行政書士が解説|株式会社と合同会社どっちで設立すべき?費用・信用・メリット徹底比較

行政書士が徹底解説|株式会社と合同会社どっちで設立すべき?
費用/スピード/信用/ガバナンス/資金調達/将来の組織変更まで、現場の実務で本当に役立つ比較ガイド。
すぐに結論:対外信用・資金調達・採用の強さを最重視するなら「株式会社」。初期費用・スピード・運営の柔軟性を重視するなら「合同会社」。“まずは合同会社で開始 → 必要になったら株式会社へ組織変更”は現実的で合理的です。
一目で分かる要点比較(株式会社/合同会社)
比較軸 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
初期費用 | やや高い(公証人の定款認証が必須) | 低コスト(公証人の定款認証なし。電子定款で印紙税0円) |
設立スピード | 中(公証人・登記の段取りが必要) | 速い(手続がシンプル) |
対外信用 | 高い(法人取引・金融機関・採用で有利) | 中(実績・情報公開で十分補える) |
ガバナンス | 株式制度・機関設計が柔軟、上場も視野 | 定款自治が広く、意思決定が速い |
決算公告 | 原則必要(公告方法は定款で規定) | 原則不要(合併など一部は必要) |
人材インセンティブ | 株式・ストックオプションで設計可 | 利益分配の設計は柔軟だが株式報酬は想定外 |
将来の資金調達 | 強い(第三者割当増資・ベンチャーキャピタルからの投資・株式上場) | 限定的(必要時に株式会社へ組織変更) |
向いているケース | 信用重視、採用強化、外部出資を見据える | 小さく早く安く始めたい、内部で迅速に決めたい |
設立コスト・初期手続の違い
株式会社の主な費用
- 登録免許税:資本金×0.7%(最低15万円)
- 定款認証(公証役場):必要(手数料あり)
- 定款の印紙税:紙なら4万円/電子なら0円
- 専門家報酬(任意):目的精査・許認可見据えた文言設計に有用
合同会社の主な費用
- 登録免許税:資本金×0.7%(最低6万円)
- 定款認証:不要
- 定款の印紙税:紙なら4万円/電子なら0円
- 専門家報酬(任意):利益分配条項など定款設計の自由度が高いため、最初の設計が重要
機関設計・ガバナンスの違い
株式会社
- 出資(株主)と経営(取締役)を分離しやすい
- 小規模なら取締役1名・監査役なしも可(非公開会社)
- 株式の譲渡制限を定款に入れてオーナーシップ維持
- 株主総会・取締役の議事録整備が肝(定時株主総会は年1回)
合同会社
- 社員(出資者)が意思決定の主体。利益分配を出資比率と切り離して定款設計可能
- 業務執行社員・代表社員を定める(役員任期の概念なし)
- 意思決定が速く、ルール変更も定款次第で柔軟
- 社員間の関係・退出・買取条項を最初に設計しておくとトラブル予防
対外信用・資金調達・採用への影響
信用
大手取引や官公庁は株式会社を好む傾向。合同会社でも実績・各種保険・情報公開で十分カバー可能。
資金調達
外部株主の受け入れ・ストックオプション設計は株式会社が得意。合同会社は銀行借入中心が現実的。
採用
応募率や印象は株式会社がやや有利。合同会社はカルチャー・報酬設計・柔軟な働き方で競争可能。
税務・社会保険・経理の実務ポイント
- 税目:どちらも法人税等の申告が必要。消費税は2期目以降や課税売上で判定・特例あり。
- 社会保険:法人は原則として社会保険加入義務。役員報酬の期中変更・未払は要注意。
- 会計・経理:会計ソフト導入と月次締めの徹底。通帳/カード/領収書の業務専用化が近道。
- 税務調整:役員貸付金・家事按分・資産計上(工具・備品)・減価償却の区分に注意。
設立までの流れ(チェックリスト付)
共通の準備
- 商号・本店・事業目的・事業年度
- 資本金・出資者の割当
- 役員構成(株式会社:取締役/合同会社:業務執行社員・代表社員)
- 印鑑(実印・銀行印・角印)/メールドメイン/請求書様式
設立フロー
- 定款作成(株式会社は公証役場で認証/合同会社は認証不要)
- 資本金の払込(登記前は発起人の個人口座等、実務手順に沿う)
- 登記申請(登録免許税の納付)
- 税務・年金事務所・労基署・ハローワーク等の届出
□ 目的は許認可に耐える文言か(建設・宅建・古物・飲食 等)
□ 代表者住所・役員住所の記載整合(登記簿/住民票)
□ 事業年度と決算スケジュールの整合
□ 印鑑証明/本人確認書類の有効期限
□ 電子定款で印紙税0円の適用
□ 株式の譲渡制限(株式会社)/利益分配条項(合同会社)
□ 銀行の与信審査を想定した目的表現か
目的(定款)サンプル/NG例
目的サンプル(建設+資材・不動産)
1. 建設工事の請負、施工、管理およびコンサルティング
2. 建設資材の仕入・販売・リース
3. 産業廃棄物の収集運搬(許可取得後)
4. 不動産の売買、賃貸、仲介および管理
5. 前各号に附帯関連する一切の業務
許認可が絡む場合は「許可取得後に行う旨」や業種名を明確に。曖昧な総称だけは避ける。
NG/要修正になりがちな例
- 実際にやらない業種を大量列挙(信用・銀行審査で逆効果)
- 古物商・産業廃棄物など許可業種の表現が曖昧
- 目的が抽象的過ぎる(「各種事業の展開」等)
業種別の向き・不向き(簡易ガイド)
建設業
元請け・公共性が強いなら株式会社を推奨。下請け中心・少人数で始めるなら合同会社で初動→のちに株式会社へ。
不動産(宅地建物取引業)
信用・保証枠・協会対応を考えると株式会社が無難。合同会社でも運営可能だが、事業承継まで見るなら株式会社。
飲食・小売・EC
スピードとコスト重視で合同会社が人気。多店舗展開・外部投資なら早めに株式会社へ。
合同会社から株式会社への組織変更
- タイミング:売上の伸長、採用本格化、金融機関や投資家対応が必要になった時
- 設計:社名・本店・事業目的の再設計、株式・ストックオプション、機関設計をこの機会に最適化
- 注意:契約・口座・許認可の名義変更・引継確認(連鎖対応が発生しやすい)
よくある質問
Q. まず合同会社で作って、あとで株式会社に変えるのは現実的?
現実的です。初期コストとスピードを優先→信用・採用・資金調達が必要になった時点で株式会社へ組織変更が合理的。
Q. 銀行口座は株式会社の方が作りやすい?
傾向としては「はい」。合同会社でも事業計画・実績・請求書等の整備で十分カバー可能です。
Q. 社会保険は?役員だけでも必要?
法人は原則加入義務があります。役員報酬の設計を含め、早めに社会保険労務士・税理士と連携を。
Q. 目的は広めに書けば安心?
やりすぎは逆効果。許認可・銀行審査・補助金を見据え、実態+近い将来の事業に絞って精度高く。
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