定款の目的とは?記載ポイントと失敗しないための注意点を行政書士が解説

定款の「目的」の書き方ガイド|間違えると登記できない?正しい作り方と実務ポイント
会社設立に欠かせない「定款」ですが、その中でも特に重要なのが「目的」欄です。ここで記載する内容次第で、登記ができなかったり、後から許認可が取れなかったり、融資や取引で不利になることがあります。この記事では、行政書士の視点から「目的」記載のポイント、注意すべき実務上の落とし穴、そして業種別の事例を含めて詳しく解説していきます。
■ 「目的」とは何か?なぜ重要か?
「目的」とは、会社が行う事業内容のことであり、定款に必ず記載する必要があります。定款は登記の添付書類となり、ここに記載された目的が商業登記簿にも反映されます。そのため、あらかじめ事業の計画や展開を想定した内容にしておく必要があります。
目的が適切でないと、以下のような支障が発生することがあります:
- 登記の審査で補正を求められる
- 許認可業務の審査で「目的不備」として却下
- 融資申請や補助金申請でマイナス評価
- 将来の事業追加の際に定款変更が必要
■ 「目的」の記載で気をつける5つのポイント
1. 「明確性」が必要
「〇〇に関する一切の業務」などの抽象的な記載は避け、事業の内容を明確にします。例:「飲食店業」ではなく「レストラン、カフェの経営」など。
2. 「適法性」があるか
公序良俗に反する事業内容や、法律に反する行為は記載できません。また、業法に基づく用語の使い方も注意が必要です(例:「風俗営業」などは定義が厳しい)。
3. 「営利性」があるか
非営利活動(ボランティア等)を中心とする場合、株式会社の目的には不適合な場合があります。一般社団法人等の方が適している可能性もあります。
4. 「許認可業務」への対応
建設業や宅建業、古物商、産業廃棄物処理業など、事業目的に所定の文言が含まれていないと許可申請できないケースがあります。事前に確認しておくことが重要です。
5. 「将来の展開」を見据えておく
今すぐ行う事業だけでなく、将来的に展開する可能性のある業務も記載しておきましょう。後から追加するには、株主総会の特別決議が必要となります。
■ よくあるNGパターンと補正事例
- NG例:「サービス業の経営」→抽象的すぎて補正指示
- NG例:「投資業」→営利性・許認可性の観点から詳細化が必要
- 補正例:「Webサイトの制作およびその運営、広告業」などに修正
また、法務局によっては地域ごとの審査基準に違いがあるため、事前に登記官へ相談することも有効です。
■ よく使われる目的文言の事例
- 飲食店の経営
- Webサイトの企画、制作及び運営
- 人材派遣業(※許可前提)
- 不動産の売買、賃貸、仲介及び管理
- ソフトウェアの開発及び販売
- 経営コンサルティング業
- 古物の売買(※古物商許可必要)
- 前各号に付帯する一切の業務
最後の「前各号に付帯する一切の業務」はほぼ必須です。主たる業務に付随する業務の柔軟性を確保するために重要です。
■ 行政書士ができるサポート
- 事業内容ヒアリングと文言整備
- 法務局や許認可官庁の審査基準確認
- 将来の展開に備えた目的設計
- 補助金・融資で有利な目的文言の提案
定款目的の設計は、単なる文書作成ではなく、会社の将来戦略そのものです。専門家に相談することで、後悔のないスタートを切ることができます。
■ まとめ
定款の「目的」は会社の根幹をなす重要事項です。あいまいな表現や形式的な記載では、後々の事業活動に支障をきたします。明確・適法・将来を見据えた目的設計が、安定した企業運営の第一歩です。設立前には必ず、事業計画に沿った目的を専門家と一緒に練り上げることをおすすめします。