
税金や社会保険料を一度払い忘れただけで、永住者の在留資格が自動的に取り消されるわけではありません。出入国在留管理庁は2026年10月1日、「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」を公表しました。新ガイドラインの運用開始日は2027年4月1日です。
対象となるのは、入管法上の義務違反、故意に公租公課を支払わないこと、特定の刑罰法令違反で拘禁刑に処せられたことなどです。個別の経緯やその後の対応を含めて判断され、取消事由に当たるからといって、必ず永住資格の取消しや出国になるとは限りません。
この記事では、対象となる永住者と特別永住者の違い、支払遅れが問題になる場合、行政機関に相談したときの扱い、通知を受けた場合に整理しておきたい資料を説明します。
制度確認日:2026年10月18日。本文は出入国在留管理庁の2026年10月1日付ガイドラインと公式Q&Aに基づきます。
まず確認したい3点
- 追加された取消事由の施行と、新ガイドラインの運用開始は2027年4月1日。2026年10月18日現在、どちらも開始前です。すでにある住所地の届出義務などの取消事由とは分けて確認してください。
- 「永住者」が対象です。特別永住者は別制度で、今回の改正対象ではありません。
- 未納の有無だけで結果は決まりません。支払能力、未納の理由、滞納回数・期間、督促への対応、その後の納付状況などを踏まえて個別に判断されます。未納額や滞納期間について一律の線引きは設けられていません。
住所地の届出をしない、虚偽の住居地を届け出るなど、すでにある取消事由は別に存在します。この記事は2027年4月1日から運用される追加事由のガイドラインを中心に説明します。
追加された取消事由は何か
2024年の改正入管法では、永住者について次の類型が追加されました。すべての義務違反や犯罪が対象になるという意味ではありません。
- 入管法に定める義務を正当な理由なく守らないこと。例として、在留カードの携帯・提示、在留カードの有効期間更新や紛失時の再交付など、法令上の義務が挙げられています。
- 故意に公租公課を支払わないこと。税金のほか、国民健康保険・健康保険や公的年金の保険料などが含まれます。本人が支払義務を認識していることや、支払わない意思が明白といえるかが重要です。
- 法律で定める特定の犯罪で拘禁刑に処せられたこと。対象となる犯罪は法律で限定されています。例えば交通事故の過失運転や道路交通法違反、罰金刑一般が、この追加事由の対象になるということではありません。
罰金・過料、公共施設の利用料などは、ガイドラインがいう「公租公課」には含まれません。会社の税金等についても、本人が支払義務を認識し、会社の経営・意思決定に実質的に関与しながら支払いを避けた場合には、対象となり得るとされています。
税金や保険料の遅れは、どのように見られる?
確認されるのは、単に未納があるかどうかだけではありません。入管庁のガイドラインは、収入・資産、滞納の回数・金額・期間、納付状況、未納に至った事情、滞納後の生活や事業の状況、本人の言動などを総合して判断するとしています。
病気、災害、失業などで支払いが難しくなった
本人に責任があるとはいえないやむを得ない事情なら、故意の不払いに当たらないと想定されています。
自治体・税務署へ相談し、分納や猶予に応じて支払っている
支払う意思を示し、約束に沿って納付している事情は、故意の不払いに当たらない想定例です。
給与から保険料等が控除されているのに、勤務先が納付していなかった
ガイドラインは、本人の給与から控除された公租公課を会社が納付していない場合を、該当しない想定例に挙げています。
繰り返し督促を受けても相談せず、支払能力があるのに納付を避け続ける
滞納処分や催告後の対応、支払意思の有無などから、悪質性が検討され得ます。
分納・猶予の約束を何度も守らない、財産を隠すなど徴収を妨げる
ガイドラインの「故意の不払い」に該当すると想定される事例に挙げられています。
金額が少なければ必ず問題がない、あるいは何か月遅れると必ず取消しになる、という基準はありません。事情がある場合は、督促を放置せず、納付先の機関に状況を伝え、利用できる相談や猶予等があるかを確認してください。相談や分納をした事実は、日付と資料を含めて保管します。
施行前の出来事でも、すべて対象外とは限りません。ガイドラインは、永住許可後に故意の不払いがあり、それが改正法の施行後に判明した場合も取消事由に該当し得ると説明しています。ただし、施行前の一時点だけの事情をもって直ちに取り消すということではなく、その後の納付状況なども含めて判断します。
在留カードを一度持ち歩かなかったら?
