家族以外へ残す希望は、相手・財産・受け取れる条件をそろえて検討します
パートナー、友人、お世話になった人、支援したい団体へ財産を残したいときは、遺言による「遺贈」が選択肢になります。ただし、相手の名前を書くだけでは準備が十分とは限りません。受け取る相手を特定し、対象財産、債務、家族の遺留分、受入条件、手続きを担う人を確認します。
ここでは日本の民法を前提に、遺言の文面を決める前の整理を説明します。外国籍の方や海外団体・海外財産が関係する場合は、適用法や現地手続きも別に確認してください。制度確認日:2026年9月15日。

親しい関係と、法律上の相続人であることは別です
長く一緒に暮らすパートナーや世話をしてくれた友人が、その関係だけで法定相続人になるわけではありません。法律上の婚姻関係にないパートナーは、配偶者としての相続権を当然には持ちません。親族でも、子の配偶者などは通常、その続柄だけでは本人の相続人ではありません。国税庁:相続人の範囲
遺贈は、遺言によって財産を残す方法です。相続人以外の人を受け取る相手に指定することもできますが、法定の方式に従った遺言が必要になります。本人の希望を家族が聞いていたことや、連絡用ノートに希望を書いたことだけで、予定した承継が実現すると考えないでください。民法960条・964条
個人へ残す場合は、氏名だけで同姓同名の人と区別できるか、住所などの情報は最新か、本人へ連絡する方法はあるかを整理します。相談用の記録に必要以上の個人情報を集めるのではなく、遺言にどこまで記載するかは作成時に確認します。相手の意思や家族関係を推測で記入しないことも大切です。
特定の財産を残すのか、財産全体の割合を残すのか
特定遺贈は、対象となる財産を特定して残す方法です。包括遺贈は、財産の全部または一定の割合を対象とする方法です。たとえば、ある不動産を指定する希望と、財産全体の一定割合を残す希望では、確認すべき権利や手続きが異なります。ここで示すのは考え方の例であり、そのまま遺言に写す完成文例ではありません。
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を持ちます。預金や不動産だけでなく債務も関係するため、「全財産の半分」と書けば、良い財産の半分だけを受け取れるという説明はできません。借入れ、未払金、保証などの手がかりを確認し、受け取る側の負担を検討します。民法964条・990条
特定遺贈であっても、担保が付いた不動産、管理費のかかる物、一定の負担を伴う内容では、受取人への影響を確認する必要があります。「特定なら負担が一切ない」と決めず、何が残り、何を誰が負担するのかを区別します。複数の遺贈を考えるときは、現金不足や対象財産を売却した場合も相談事項にしてください。
また、遺贈の放棄を考えるときは、特定遺贈と包括遺贈で手続きや期間の扱いが異なります。受け取る人が死亡後に判断する場合は、遺言全体と財産・債務を弁護士等へ示し、自己判断で財産を処分する前に確認します。民法986条の説明だけを包括遺贈にも同じように当てはめないことが必要です。
団体への遺贈は、正式名称と受け取れる財産を確認する
団体に残す場合は、活動名や愛称と、遺言で指定する受取人の正式な名称を区別します。本部と支部のどちらを指定するか、法人格の有無、担当窓口、遺贈の受付条件を、その団体の公式情報で確認してください。今の活動を知っていることだけでは、死亡時に予定の財産を受け取れるとまでは分かりません。
確認する内容は、現金以外も受け付けるか、不動産等を売却してから渡す必要があるか、使途を限定できるか、諸費用・税金をどの段階で差し引くかです。手続きを行う人の指定や、事前相談を求める条件があるかも確認します。相手の受入方針を、遺言の一般的な法律要件と混同しないでください。
例えば日本赤十字社は、現金以外について原則として遺言執行者等が換価し、必要な費用・税金を差し引いた金銭による寄付を案内しています。また、同社を遺言執行者に指定することは控えるよう案内しています。これは同社の取扱例であり、すべての団体に共通する条件ではありません。日本赤十字社:遺贈・相続財産等の寄付に関する質問
問い合わせて確認した事項は、確認日、窓口、対象となる財産、条件の要点を記録します。受入可能という案内を得ても、その回答だけで遺言の形式や税務の問題が解消するわけではありません。団体の例示文も、自分の家族構成や財産に合うかを確認してから検討します。
