技人国で在宅勤務・フルリモートはできる?行政書士が実務上の注意点を解説

技人国で在宅勤務・フルリモートはできる?行政書士が実務上の注意点を解説
「技人国の外国人をフルリモートで採用しても大丈夫ですか?」
「会社は東京ですが、外国人社員は埼玉県の自宅から勤務する予定です」
「一度も会社に出社しない働き方でも、技人国は申請できますか?」
テレワークが一般的な働き方の一つとなった現在、外国人雇用でもこのようなケースを検討する企業が増えています。
では、在留資格「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」を持つ外国人は、在宅勤務やフルリモート勤務をすることができるのでしょうか。
結論からいうと、在宅勤務やフルリモート勤務であるという理由だけで、直ちに技人国で働けなくなるわけではありません。
技人国で重要なのは、「会社に毎日出社しているか」ではなく、日本の会社等との契約に基づいて、技人国に該当する専門的な業務を実際に行っているかです。
ただし、フルリモートになれば何も問題がないという意味でもありません。
勤務場所、雇用契約、会社による労務管理、実際の業務内容などについて、通常の出社型勤務以上に実態を整理しておいた方がよいケースがあります。
この記事では、外国人雇用・在留資格申請を取り扱う行政書士が、技人国と在宅勤務・フルリモートの関係を実務目線で解説します。
技人国に「会社へ出社しなければならない」という要件はある?
まず、技人国の制度そのものを確認してみましょう。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、日本の公私の機関との契約に基づき、自然科学・人文科学の分野に属する技術・知識を必要とする業務や、外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務などに従事するための在留資格です。
代表的には、エンジニア、通訳、デザイナー、マーケティング業務などが挙げられます。
したがって、技人国でまず確認すべきなのは、
- どの会社等と契約しているのか
- どのような仕事内容なのか
- その仕事が技人国の活動に該当するのか
- 本人の学歴・職歴等が要件に適合しているか
といった点です。
少なくとも「毎日会社のオフィスへ出勤すること」そのものが技人国の中心的な要件になっているわけではありません。
そのため、在宅勤務だからという一点だけを取り上げて、「技人国では働けない」と判断するのは適切ではありません。
では、技人国でフルリモート勤務もできる?
ここが一番気になるところだと思います。
フルリモートという勤務形態だけを理由として、技人国に該当しないと一律に判断することはできません。
例えば、IT企業に勤務する外国人エンジニアが、自宅から会社のシステムにアクセスして、
- システム開発
- プログラミング
- システム設計
- データ分析
- WEBサービスの開発
などを行っているケースを考えてみましょう。
会社へ出社して同じ仕事をする場合と、自宅で同じ専門業務をする場合で、仕事内容そのものが別の仕事になるわけではありません。
同様に、マーケティング、翻訳・通訳、企画、海外取引業務など、オンラインで遂行できる専門業務もあります。
したがって、重要なのは、
「どこでパソコンを開いているか」よりも、「そのパソコンで何の仕事をしているのか」
ということです。
ただし「フルリモートなら何でも大丈夫」ではない
ここは注意が必要です。
在宅勤務が可能だからといって、仕事内容まで自由になるわけではありません。
例えば、技人国で許可を受けている外国人が、自宅で仕事をしていたとしても、その実際の仕事内容が技人国に該当しないものであれば問題は別です。
在宅勤務であるかどうかと、在留資格に該当する仕事内容であるかどうかは、分けて考える必要があります。
つまり、
出社して専門業務をする → 技人国の検討対象
自宅で専門業務をする → 技人国の検討対象
自宅で技人国に該当しない仕事をする → 在宅勤務だから認められるわけではない
