
店舗を閉めるときは、賃貸借契約の解約や設備の片付けとあわせて、風俗営業許可の返納、深夜酒類提供飲食店営業の廃止届出などを確認してください。営業をやめても、行政へ提出した情報が自動的に整理されるわけではありません。現在どの許可・届出を、誰の名義で取得しているかを把握することから始めます。
風俗営業許可の店舗と深夜営業の届出店舗では、閉店時の手続きが異なります。また、完全に営業を廃止する場合、一定期間休業する場合、別の営業者へ引き継ぐ場合も分けて考える必要があります。閉店という言葉だけで、全てを同じ廃業手続きとして進めないでください。
廃業、休業、営業者交代を区別する
| 予定 | 確認すること | 先に決めない方がよいこと |
|---|---|---|
| 完全な廃業 | 許可証返納又は廃止届出、他の届出 | 書類確認前に許可証を捨てること |
| 一時休業 | 休業理由、期間、再開予定と許可の扱い | 長期休業でも何も不要と考えること |
| 別の営業者へ引継ぎ | 新規許可・開始届出、承継制度の該当 | 前営業者の許可をそのまま使わせること |
| 法人化に伴う切替 | 個人と会社の営業時期の整理 | 会社設立日だけで旧許可を返すこと |
風営法には、正当な事由なく一定期間営業を開始しない場合又は引き続き休止している場合に関する規定があります。許可を取得したまま長く休業してよいと決めつけず、休業理由と再開の見通しを確認してください。休業をするだけで必ず許可が失効すると一律に説明することも適切ではありません。
風俗営業を廃止したときの許可証返納
風営法第10条は、風俗営業を廃止した場合の許可証返納を定めています。施行規則第23条では、原則として事由の発生日から10日以内に、営業所所在地の所轄警察署長を経由して返納し、返納理由書を添付することが示されています。最終営業日、実際に廃止した日、賃貸契約の終了日が同じとは限らないため、事実を整理して期限を確認します。
廃止による許可証の返納があったときは、許可は効力を失います。返納後に同じ営業者が再開したい場合でも、古い許可証を使えばよいということにはなりません。将来の再開を考えている場合は、返納する前に、今回の予定が廃業か一時休業かを確認しましょう。
許可証を失くしているとき、管理者証等の資料があるとき、複数店舗を同時に閉めるときは、それぞれ必要な対応を窓口で確認します。返納理由書の様式と許可証の所在を先に確認し、紛失している事実を隠して別の手続きを進めないでください。
深夜酒類提供飲食店営業は廃止届出を確認する
深夜酒類提供飲食店営業は許可証を取得する制度ではなく、開始・変更・廃止等の届出を行う制度です。閉店時には、法第33条及び施行規則第104条の廃止届出を確認します。風俗営業許可の返納理由書を提出すれば深夜届出も終了するという整理にはできません。規則第104条が準用する規定により、廃止届出は廃止から10日以内の提出を確認します。
深夜営業だけをやめて、昼間の飲食店営業は続ける場合もあります。その場合は、店全体を廃業するのか、届出した深夜の営業を廃止するのかを分けて確認してください。営業時間と酒類提供の方法が変わる場合には、実際の営業方法と変更・廃止の対象を整理します。
届出控えが手元にない場合は、旧営業者の氏名・名称、店舗所在地、店名、開始時期などを整理します。深夜営業をしていたことだけで開始届出が出されていたと推測せず、既存の資料と窓口で確認します。未処理の手続きがある場合には、現在の状況を踏まえた対応が必要です。
飲食店営業許可など別の手続きもある
飲食店営業許可を受けていた場合には、保健所側の廃業又は事業譲渡等の手続きを別に確認します。警察へ廃止を届けたことが、保健所への手続きを兼ねるわけではありません。食品衛生法上の承継制度と風営法の手続きを混同しないことが大切です。
消防、税務、雇用、法人の登記等についても、営業の内容と経営主体に応じて必要な対応を確認します。これらを全て当事務所が同じ依頼範囲で代行すると推測せず、行政書士の書類作成・提出と、税理士、司法書士、社会保険労務士等の業務を分けて整理します。
賃貸人への解約通知、原状回復、設備の譲渡、未払債務の整理は、許可証の返納とは別の契約・経営上の問題です。当事者間に争いがある場合には弁護士等へ相談する必要があります。行政の手続きだけ終えれば契約上の義務も消えると考えないでください。
引継ぎがあるときは返納と開始を調整する
次の営業者が入る居抜き店舗では、前の営業者の許可を設備と一緒に渡さないようにします。営業者が別人になる場合には、その営業者の手続きを確認します。相続・合併・分割の承認制度へ該当する場合もあるため、譲渡なのか法定の承継なのかを具体的に整理してください。
