本文へ移動
公開 更新
建設現場を背景に、安全ベスト姿の人物が橙色のヘルメットを持つ、契約書の必要性に関する文字入り画像。

【建設業の契約書】なぜ必要?トラブル回避と法令遵守のための基礎知識

「口約束」や「見積書だけで工事を始める」という進め方では、契約内容が十分に確認できないことがあります。しかし、契約書を取り交わさずに工事を始めるのは、法的にも実務的にも大きなリスクがあります。本記事では、建設業における契約書の重要性を、建設業法や民法の観点から解説し、トラブルを防ぐための確認例も紹介します。

建設業で契約書が必要な理由

建設工事は「請負契約」に該当します。請負契約は、民法上「成果物の完成」に対して報酬が支払われる契約であり、契約内容が非常に重要です。工事の内容や金額、納期、支払方法などが曖昧なままだと、完成後にトラブルが発生する原因となります。

また、建設業法第19条は、工事金額や建設業許可の有無にかかわらず、契約内容を書面にして相互に交付することを求めています。災害時等のやむを得ない場合を除き、原則として着工前に行います。

建設業法第19条の義務とは?

第19条第1項では、法定の15事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付するのが原則です。一定の基本契約を前提とする注文書・請書には、国土交通省の通知に基づく例外もあるため、利用する契約方式の条件を確認します。主な記載事項の例は次のとおりです:

  • 工事の名称・内容・場所
  • 工期(着工日・完成日)
  • 請負代金の額および支払い方法
  • 工事を施工しない日・時間帯を定める場合の内容
  • 設計変更・工事中止や、価格変動に伴う代金変更と算定方法
  • 検査・引渡しの時期や方法、契約不適合責任等を定める場合の内容
  • 履行遅滞等の損害金、契約に関する紛争の解決方法

上記は15事項の全てではありません。国土交通省の法令遵守ガイドラインで全項目と条件を確認してください。書面の不備は是正が必要ですが、それだけで契約が当然に無効になったり、全ての法的保護を失ったりするわけではありません。

民法上の請負契約の基本とリスク

民法における請負契約では、工事完成後の「目的物の引き渡し」と「報酬の支払い」が契約の核心です。書面がないと、工事の内容が食い違っていたり、追加工事の合意が証明できなかったりと、証拠不足による不利な判断が下される可能性があります。

たとえば、「外構工事を依頼したが、門扉の設置は含まれていないと思っていた」という発注者と、「門扉も含まれると思っていた」という施工業者の間で、費用負担を巡るトラブルになることも。

契約前に確認したいトラブルの例

  • 追加工事の費用負担でもめる:書面での合意がなく、後から「言った・言わない」の争いに。
  • 支払い遅延や未払い:工事内容や納期が明確でなく、発注者側が「完成していない」と主張。
  • 瑕疵対応での認識違い:どの程度の欠陥まで補修の対象か、契約書で定めていなかった。
  • 管轄裁判所の指定がなく、訴訟で揉める:遠方での裁判を余儀なくされることも。

書面化義務に違反しないために

国土交通省のガイドラインは、書面契約をしないこと、法定事項を満たさない書面を交付すること、原則として着工前に交付しないことを第19条違反の例として挙げています。追加・変更工事も、変更内容を書面で確認し相互に交付する必要があります。

建設業法違反は単なる民事トラブルにとどまらず、企業としての信用や経営継続にも大きく関わる問題であることを意識する必要があります。

民法改正(2020年施行)の影響

2020年の民法改正により、請負契約においても「契約不適合責任」という新しい概念が導入されました。従来の瑕疵担保責任とは異なり、契約内容に適合しない仕事の目的物については、各請求の要件を満たす場合に、修補等の追完や報酬減額などが問題となります。個別の請求可否は契約内容や不適合の状況により異なります。

そのため、契約書に「どのような成果物を納品すべきか」を明確に記載しておくことが、ますます重要になっています。

電子契約の活用と実務

最近では、契約書の電子化も進んでいます。クラウド上で契約書を作成・保存し、電子署名を使って締結する方法が一般化しつつあります。建設業法上も、相手方の承諾を得て所定の方法・技術的基準を満たす電磁的方法を用いれば、書面の相互交付に代えることができます。

ただし、電子契約を活用する場合は、保存方法や認証手段、改ざん防止措置についても十分な配慮が求められます。相手方との事前合意や、ITリテラシーも考慮した導入が必要です。

契約書があることで得られる安心

契約書を交わすことは、双方の責任や義務を明確にするだけでなく、後のトラブルを防止するための「盾」にもなります。行政指導や訴訟リスクの低減だけでなく、発注者の信頼獲得にもつながります。

また、下請け業者に対しても契約書を交付することが必要です。電子契約でも法定記載事項は必要です。単にPDFを保存するだけで足りると考えず、相互交付の方法と電子契約の要件を確認しましょう。

契約書作成のポイント

  • テンプレートの丸写しではなく、案件ごとにカスタマイズを
  • 法定記載事項を必ず含める
  • 追加・変更が発生した場合の合意方法も明記
  • 契約当事者の情報(法人名・代表者名・住所)を正確に記載
  • 紙の課税文書に必要な収入印紙等と、書類・電子データの保存方法も確認(電磁的記録そのものは印紙税の課税対象外)

まとめ|契約書がない建設工事は危険

建設業において契約書を取り交わすことは、法令遵守だけでなく、実務上の安全・安心のためにも不可欠です。「うちは今までトラブルがなかったから大丈夫」と考えるのではなく、いざというときの備えとして、常に契約書を作成・保管しておくことが重要です。

当事務所では、建設業許可申請だけでなく、請負契約書の作成・チェック業務も行っております。お気軽にご相談ください。

制度の確認:国土交通省・建設業法令遵守ガイドライン/国税庁・電磁的記録と印紙税(2026年9月確認)

ご相談の前に、相談料・業務報酬・お問い合わせをご確認ください。

▶ 建設業許可トップページへ戻る

▶ 記事へ

Follow me!

ご相談をお聞かせください

現在の状況を伺い、必要な手続きや進め方をご案内します。

初回30分相談無料。書類作成・調査・申請等は別途有料です。ご相談のみでもかまいません。

PAGE TOP