という整理になります。
在宅勤務では「雇用の実態」も重要
フルリモートの場合に当事務所が注意したいと考えるのが、本当に会社との雇用・契約関係のもとで業務を行っているのかという点です。
例えば、
- 会社から具体的な業務指示がある
- 上司や担当者との連絡体制がある
- 勤務時間や勤怠が管理されている
- 会社の業務として成果物を作成している
- 社内の会議や報告に参加している
- 会社から給与が適切に支払われている
といった事情があれば、会社に出社しなくても雇用の実態を説明しやすくなります。
厚生労働省も、テレワークの場合には使用者が労働時間を適切に管理する必要があるとしており、始業・終業の連絡、業務日報、クラウド型勤怠管理システムなどを利用する方法を紹介しています。
つまりフルリモートだからこそ、「誰の指示を受け、いつ、どのような仕事をしているのか」が客観的に分かる状態にしておくことが大切です。
労働条件通知書の「就業場所」にも注意
在留資格だけでなく、労務管理上も確認しておきたいポイントがあります。
厚生労働省は、採用時からテレワークを行わせる場合、労働条件通知書等における就業場所として、自宅やサテライトオフィスなど、テレワークを行う場所を明示する必要があると案内しています。
また、採用後にテレワークを予定している場合についても、テレワーク可能な場所を明示しておくことが望ましいとされています。
そのため、最初からフルリモートとして外国人を採用するのであれば、
「勤務地:東京都○○区本社」
とだけ記載しておきながら、実際には埼玉県の本人宅から一度も出社せず勤務しているという状態よりも、
雇用契約・労働条件と実際の働き方を最初から一致させておく
方が適切です。
「会社は東京、本人は埼玉でフルリモート」でも大丈夫?
例えば、東京都内のIT企業に雇用されている外国人が、埼玉県内の自宅からフルリモート勤務するケースです。
この場合も、会社所在地と本人の勤務場所が別の都道府県であるという事実だけで、技人国に該当しなくなるとは考えにくいです。
テレワークそのものが、勤務先から離れた自宅等を就業場所とする働き方として認められているためです。
ただし、
- 雇用契約上の所属会社
- 本人の実際の住所
- 実際の勤務場所
- 会社からの指揮命令関係
- 実際の仕事内容
などに矛盾がないよう整理しておくべきでしょう。
転職と同時にフルリモートになるケースは特に確認したい
例えば、現在技人国で勤務している外国人が転職し、次の会社では完全在宅勤務になるケースがあります。
この場合、
「今も技人国を持っているから、そのまま何でもできる」
と判断するのは危険です。
転職後も、本人が従事する仕事内容が技人国に該当する必要があります。
また、技人国など一定の在留資格を持つ外国人については、契約機関の変更等があった場合に出入国在留管理庁への届出が必要になる場合があります。
したがって、
- 新しい会社の事業内容
- 新しい仕事内容
- 本人の学歴・職歴
- 雇用契約
- 勤務方法
を確認することが重要です。
フルリモートで特に注意したいケース
当事務所としては、次のようなケースでは事前に内容を整理することをおすすめします。
1.入社時から一度も出社しない
一度も会社へ出社しないこと自体をもって直ちに問題になるとはいえません。
しかし、完全オンラインで勤務するのであれば、会社との指揮命令関係や具体的な仕事の実態を説明できるようにしておくことが重要です。
2.小規模な会社で外国人だけフルリモート
なぜその外国人についてフルリモート勤務を採用しているのか、会社の勤務制度としてどのような位置づけになっているのかを整理しておいた方がよいでしょう。
3.雇用契約書と実際の勤務地が違う
契約書では本社勤務となっているにもかかわらず、実際には完全在宅という状態は避け、実際の労働条件に合わせて適切に整備することが重要です。
4.仕事内容が曖昧
「WEB業務」「海外対応」「事務」など抽象的な説明だけでは、具体的に何をしているのか分かりません。
これはフルリモートに限りませんが、技人国の申請では専門的な仕事内容を具体的に説明することが重要です。