ガイドラインは、不注意で在留カードを携帯しなかった場合や、有効期間の更新を失念した場合も、義務違反自体には当たり得ると整理しています。一方で、その一度の不履行だけをもって取消しをすることは想定していないと明記しています。病気や災害など、義務を履行できなかった事情に正当な理由があるかも個別に検討されます。
繰り返し指導を受けても携帯・提示や更新の義務を守らず、今後も守る意思がないと認められる場合や、偽造カードを使おうとした場合などは、別の評価となり得ます。カードの期限、紛失届・再交付申請、入管からの通知や窓口での指導があれば、日付と対応を控えておきましょう。
市役所に支払いを相談すると、入管庁へ通報される?
国や地方公共団体の職員は、職務上、取消事由に当たると思われる事情を知った場合に入管庁へ通報できるとされていますが、通報は義務ではありません。また、入管庁の公式Q&Aは、公租公課を支払うために関係機関へ相談しただけで通報されることは想定していないと説明しています。
通報があっても、その事実だけで取消しが決まるわけではありません。入管庁は事実を調査し、対象者から意見を聴き、証拠を提出する機会を設けたうえで判断します。個別の通知を受けた場合は、記載された期限・提出先を確認し、通知書と関連資料を保管してください。
取消事由に当たれば、必ず永住資格がなくなる?
必ずではありません。追加事由に当たる場合でも、引き続き日本に在留することが適当でないと認められる場合を除き、法務大臣は永住者以外の在留資格への変更を許可することとされています。入管庁は、多くの場合「定住者」への変更を想定するとしていますが、どの資格になるか、変更が認められるかは個別の事情によります。自動的に「定住者」へ変わる保証ではありません。
また、犯罪に関する事由などでは別の扱いになり得ます。取消し、在留資格変更、退去強制はそれぞれ要件の異なる手続です。通知が届いた、犯罪捜査・裁判に関係している、家族の在留資格にも影響がありそう、という場合は、一般記事だけで判断せず、速やかに入管庁の案内窓口や弁護士等へ個別に相談してください。
日頃から保管しておきたい資料
書類をすべて保管し続ける必要があるという一律の決まりを示すものではありませんが、支払状況や事情をあとで説明できるよう、次の資料は手元にある範囲で整理しておくと役立ちます。
- 納税通知書、保険料・年金保険料の通知、納期限と対象期間が分かる資料
- 領収書、口座振替の記録、オンライン納付の記録、残額が分かる通知
- 分納・猶予などを相談・申請した記録、決定通知、支払予定と実績
- 病気、災害、離職、収入減など、支払いが難しくなった経緯を示す資料
- 給与明細など、保険料等が給与から控除されたことが分かる資料(勤務先の納付に疑問がある場合)
- 在留カードの期限、更新・再交付の申請日、入管庁からの連絡と対応記録
これは説明準備のための一般的な整理です。個別に必要な証拠や提出先は、届いた通知・事実関係によって異なります。マイナンバー、口座番号、在留カード番号などを公開コメントや通常の問い合わせ文面に記載するのは避け、提出方法を確認したうえで扱ってください。
通知や督促が届いたときの確認手順
- 差出人、対象の税目・保険料、対象期間、期限を確認する。納付先が分からないときは、通知書に記載された行政機関へ連絡します。
- 未納額と、すでに支払った金額を照合する。領収書や通帳記録を確認し、記録に差があればその資料を残して問い合わせます。
- 支払いが難しければ、早めに納付先へ事情を説明する。分納や猶予などを利用できるか、要件と必要書類を直接確認します。相談した日、担当窓口、回答、次回の支払予定を記録します。
- 入管庁から個別の連絡を受けたら、期限と提出方法に沿って対応する。通知書、封筒、添付資料を保存し、事実関係を時系列にまとめます。必要に応じ、在留資格の問題は行政書士・弁護士等、税務の判断は税理士、納付相談は所管の行政機関に確認します。
納付先への相談は、滞納がなくなることや在留資格上の結論を保証するものではありません。一方、入管庁のQ&Aは、支払うための相談だけで通報されることは想定していないと案内しています。事情を隠したり、督促を放置したりせず、納付先と必要な専門家へ具体的に確認することが次の一歩です。
確認した公式資料
- 出入国在留管理庁「在留資格の取消し(入管法第22条の4)」(追加された永住者の取消事由、2027年4月1日の施行日、従来からある取消事由)
- 出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドラインについて」(2026年10月公表。ガイドラインの運用開始日は2027年4月1日)
- 出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」(税金・社会保険料、在留カード義務、通報、職権変更の解釈と想定例)
- 出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」(特別永住者、在留カード、やむを得ない不払い、行政機関への相談、意見聴取に関する説明)
出入国在留管理庁の資料を2026年10月18日に確認しました。運用開始までに案内が改訂される可能性があります。個別の判断や通知への対応は、最新の公式資料と通知書を確認してください。
