1. 合意内容と文書の役割を確認する

  • 離婚協議書は合意内容の記録。口頭だけで決めず、LINE等のやり取りも保存し、何に合意したかを確認できるようにします。
  • 一定の金銭債務について強制執行認諾文言付きの公正証書を作成すると、新たな訴訟を経ずに差押えを申し立てられる場合があります。裁判所での執行手続は必要です。
  • 金額・期日・対象を明確に記載し、合意の抜けや認識の違いを確認しましょう。書面化で全ての争いを防げるわけではありません。
迷ったら ①金銭(養育費等)を守る条項②子の生活を守る面会条項 をまず固める。

2. 文書の違い(私文書/公正証書/調停調書)

種類強み弱み・注意向いている場面
私文書(当事者作成) 手早い/費用低い 私文書自体は債務名義ではない。ただし、養育費は先取特権による差押えを検討できる場合がある まず合意を文字化したい/金銭条項が小さい
公正証書(強制執行認諾付) 一定の金銭債務について債務名義となり得る/合意内容を公証人が確認 手数料・準備あり。条項の精度が要求される 養育費・慰謝料・分割金など金銭条項がある
調停調書・審判・判決 裁判所の関与/強制力あり 裁判所への申立て、必要書類や手続への対応が必要 合意が困難/安全配慮が必要な場合などに適切な手続を相談

2026年4月1日以降に発生した取決めのある養育費には、子1人につき月額8万円を上限とする先取特権があります。合意内容を示す書面など必要資料があれば、公正証書がなくても、この範囲で差押えを申し立てられる場合があります。8万円は養育費の標準額でも、請求総額の上限でもありません。

これとは別に、2026年4月1日以降に、未成年の子の養育費の取決めをせず離婚した場合、離婚時から引き続き子を主として監護する親が、他方に子1人につき月額2万円の法定養育費を請求できる制度があります。適正な養育費を取り決めるまでの暫定的・補充的な制度で、2万円を通常の養育費の基準額とするものではありません。

差押えには裁判所への申立てと必要資料の提出が必要で、自動的に支払いが確保されるわけではありません。公正証書の作成や執行の可否は、公証役場・弁護士・裁判所の手続案内で確認してください。

3. 事情に応じて確認する10項目

2026年4月1日施行の改正により、離婚時には父母双方を親権者とする共同親権、または一方を親権者とする単独親権を定めることができます。子の利益を基準に判断し、裁判所は、子への害悪のおそれや、DV等により共同での親権行使が困難な場合などには単独親権としなければなりません。

面会交流も子の年齢・意向や安全を踏まえて検討します。DV・虐待等がある場合には、直接の話合いや交流を無理に進めず、安全確保と専門の相談窓口への相談を優先してください。

  1. 親権・監護:親権者/監護者/住所変更・転校の合意手続
  2. 養育費:金額・支払日・口座・期間・増減/未払い時対応
  3. 面会交流:頻度・方法・引渡し場所・長期休暇・代替日
  4. 財産分与:預貯金・不動産・保険・車・退職金見込。財産分与について家庭裁判所に請求できる期間は、2026年4月1日以降の離婚では離婚から5年、同年3月31日以前の離婚では離婚から2年です。話合い中でも期限を放置せず、争いがある場合は弁護士や家庭裁判所の手続案内を確認してください。
  5. 慰謝料:有無・金額・分割条件・秘密保持
  6. 年金分割:按分割合/情報通知書の取得
  7. 住まい・ローン:住居の帰属/退去・引渡し日/連帯保証の扱い
  8. 姓・戸籍・住所:氏の取扱い/戸籍の移動/住民票
  9. 連絡手段・緊急時対応:連絡方法/緊急時の優先順位
  10. 変更手続き:事情変更時の協議再開条項/紛争解決の方法

4. 個別確認が必要な条項例

養育費(例)

甲は乙に対し、丙(子、20XX年X月X日生)の監護費用として、月額3万円を、毎月末日限り、乙名義○○銀行△△支店□□口座へ振込送金により支払う。期間は202X年X月から丙が満20歳に達する月までとする。
物価その他の事情に著しい変更が生じたときは、甲乙は協議により増減額を定める。

未払い対策:債務の種類を分けて確認

養育費と、総額が確定した慰謝料等の分割金では、未払い時の条項を分けて検討します。養育費を2回滞納すれば、将来分の全額を直ちに一括請求できると一律に扱うことはできません。養育費には、一定の要件のもとで給与等の将来分を継続して差し押さえる手続がありますが、将来の養育費をすべて即時に支払わせる制度とは異なります。公正証書に記載する内容や執行の方法は、公証人・弁護士に確認してください。

