自筆証書遺言の書き方|法的に有効な作成手順と注意点を行政書士が解説

【完全解説】自筆証書遺言の書き方と注意点|相続トラブルを防ぐために
自筆証書遺言は、自分一人で作成できるシンプルな遺言書の形式として広く知られています。費用を抑えられる点や、プライバシーを保ちやすい点が魅力ですが、書き方に誤りがあると無効になるおそれもあるため、正しい知識が必要不可欠です。
■ 自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文、日付、氏名をすべて自書し、押印することによって成立する遺言の形式です(民法第968条)。公証人の関与を必要とせず、自宅で簡単に作成できる点が特徴です。
■ メリットとデメリット
【メリット】
- 費用がかからない(用紙・ペンのみで作成可能)
- 秘密性が高く、他人に内容を知られにくい
- 思い立ったときにすぐに書ける
【デメリット】
- 形式不備により無効となる可能性がある
- 遺言書が発見されない、または紛失されるリスク
- 家庭裁判所での「検認」が必要(ただし法務局保管制度を利用すれば不要)
■ 正しい書き方のポイント
- 全文を自書(ワープロ不可)
- 日付を明記(例:「令和6年6月22日」)
- 氏名を自筆で記入
- 押印(実印が望ましいが、認印でも可)
■ よくあるミスとその対策
- 日付の記載漏れ → 「吉日」では無効になる可能性
- 本文がワープロで作成されている → 全文自筆でないと無効
- 訂正方法が不適切 → 二重線・押印・訂正印・訂正内容の明記が必要
■ 法務局の保管制度を活用しよう
2020年7月より、自筆証書遺言を法務局に預ける制度が始まりました。以下のメリットがあります:
- 検認手続きが不要
- 遺言書の紛失・隠匿を防げる
- 内容を専門家がチェックしてくれる
保管には予約が必要で、遺言者本人が法務局に出向く必要があります。
■ 書き直しや訂正はどうする?
一部の内容を訂正する際は、二重線で消し、訂正印を押し、余白に訂正内容を記載する必要があります。多くの場合は、新しい遺言書を作成し直すことをおすすめします。
■ 自筆証書遺言の具体例
以下に、実際の文例を紹介します:
遺言書
私は、長男○○○○に自宅(土地・建物)を相続させ、次男○○○○には預貯金全額を相続させる。
令和6年6月22日
埼玉県比企郡滑川町○丁目○番○号
遺言者 山田太郎 ㊞
■ 自筆証書遺言の保管期間と更新
遺言書に有効期限はありませんが、状況が変わったとき(例:家族構成の変化、財産内容の変更)には、新たに作成し直すことが大切です。古い遺言と新しい遺言に矛盾がある場合は、日付が新しいものが有効とされます。
■ 行政書士によるサポート
以下のようなケースでは、行政書士への相談が効果的です:
- 遺言内容に複雑な相続関係が絡む
- 不動産の相続を予定している
- 家族間でトラブルを未然に防ぎたい
専門家によるチェックを受けることで、有効性の高い遺言書を残すことができます。
■ まとめ
自筆証書遺言は手軽でありながら、正しいルールに従って作成しなければ無効となるリスクがあります。近年は法務局による保管制度も整備され、安全に管理できるようになりました。大切な想いと財産を確実に引き継ぐためにも、専門家のサポートを得ながら、万全の準備を整えましょう。