新しい営業者の許可又は開始届出が整っていない段階で、名義だけ旧営業者のまま営業を始めることは避けます。旧営業者の最終営業日、新営業者の開始予定日、店舗引渡し日、貸主との契約日を並べ、必要な手続きの前後関係を確認します。
図面や設備資料は、適切な範囲で引継ぎへ役立つことがあります。ただし、前営業者や従業者の個人情報が含まれる資料を、そのまま無条件に渡すことはしません。図面の最新版と変更履歴、各資料の取扱いを整理しておきます。
閉店後も保管する資料
従業者名簿には、退職後の保存期間が定められています。店舗を閉めたという理由で、名簿や接客従業者の確認記録をすぐに処分しないでください。閉店後の保管者、保管場所、保存期限、廃棄の方法を決め、個人情報が放置されないようにします。
許可証・届出の控え、返納や廃止の手続きを行った記録、契約書、会計・雇用に関する資料にも、それぞれの保存の必要性があります。全て同じ期間保管すると決めるのではなく、資料の種類と関係法令を確認します。必要な控えは営業者が後から確認できる状態で残します。
説明用の架空例:改装休業を廃業と考えてしまう場合
Mさんが麻雀店を数か月閉めて改装した後に再開する予定で、廃業と同じつもりで許可証を返そうとしている状況を考えます。この場合は、休業理由、期間、内装変更、再開予定を先に確認し、返納と構造設備変更の問題を分けて整理します。この例は確認順序を説明する架空例で、休業期間や個別の許可の扱いを断定するものではありません。
相談時に伝えること
完全閉店か休業か、最終営業日、店舗所在地、現在の許可・届出の種類、次の営業者の有無、許可証の所在をお知らせください。営業者が死亡した、法人が解散したといった事情では、返納する人や承継の問題も変わるため、その事情を先に伝えます。
閉店作業の担当と期限を並べる
最後の営業から店舗引渡しまでの間に、許可証の返納、届出、証明書・控えの整理、名簿の保存、設備の搬出、賃貸人への対応が重なります。営業者が全てを一人で抱える場合も、各項目の担当と予定日を紙にすると、先に必要な資料を捨ててしまうことを防げます。
店舗の鍵を返した後は、許可証や名簿が店内へ残っていても取りに行けない場合があります。返納する原本と、保管する資料を先に分けて持ち出します。電子データも、店舗のパソコンを処分する前に、必要な保存と適切な消去を確認してください。
よくある疑問:賃貸借契約が終わるまで廃止日は待てますか
実際の営業廃止と、契約上の店舗引渡しは別の事実です。行政の期限の起点を契約終了日へ都合よく置き換えず、最終営業日と廃止の実態を確認します。片付けだけをしている期間と、客を入れて営業している期間も区別しましょう。
よくある疑問:店名だけ変えて再開する予定です
同じ営業者が名称を変えて営業を続けるなら、廃止ではなく変更の問題になる場合があります。一度完全に廃止して許可が効力を失う場合とは異なります。休止期間、営業内容、内装、営業者が変わるかを整理し、再開のための手続きを確認してください。
よくある疑問:閉店したので従業者の書類は本人へ返せますか
本人の原本を預かっている場合の返却と、法定の確認記録や名簿の保存を区別します。保存義務がある資料を全て返却して店舗側の記録を失うことや、必要のない原本を長く保管することは避けます。資料の種類、取得した目的、保存期間と本人への案内を確認してください。
営業者の死亡や法人の解散がある場合は、通常の本人による返納と異なる関係者が手続きを行うことがあります。相続や法人清算の専門家が別に関わる場合は、店舗の許可・届出がある事実を共有し、手続きの担当が抜けないように整理します。
従業者名簿の保存、法人化の切替も参考にしてください。閉店・休業に伴う手続きを相談するから現状をお知らせいただき、依頼する作業と費用は料金案内と個別見積りで確認します。
参考資料・確認日
情報確認日:2026年10月3日。法令上の説明と、資料整理・進め方に関する実務上の提案を分けて記載しています。個別店舗は現行の様式と管轄窓口で確認してください。
- e-Gov|風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律:第8条・第10条・第33条:休止、返納、許可効力、深夜廃止
- e-Gov|風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則:第23条・第104条・第106条〜第108条:10日期限・退職後保存
- 埼玉県警察|風俗営業等に関する申請・届出書類:返納理由書、廃止届の様式
- 埼玉県|すでに食品営業をしている方へ:食品営業の変更・廃業・譲渡の別手続き
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