家族の遺留分と、相手が先に亡くなる場合を考える
相続人以外への遺贈でも、遺留分の問題は残ります。兄弟姉妹以外の一定の相続人には遺留分があり、侵害があれば受遺者へ金銭の支払いが請求される場合があります。財産の大半が不動産であれば、受取人が支払いに使える現金を持てるかも検討事項です。民法1042条・1046条
家族へ残す財産と、家族以外へ残す財産を一つの一覧で見渡すと、希望同士の矛盾に気づきやすくなります。家族の生活を支える支出、財産の維持費、手続き費用も相談時に伝えましょう。遺留分をめぐる法的判断や交渉が必要な場合は弁護士へ相談します。
個人の受遺者が遺言者の死亡以前に亡くなった場合、遺贈は原則として効力を生じません。その人の子に自動的に同じ遺贈が引き継がれると考えず、受け取れない場合の希望も整理します。団体の解散や受入辞退の場合を含め、予備的な指定の要否と具体的な条件は個別に検討してください。民法994条
遺贈だから非課税、寄付だから非課税とは限りません
個人が遺贈によって取得する財産は、相続税の対象となり得ます。実際に相続税が生じるかは、課税価格の合計、基礎控除、続柄その他の条件を確認して判断します。特定の友人へ残す金額だけを見て、課税の有無を決めるものではありません。国税庁:相続税がかかる場合
相続税額の2割加算にも注意します。配偶者や一定の一親等の血族等以外の人が取得した場合には、原則としてその人の相続税額に2割相当額が加算されます。友人や法律上の配偶者でないパートナーへの遺贈では、この確認が必要です。受け取る財産額の20%が一律に加算されるという意味ではありません。国税庁:相続税額の2割加算
団体の場合も、法人格や法人の性質、対象財産によって税務が異なります。人格のない社団・財団や一定の法人に相続税が課される場合もあり、「団体なら相続税の問題はない」とは説明できません。個別の税務は税理士へ確認します。相続税法66条
また、本人の遺言から団体へ直接渡す方法と、相続人等がいったん取得した財産を後から寄付する方法は別です。国税庁は後者について、一定の相手に申告期限までに寄付する場合等の特例を案内しています。寄付先・時期・対象財産・申告等の条件があるため、その特例がどの遺贈にも自動的に使えるとは考えないでください。国税庁:相続財産を公益法人などに寄付したとき
希望を実行する人と、未確定の条件を整理する
遺言が見つかった後、誰が関係者へ連絡し、資料を集め、財産を渡す手続きを進めるかも考えます。遺言執行者を指定する場合は、役割、就任の意思、できる業務、費用の取決めを本人や候補の専門家に確認します。受取人や団体の窓口が当然にすべての手続きを引き受けるとは限りません。
相談時は、受取人候補、財産と債務の概要、家族関係、受入条件、受け取れない場合の希望をまとめてください。不動産の登記手続きは司法書士等、税務は税理士、争いや法的判断は弁護士の確認が必要になる場合があります。支援を頼む先ごとに、担当する範囲を確かめます。
家族以外への遺贈についてよくある質問
長く一緒に暮らすパートナーなら、遺言がなくても相続できますか?
同居の事実だけで法律上の配偶者としての相続権が生じるわけではありません。残したい財産と現在の法律上の家族関係を整理し、遺贈等の方法を検討してください。
団体へ不動産をそのまま残してもよいですか?
団体ごとに受入条件が異なります。現物を受け取れるか、売却後の金銭で渡す必要があるか、費用や税金をどう扱うかを確認してから文面を検討します。
遺贈先を指定すれば、必ず受け取ってもらえますか?
受取人の死亡、受入条件の変更、放棄等で予定どおりにならない場合があります。現在の意思確認に加え、受け取れない場合の希望と見直しの機会を用意します。
残したい相手と財産を、遺言作成の相談へ
遺言書作成サポートについて相談する際は、受取人と希望内容、確認できている受入条件をお伝えください。具体的な支援範囲と費用を確認します。相続専用サイトの問い合わせ窓口をご利用いただけます。
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相談を担当する行政書士
吉田雄介(行政書士登録番号22130594)。エールZEAL国際行政書士事務所(埼玉県比企郡滑川町)。事務所・担当者紹介