
【外国人のための遺言書】多国籍家族で円満に遺産を残す方法
日本に住む外国人が、国際的な家族関係の中で自身の財産をどのように遺すかは、非常に重要な課題です。特に国境をまたいだ相続には、日本法だけでなく本国の法律も絡むことが多く、専門的な知識が求められます。この記事では、多国籍家族を持つ外国人が日本で遺言書を作成する際に注意すべきポイントを、実務目線で詳しく解説します。
■ なぜ外国人に遺言書が必要なのか?
外国籍の方が日本に財産を持つ場合は、「どこの法律が適用されるか」「誰にどの財産を遺したいか」を生前に整理することが大切です。遺言書の作成にあたって、次の点を確認しておきましょう。
- 遺したい相手・財産と、家族の権利への影響
- 日本と関係国で必要となる方式や手続き
- 遺言書の保管場所、財産の一覧、税務の確認先
■ 外国人にとっての「準拠法」とは?
日本の法の適用に関する通則法では、相続は亡くなった方の本国法、遺言の成立・効力は遺言を作った当時の本国法によるのが原則です。本国の国際私法に従うと日本法によるべき場合には、反致により日本法が適用されることがあります。
遺言に「日本法で処理してほしい」と書くだけで、相続全体の法律を自由に選べるわけではありません。また、遺言書の作成方法(方式)は別に判断され、日本で作る遺言が日本の方式に適合すれば、方式の面で有効となる場合があります。方式が有効であることと、希望した財産の分け方がすべて認められることは別です。
根拠:法の適用に関する通則法 第36・37・41条、遺言の方式の準拠法に関する法律 第2条。
■ 自筆証書遺言か、公正証書遺言か?
ここでは、日本の方式で遺言書を作る場合によく検討される、自筆証書遺言と公正証書遺言を紹介します。国籍や財産の所在地によって追加の確認が必要です。
◆ 自筆証書遺言
- 原則として全文・日付・氏名を本人が自書し、押印します。添付する財産目録は自書でなくてもよいですが、その場合は各ページ(両面記載なら両面)への署名・押印が必要です。
- 法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用できますが、保管によって遺言の内容の有効性まで保証されるものではありません。様式・添付書類を事前に確認します。
- 外国語で作成した遺言書を法務局に保管申請する場合は、日本語の翻訳文を添付します。保管申請の必要書類は、法務省「遺言者の手続」をご確認ください。
◆ 公正証書遺言
- 公証人役場で作成、公証人が内容を確認
- 法的トラブルが起きにくい
- 証人2名以上の立会いが必要です。証人になれる方には制限があるため、公証役場へ確認してください。
■ 相続税・贈与税にも注意
日本の相続税・贈与税は、「日本に6か月住んでいれば課税」という一律の基準ではありません。財産を遺す・贈る方と取得する方の住所、国籍、在留資格、過去の居住状況などにより、課税対象となる財産の範囲が異なります。国内財産に限られる場合と、国外財産を含む場合があります。
外国でも課税されるときの取扱いや控除、申告の要否は税理士へ確認してください。国税庁 No.4138 納税義務者の範囲等(2026年4月1日現在)と国税庁 No.4432 受贈者が外国に居住しているとき(2026年4月1日現在)に基本事項が掲載されています。
■ 子どもが外国籍の場合の対応
相続人である子どもが外国籍で海外在住の場合、日本の遺産(特に不動産)の相続登記などで問題になることがあります。たとえば:
- 住民票がないため、住所証明書の代替資料が必要
- 必要書類・日本語訳・認証の要否を、登記の相談先や金融機関に確認する
- 代理人を立てて手続きを行うケースが多い
■ 多国籍家族で準備しておきたい資料
遺言書の相談前に、次の資料を分かる範囲で整理しておくと、確認すべき国や手続きを絞りやすくなります。
- 本人と家族の国籍・住所・法律上の親族関係が分かる資料
- 日本と外国にある財産・債務の一覧
- すでに作成している遺言書と、今後遺したい内容のメモ
- 海外の機関から案内されている手続きや必要書類
家族が海外に住んでいる場合は、海外在住・外国籍の相続人がいる場合の確認事項も参考になります。
■ 専門家に相談するときの確認先
当事務所では、遺言に向けた資料の整理や書類作成についてご相談を伺います。関係する国や財産の内容を確認し、対応範囲をご案内します。外国法に関する判断はその国の法の専門家、公正証書の作成は公証役場、登記は司法書士、相続税は税理士、争いや交渉は弁護士へ確認します。
相続・遺言の業務案内と相続・遺言の税込料金をご確認のうえ、遺言の準備について相談するからお知らせください。代表行政書士・吉田雄介のプロフィールもご覧いただけます。
■ まとめ
国際結婚・多国籍家族の増加に伴い、外国人にとっての相続・遺言の問題は今後さらに複雑化することが予想されます。だからこそ、「今」から準備をしておくことが大切です。遺言書は、家族のための最後の思いやり。日本と世界をつなぐ「架け橋」となる遺言を、正しく作成しましょう。