面会交流(例)

面会交流は毎月第2土曜10:00〜16:00、引渡場所は◯◯駅改札とする。子の体調不良・学校行事その他やむを得ない事情がある場合は、当該月内の別日に代替実施する。長期休暇は夏季連続2日間、冬季連続1日を追加し、日程は各1か月前までに協議して決める。オンライン面会(30分)を月1回実施する。

住宅・ローン(例)

甲乙共有名義の不動産(所在:…)は甲が取得し、乙に対し代償金100万円を202X年X月末日までに支払う。ローンは甲が引き続き返済し、乙の連帯保証人の解除について甲は金融機関と協議する。解除不能の場合は、売却その他の代替案について誠実に協議する。
これらは項目を考えるための例です。金額・期間・交流方法をそのまま当てはめず、子の利益や個別事情、合意内容、法的な可否を確認してください。公正証書にする場合は公証人の確認が必要です。

5. 進め方:ヒアリング→草案→合意内容確認→公証役場→運用

行政書士による支援は、紛争性のない範囲での依頼者の意思や、当事者間で合意済みの内容に基づく文書作成です。相手方との条件交渉、紛争の代理調整、裁判所への申立書作成は扱いません。争いがある場合や法的紛議がほぼ避けられない場合は、書面を送る前から弁護士に相談してください。

Step1 ヒアリング

現状・子の状況・資産/負債・収入を棚卸し。Zoom可。

Step2 草案作成

当事者間で合意済みの内容を確認してドラフトを作成。

Step3 合意内容の確認

当事者間で確認された合意内容を文面に反映。行政書士が相手方との条件交渉や紛争の代理調整を行うものではありません。

Step4 公証役場 事前打合せ

必要書類の確認、予約、手数料の概算確認。

Step5 作成当日

本人確認、内容の確認、方式に応じた電子サイン等を行い、正本・謄本等を受領。

Step6 運用

当事者が支払状況を記録。事情変更時は改めて合意した内容の文書作成を相談し、紛争は弁護士等へ。

2025年10月1日から公正証書作成のデジタル化が始まっています。嘱託人の申出があり、他の嘱託人に異議がなく、公証人が相当と認める場合には、ウェブ会議による作成手続を利用できます。すべての案件で来所が不要になるわけではないため、公証役場に方法を確認してください。

6. 必要書類チェックリスト(当事者・公証役場)

当事者側で用意

  • 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)
  • 子の情報(氏名・生年月日・学校)
  • 金融口座情報(支払・受領口座)
  • 資産・負債の一覧(不動産・ローン・保険等)
  • 年金分割のための情報通知書(必要な場合)

公証役場で求められやすい資料

  • 身分証・住所確認資料
  • 条項ごとの裏付け資料(不動産登記事項要約等)
  • 委任状(代理人が行く場合)
  • 印鑑(公証役場の指示に従う)

※必要書類は事案・役場により異なります。予約時に指示を確認してください。

7. 費用のめやす&モデルケース

協議書作成ヒアリング/草案/合意済み内容の確認。文書の内容・条項数で変動。
公証役場 手数料公証人手数料令に基づき、法律行為ごとの目的の価額などから算定します。正本・謄本等の交付費用や郵送費も別途確認します。
郵送・追加部数正本/謄本の追加発行・郵送費など実費。
モデルケース例:
養育費が月3万円で10年間なら、支払総額は360万円です。ただし、公正証書の手数料を算定する目的の価額は、養育費については最長5年分で計算します。
財産分与・慰謝料を合わせた額に対する手数料と、養育費に対する手数料を別々に計算して合算します。支払総額を一括して手数料表に当てはめるものではありません。条項や交付方法による費用も含め、公証役場で事前見積りをご確認ください。
協議書の作成費用は、取り決める内容や作業範囲を確認して、ご依頼前にご案内します。

根拠:日本公証人連合会「公証人手数料(令和7年10月1日から)」。事務所へ支払う報酬と公証役場の手数料・実費を分けて確認します。

8. 作成までの段取りと所要期間

  1. 相談・準備:初回相談(30分/Zoom可)→必要情報と合意の状況を整理
  2. 草案確認:必要資料と合意内容を確認→草案を本人が確認
  3. 合意内容の確認:当事者が内容を確認→公証役場へ事前相談・予約
  4. 文書の完成:公証人による内容確認・作成手続→合意した支払等を開始