海外からフルリモートする場合は話が別
ここも区別しておきましょう。
この記事で説明している「在宅勤務・フルリモート」は、基本的に外国人が日本に在留し、日本の自宅等から勤務するケースを想定しています。
外国人本人が海外に住みながら、日本企業の仕事をオンラインで行う場合は、日本国内に在留して技人国の活動を行うケースとは前提が異なります。
そのため、
「日本国内でのフルリモート」と「海外から日本企業へのリモート勤務」は同じ問題として扱わない
ことが重要です。
技人国の在宅勤務で企業が確認したい7つのポイント
技人国の外国人を在宅勤務・フルリモートで雇用する場合には、少なくとも次の点を確認しておきましょう。
- 仕事内容が技人国に該当しているか
- 本人の学歴・職歴と仕事内容が適合しているか
- 雇用契約・労働条件通知書に勤務場所が適切に記載されているか
- 会社からの指揮命令・報告体制があるか
- 勤務時間を適切に管理できる体制があるか
- 申請上の仕事内容と実際の仕事内容が一致しているか
- 転職等がある場合に必要な届出を確認しているか
ポイントは、
「フルリモートであることを隠す」のではなく、フルリモートでも適切な雇用・業務実態があることを説明できる状態にすること
です。
「フルリモートなら許可される?」に一律の答えはない
ここは専門家として明確にしておきたいところです。
「フルリモートでも必ず技人国が許可される」とまでは言えません。
在留資格の許可・不許可は、本人の経歴、契約内容、会社の事業内容、仕事内容その他の事情を踏まえて個別に判断されるためです。
一方で、現在確認できる出入国在留管理庁の公開情報上、技人国について「在宅勤務だから不可」「フルリモートだから不可」とする一律のルールは確認できません。
したがって、判断の中心になるのは、やはり勤務場所そのものよりも、
「技人国に該当する専門的な仕事を、実態を伴って行っているか」
という点だと考えるべきでしょう。
埼玉県で技人国・外国人のリモート採用をご検討の企業様へ
エールZEAL国際行政書士事務所では、技術・人文知識・国際業務をはじめ、外国人雇用に関する在留資格申請を取り扱っています。
外国人採用では、単に申請書類を作成するだけではなく、
- この仕事内容で技人国を申請できるか
- フルリモートでも問題がないか
- 雇用契約書の内容は適切か
- 転職後も現在の在留資格で働けるか
- 本人の学歴と仕事内容に問題がないか
といった採用前の段階から確認することが重要です。
埼玉県比企郡滑川町を中心に、東松山市、熊谷市、坂戸市、鶴ヶ島市、川越市など埼玉県内の事業者様のほか、オンラインでのご相談にも対応しています。
まとめ|技人国は「どこで働くか」より「何をして働くか」
技人国の外国人が在宅勤務・フルリモートで働く場合、最も重要なのは、
「自宅で働いていること」ではなく、「自宅で何の仕事をしているのか」
です。
技人国に該当する専門業務を、日本企業等との適切な契約関係のもとで行っているのであれば、在宅勤務という働き方だけを理由に否定するべきではありません。
一方で、フルリモートでは会社と本人が物理的に離れているため、雇用契約、勤務場所、勤怠管理、指揮命令関係、実際の仕事内容などをきちんと整理しておくことがより重要になります。
「フルリモートだから大丈夫か?」ではなく、「この雇用形態と仕事内容で技人国として説明できるか?」
という視点で検討することが大切です。
外国人をフルリモートで採用する予定があり、在留資格上問題がないか判断に迷う場合には、採用前の段階で確認することをおすすめします。
エールZEAL国際行政書士事務所
行政書士登録番号:22130594
外国人雇用・在留資格・入管業務対応
※本記事は2026年8月時点の出入国在留管理庁・厚生労働省の公表情報等をもとに一般的な制度を解説しています。在留資格の許可・不許可は、申請人の経歴、雇用契約、具体的な職務内容、所属機関の状況等を踏まえて個別に審査されます。
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