制度確認日:2026年9月23日
将来、親が自分で預金や不動産を管理しにくくなったときに備えたい。亡くなった後に誰へ財産を残すか決めておきたい。この二つの希望では、必要な準備が異なります。
家族信託を検討するときは「誰が、どの財産を、何のために管理するか」、遺言では「死亡後に財産を誰へ承継させるか」を整理しましょう。両方を利用する場合もありますが、全員に併用が必要ということではありません。

家族信託は、財産を管理する人と使い道を決める仕組み
一般に家族信託と呼ばれる仕組みは、家族などが受託者となり、定めた目的に従って財産を管理・処分する信託です。財産を託す人が「委託者」、管理する人が「受託者」、利益を受ける人が「受益者」です。
例えば、親が生活費に充てる財産を子に託し、子がその財産を管理して親のために支出する設計が考えられます。受託者が自由に使える財産をもらう仕組みではありません。本人の財産と分けた管理や帳簿作成など、継続する事務も生じます。法務省「知って活用 信託制度」
遺言は、死亡後の財産の行き先を定める方法
遺言は原則として死亡時に効力が生じます。特定の財産を誰に残すかなどを定めるために用いますが、遺言を書くだけで、生前の預金手続きや不動産管理を家族へ任せられるわけではありません。
自筆証書遺言や公正証書遺言には、作成方法や保管、死後の手続きの違いがあります。方式と本人の意思の確認が必要で、遺留分への配慮も別に検討します。日本公証人連合会「遺言」
具体的な方式は、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いをご覧ください。
比較するのは「開始時期」だけでなく対象と運用
ここでは、生前に家族と契約する信託と、一般的な財産承継の遺言を比べます。
| 確認点 | 生前の契約による家族信託 | 遺言 |
|---|---|---|
| 主な準備 | 管理目的、対象財産、担当者、利益を受ける人を決める | 死亡後の財産の行き先などを定める |
| 効力の開始 | 原則として契約締結時。契約内容も確認 | 原則として遺言者の死亡時 |
| 生前の管理 | 信託した財産について、定めた権限で行う | 遺言だけでは生前の管理権限を与えない |
| 継続する作業 | 支出、記録、報告、担当者の交代等を考える | 財産・家族の変化に応じて見直す |
信託には遺言によって設定する方法もあり、死後の承継を組み込むこともできます。「信託は生前だけ」と区切らず、信託の対象外にする財産や既存の遺言との関係も確認します。法務省「知って活用 信託制度」
財産の管理以外に必要な支援も確かめる
信託契約を結べば、受託者が本人の生活上のあらゆる契約を代理できるわけではありません。施設への入所契約など、本人のために必要な行為については、任意後見・法定後見なども含めて確認します。法務省「成年後見制度・成年後見登記制度」
また、認知症という診断名だけで、契約や遺言を作れるか決めつけないことも大切です。作成時の本人の理解と意思、内容の複雑さなどを踏まえ、専門家へ相談します。本人の意思確認が難しい場合に、家族だけで署名や作成を進めないでください。
費用を比べる前に、家族で確認したいこと
相談前には、次の点をメモにまとめると目的を説明しやすくなります。
- 現在の預金・不動産と、生活費や介護費に使う予定
- 管理を任せたい人と、その人が続けられる仕事の範囲
- 本人や担当者が亡くなった場合、担当を続けられなくなった場合の希望
- 既存の遺言、後見契約、借入れや担保の有無
費用は対象財産や設計により異なります。書類作成、公証、登記、税務の確認、開始後の管理支援を分けて見積りを取り、金融機関で希望する口座や手続きに対応できるかも確認しましょう。
信託を利用するだけで税負担がなくなるわけではありません。受益権の取得などに課税関係が生じる場合があるため、税理士に具体的な設計を見てもらいます。国税庁「新たに信託の設定等を行った場合」
必要な業務ごとに相談先を選ぶ
行政書士は、法的紛争のない範囲で、遺言作成の支援や相続関係の書類作成・調査を扱います。信託の設計は内容に応じて対応可能な専門家を確認し、不動産の信託登記は司法書士、税務判断は税理士、対立がある場合の権利判断や交渉・調停の代理は弁護士へ相談します。日本行政書士会連合会「遺言・相続」
YellZealへの書類準備のご相談は、相続・遺言のお問い合わせから現在の財産と希望をお知らせください。依頼できる範囲はサポート案内で確認できます。