※所要期間は合意の状況、資料の準備、公証役場の日程等により異なります。相談時に確認し、一定期間内の完成は約束できません。

9. よくある失敗10選と回避策

  1. 金額だけ決めて条項が薄い → 支払日・方法・口座・遅延・事情変更・連絡義務まで条文化。
  2. 面会交流が曖昧 → 頻度・時間・場所・代替日・オンライン面会を具体化。
  3. 住宅ローン・連帯保証を放置 → 名義・代償金・解除不可時の代替案まで明記。
  4. 子のイベント・長期休暇の取り決め無し → 行事優先・分担・長期の追加日を定型化。
  5. 連絡手段が決まっていない → 連絡方法・既読確認・緊急時の優先連絡先を明記。
  6. 事情変更時の再協議条項が無い → 物価・進学・転居など変動時の見直し窓口を置く。
  7. 証拠書類を残していない → 送金明細・面会履歴・連絡記録を保存。
  8. 第三者の同意が必要な条項を安易に合意 → 金融機関・家主・学校などの手続時期を現実的に。
  9. 署名後の保管・共有が杜撰 → 正本・謄本の管理、写しの安全な保管を徹底。
  10. 対立があるまま書面だけで解決しようとする → 弁護士や家庭裁判所の手続を相談し、安全と合意の成立を先に確認。

10. ケース別の作り方

① 住宅ローンが残っている

誰が住む/誰が所有する/連帯保証解除/代償金/売却・住み替えの代替案まで一本道で書く。解除不可のときの次善策を条文化。

② 遠距離・他県居住

面会は隔月や連続日で設定、引渡しは「駅」「公共施設」など明示。オンライン面会を併用し、交通費の負担も決める。

③ 高葛藤・未払いが心配

対立が強く合意できないときは、弁護士への相談や家庭裁判所の手続を検討します。公正証書は合意内容を形にする手段で、対立そのものを解決するものではありません。合意できた金銭条項について、適切な未払い対策を確認します。

④ 自営業・収入変動が大きい

養育費は相場を踏まえつつ、事情変更時の増減協議条項を厚めに。決算期や賞与・役員報酬の扱いを明記。

⑤ DV・モラハラ・安全配慮が必要

安全確保が最優先です。直接の協議や交流を無理に進めず、DV相談窓口や弁護士に相談してください。避難先などの情報の取扱いにも配慮し、安全を確認できる方法を個別に検討します。

養育費の目安は家庭裁判所の「算定方式(算定表)」が参考。最新の考え方で試算し、無理のない金額に落とします。

11. よくある質問(FAQ)

Q1. 公正証書にしないとダメ?

公正証書は必須ではありません。一定の金銭債務の執行に役立つ場合がありますが、養育費には私文書による合意を基礎に先取特権による差押えを検討できる制度もあります。必要な手続は弁護士や裁判所の案内で確認してください。

Q2. 離婚届を先に出してしまいました。

離婚後でも合意書は作れます。ただし、財産分与などの請求期間を確認する必要があります。親権者の変更には家庭裁判所の手続が必要で、協議書だけでは変更できません。

Q3. 相手が協力してくれません。

合意できない点や紛争がある場合は、弁護士への相談や家庭裁判所の調停等を検討してください。行政書士は相手方との条件交渉や紛争の代理調整を行いません。

Q4. どれくらいの期間で作れますか?

合意の状況、資料の準備、公証役場の日程等により異なります。相談時に進め方を確認し、一定期間での完成を前提に予定を立てないようにしてください。

12. 相談方法(関東・全国Zoom対応)

初回相談:30分(Zoom/電話/対面)—ご相談の内容と相談料は、予約時にご案内します。平日夜・土日も対応可。

📩 相談を申し込む(お問い合わせフォーム)   📞 電話で問い合わせ

対象地域:埼玉(比企郡・滑川町・東松山・川越・さいたま市・熊谷)/東京/神奈川/千葉/群馬。遠方の方も全国Zoomで対応します。

※本記事は一般的な解説です。実際の手続・条項は事案により異なります。最終判断は最新の運用・公証役場・弁護士等の指示に従ってください。

確認した制度・業務範囲の資料(2026年9月17日確認):法務省:父母の離婚後等の子の養育に関する改正裁判所:家事事件Q&A裁判所:離婚後の親権者の定め裁判所:養育費に基づく差押え日本公証人連合会:公正証書のデジタル化日本行政書士会連合会:契約書e-Gov:弁護士法(第72条)