【外国人のための遺言書】多国籍家族で円満に遺産を残す方法|行政書士が解説

【外国人のための遺言書】多国籍家族で円満に遺産を残す方法
日本に住む外国人が、国際的な家族関係の中で自身の財産をどのように遺すかは、非常に重要な課題です。特に国境をまたいだ相続には、日本法だけでなく本国の法律も絡むことが多く、専門的な知識が求められます。この記事では、多国籍家族を持つ外国人が日本で遺言書を作成する際に注意すべきポイントを、実務目線で詳しく解説します。
■ なぜ外国人に遺言書が必要なのか?
外国人が日本に財産を持つ場合、万一のときに「どこの法律が適用されるのか」「誰が相続人なのか」など、さまざまな問題が発生します。遺言書を作成しておくことで、以下のようなリスクを避けることができます:
- 遺産を巡る親族間の争い
- 日本と母国の法律の不一致による複雑な手続き
- 財産の凍結・税務上の不利益
■ 外国人にとっての「準拠法」とは?
日本に住んでいても、外国人には「本国法(国籍国の民法など)」が適用されるのが原則です。たとえばアメリカ国籍の方が日本に家を持っていても、その人の相続にはアメリカの法律が関係してくるのです。
ただし、遺言書で「日本法に従って処理してほしい」と明記すれば、日本法が適用される場合もあります。これは遺言による準拠法の選択と呼ばれ、遺言作成時に特に重要です。
■ 自筆証書遺言か、公正証書遺言か?
外国人が日本で遺言書を作成する場合、自筆証書と公正証書の2種類があります。
◆ 自筆証書遺言
- 本人が全文・日付・署名を手書きで記載
- 法務局で保管制度を利用すれば安全性が高まる
- 翻訳の添付が望ましい(遺族の理解を助ける)
◆ 公正証書遺言
- 公証人役場で作成、公証人が内容を確認
- 法的トラブルが起きにくい
- 証人2名の立会いが必要(日本語対応の証人)
■ 相続税・贈与税にも注意
外国籍であっても、日本に6ヶ月以上住んでいれば、原則として日本の相続税・贈与税が課される可能性があります。さらに、母国でも課税される場合があり、「二重課税」の問題が生じます。
そのため、二国間の租税条約や控除制度についても行政書士や税理士と連携して検討する必要があります。
■ 子どもが外国籍の場合の対応
相続人である子どもが外国籍で海外在住の場合、日本の遺産(特に不動産)の相続登記などで問題になることがあります。たとえば:
- 住民票がないため、住所証明書の代替資料が必要
- 本人確認書類を日本語訳し、認証が求められる
- 代理人を立てて手続きを行うケースが多い
■ 多国籍家族の実例紹介
ケース1:フランス人男性と日本人配偶者
日本に自宅と預金を保有。遺言書を日本語・フランス語併記で作成し、両国の法的要件を満たす形に調整。公正証書を選択し、フランス側の弁護士とも連携。
ケース2:フィリピン人母親と子どもたち
日本で永住し、相続人はフィリピンに在住。日本法で遺言書を作成しつつ、翻訳文と代理人を指定。相続手続きをスムーズにする仕組みを設計。
■ 専門家に依頼するメリット
- 準拠法の選定と記載方法のアドバイス
- 多言語対応の文案作成
- 海外の相続人との調整方法のアドバイス
- 相続税対策や登記の実務支援
特に多国籍家族の場合、各国法を理解した専門家による支援は不可欠です。
■ まとめ
国際結婚・多国籍家族の増加に伴い、外国人にとっての相続・遺言の問題は今後さらに複雑化することが予想されます。だからこそ、「今」から準備をしておくことが大切です。遺言書は、家族のための最後の思いやり。日本と世界をつなぐ「架け橋」となる遺言を、正しく作成しましょう。
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