定の通訳者が対応できなくなったときは、代替者の適性と守秘の確認を省略せず、説明日程を調整できるかも検討します。重要な契約説明や相談について、通訳の準備不足を本人の理解不足として扱わないことが大切です。
費用と手配条件を見積りで確認する
対応時間だけでなく、事前準備、移動、延長、キャンセル、資料の翻訳、専門分野への対応が料金に含まれるかを確認します。「通訳込み」という表示でも、どの場面・回数・方法が対象なのかを具体的に聞くことが大切です。急な相談への対応可能時間や、担当者不在時の代替も確認します。
特定技能1号の義務的支援を実施するために必要な通訳費は、本人負担としない取扱いを確認します。費用を節約するために必要な通訳を省き、本人が十分に理解できない状態で支援を実施したことにしないでください。
登録支援サービスの相談では、言語名だけでなく、候補者が理解できる言語、必要な支援場面、訪問やオンラインの希望を伝えます。担当体制と料金・追加費用の範囲を確認し、本人が正確に理解し、必要なことを話せる通訳体制を整えましょう。
